B子の証言
中学校の文化祭で、
私たちのクラスは、
祭りについて、
展示することにしました。
段ボール箱で、神輿(みこし)を作って、
金紙、銀紙で、
飾ります。
私たちの班は、半被(はっぴ)を作ります。
文化祭では、半被を着るんです。
放課後、遅くまで、みんなと作業して、
残りは、家で、
やろうということになりました。
ところが、家に帰って、作りかけの半被を、忘れて来たことに、気づきます。
あわてて、教室に、取りに戻りました。
夕暮れの教室に戻ってみると、
ブランコがあります。
「こんなブランコ、作ったっけ?」
でも、よくできたブランコなんです。
段ボール箱の神輿のとなりに、
下がっています。
ブランコのまわりには、
神輿に貼るための、金紙、銀紙が、
散らばっています。
誰も見ていないのを確認して、
ちょっとだけ、お尻に当ててみました。
始めは、そっとです。
スカートの下で、触れる感じです。
少し、揺らします。
指で、揺らすくらいです。
揺れ方が、滑るようです。
感覚の玉を、なでるようです。
だんだん、深く、揺らしてゆきます。
始めは、壊れたらどうしよ?って、
思っていたんですけど、
壊れそうなのは、私のほうです。
大きな感覚に、
私という感覚が壊れてゆきます。
揺れるたびに、
花びらが散ってゆくようです。
うつむいて、綱をつかんで、
目を閉じます。
開かれるのを、待っているんです。
こんな感覚、初めてです。
夢中になって、揺らし始めます。
止められません。
まるで、私だけのお祭りのようです。
ところが、翌朝、登校してみると、
教室に、ブランコがありません。
友だちに聞いても、
「なんでお祭りに、ブランコなの?」
って、相手にしてくれません。
でも、祭りって、きっと、
大きな波になることです。
私って、小さな波だったんです。
ー つづく ー

