気づいていないんじゃないか?
弟の夢を、毎晩のように見ます。
目が覚めると、
弟の葬儀の日の朝のようです。
しんと静まりかえって、
何もかもが、冷たく濡れています。
時間まで濡れているんです。
そんな日々の中、パパとママと、
TVで、
心霊現象の番組を観ます。
霊が見えるという人が、
話していました。
「ビルの屋上から、
飛び降り自殺をした人が、
まだ生きているんで、
失敗したと思って、
何度も、何度も、
飛び降りるんです。
自分が死んだってことに、
気づけないでいるんです」
僕は、弟のことを思いました。
もしかしたら、弟は、
自分が溺れて死んだってことに、
気づいていないんじゃないか?って、
思ったんです。
弟の夢を、毎晩のように見るのは、
今でも、弟は、溺れ続けていて、
僕に、助けを求めているんじゃないかって、思ったわけです。
もし、そうだったら、今からでも、
弟を救えるかもしれません。
弟を救えなかった罪悪感が、
そんな夢を
見させているだけなのかもしれません。
でも、できることがあるなら、
やってみたいです。
それで、パパとママに頼んで、
あの海に連れて行ってもらいました。
きっと、パパとママも、あの海に、
まだ、テル(弟)がいる気がするんです。
連れて帰りたいわけです。
パパは、
大きなゴムボートまで買いました。
夏は、終わっていて、
ビーチには、
犬の散歩をする人しかいません。
本当に、弟を救えるのか?
パパと僕は、大きく波がうねる海の中へと、ボートを漕ぎ出して行ったんです。
ー つづく ー
僕らの本質は魂(スピリット)なので、
誰も死にません![]()
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