「でも、僕の中に、世界があるとは、
思えないよ」
自分の思い通りにならないのが、
世界だからです。
すると彼女が、キスしては、
僕を見つめます。
わかった?って見つめるんです。
もちろん、全然わかりません。
「・・・・何か、言いたいの?」
「だって、キスって、外には無いでしょ?」
「そうかな?」
何度も、キスしてきます。
わかるまで、してくれるみたいです。
たしかに、キスは、
僕の感覚の中にあります。
もし、
感覚の外にあったら、
僕には、
キスしていることも、わかりません。
「・・・・でも、キスしたいからって、
いつだって、できるわけじゃないから」
「そういう音楽を創っているのよ」
「僕が?」
また、彼女が首を横に振ります。
「音って、現れては、消えるでしょ?
でも、消えるんじゃなくて、
存在に戻るだけなの。
それなのに、消えるって怖れている。
その怖れが、この世界を創っている。
あなたを創っているの」
「僕を?」
「だから、思い通りにならないの。
あなたは、
思い通りにはならないっていう思いだから」
「僕って、思いなの?」
「思いだって、現れては、消えるでしょ?」
「僕は、消えないよ」
「消えないんじゃなくて、
消えたくないの」
もちろん、消えたくないです。
「この世界は、そういう音楽なの。
外にあると思うから、
音楽だってわからないの」
「だって、外にあるよ」
「すべては、振動なんだってば。
音なのよ。
音に、外なんてないでしょ?」
たしかに、音の外なんて、
聞いたことないです。
ーつづく ー
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