恥を知れってことですか?
「待って?
どうして逃げるの?」
思わず、立ち止まってしまいました。
彼女のそばにいたいって、
気持ちがあるからです。
恥ずかしさと、憧れとで、
揺れています。
「・・・・実は、僕、飛べないんです」
「飛べない?
飛べない人間なんているの?」
穴があったら、入りたいって、
このことです。
それで、洞穴(ほらあな)に
入ったのかもしれません。
「よく生きてこれたわね?」
「恥を知れってことですか?」
彼女が首を振ります。
「赤ん坊のうちに、
食べられてしまうでしょ?」
「逃げ回るのが、うまいみたいで・・・」
自慢にはなりません。
「どうして飛べないの?」
「落ちこぼれなんです」
「自分で、
生きようとしているんじゃない?」
「そうしなければ、生き残れないです」
「だから、飛べないのよ」
「飛べないから、
生き残ろうとするんですよ。
飛べる人間には、
わからないです」
彼女が、僕を、じっと見つめます。
「わかったわ。
たすけてもらったお礼に、
今度は、私がたすけてあげる」
「どうやって?」
すると、彼女が、僕を手招きします。
おいで?って両手で招くんです。
ー つづく ー
地球の話ではありません。
人間たちが浮いて、
飛んでいる星での話です