居たたまれない
「・・・・・・たすけてくれて、
ありがとう」
美しい女(ひと)です。
「噛まれているんで、
舐めています。
決して、舐めたくて、
舐めているんじゃないです」
女の人も、わかっているようです。
「あれは、
人を襲うこともあるのね・・・・」
「あまりにキレイだから、
思わず襲っちゃったんじゃないですか」
僕も、
そんな気持ちになっていたからです。
彼女は、痛そうにしながらも、
笑います。
「あなたが来てくれなかったら、
今頃、食べられていたかも・・・・・」
「あんな奴に、もったいないですよ」
「お礼に、させてあげたいんだけど、
痛くて・・・・・」
きっと、交尾のことです。
でも、交尾と言ったら、
宙を舞いながらです。
僕には、できません。
「いいですよ。
ムリしないでください」
「やさしいのね?」
やさしいんじゃなくて、
無能なんです。
本来なら、飛べる人間とは、
口も利けません。
「このあたり、よく飛ぶの?」
「・・・・はぃ」
「見かけないけど?」
「・・・・・・そうですね」
彼女を、
洞穴(ほらあな)の地面に
寝かせているんですけど、
少し浮いています。
それに較べて、僕は、
地面にべったりです。
そのことに、彼女が気づきます。
「あなた、
地面にくっついているけど・・・・・
どうしてなの?」
僕は、恥ずかしくて、
居たたまれなくって、
逃げ出しました。
ー つづく ー
地球の話ではありません。
人間たちが浮いて、
飛んでいる星での話です![]()
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