彼女を真似て
それで、僕は、彼女を真似(まね)始めたんです。
こんな人間になりたいって、思ったわけです。
すると、彼女、あらゆるものに、手を合わせているんです。
朝日が昇れば、朝日に、雨が降れば、雨に、手を合わせます。
野菜にも、米にも、水にも、風にさえ、手を合わせます。
それで、聞いてみたんです。
「何を、拝んでいるの?」
「神様よ」
「ゴボウが?」
「神様でしょ?」
ゴボウが神様だなんて、考えたこともありません。
「どうして、ゴボウが神様なんだ?」
「そこに、神様がいらっしゃるからよ。
神様って、こっちの方が偉いとか、尊いなんて、なさらない。
あらゆるものから、同じ所にいらっしゃるの」
同じ所にあるっていうのは、彼女の口から、よく聞く言葉です。
「だから、ゴボウを拝むの?
どういうこと?」
「あなたが、あなただと思っている所には、あなたは、いないってこと」
もっと、わかりません。
でも、彼女を愛しているんで、僕は、彼女が手を合わせるたび、一緒になって、手を合わせ始めました。
ゴボウが神様とは思えないんですけど、彼女を理解したかったんです。
ーつづくー
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