運命の女
男湯へと投げ返された僕は、壁に当たって、湯舟に飛び込みました。
飛沫(しぶき)が上がって、みんなが、怒っています。
「なんで、風呂場で、キャッチボールなんかしているんだ?」
僕は、頼みました。
「女湯に、僕を投げ込んでくれませんか?」
「女湯と、キャッチボールしてたのか?」
「彼女が見たいんです」
「そりゃ、オレだって見たいよ」
「運命の女(ひと)かもしれないんです」
僕が必死にお願いしたら、わかってくれたようです。
「それなら、応援しよう」
そう言うと、お湯にぷかぷか浮いていた僕をつかんで、女湯へと、投げてくれたんです。
僕は、彼女を見つけようとするんですけど、ただでさえ裸の女の人ばかりなので、かえって目が回るばかりです。
ところが、僕が、女湯の床に跳ねると、女の人たちが、キャーキャー叫んで、盥(たらい)や椅子で、僕を叩くんです。
それで僕は、あっち、こっちと、跳ね回ります。
でも、僕が見たいのは、さっき、僕をキャッチしてくれた彼女の顔です。
誰だか、知りたいんです。
それなのに、僕は、そこら中で、叩かれて、跳ね回っているんです。
痛くて、たまりません。
頭なんか、瘤(こぶ)だらけです。
でも、これ、カッコいい男の人でも、こんな目に遭うんでしょうか?
そしたら、たぶん、彼女だと思うんですけど、僕を助けるようにキャッチすると、男湯へと、投げ返してくれたんです。
僕は、必死になって、彼女の顔を見ようとしたんですけど、ボールは回転するんで、見えないんです。
ー つづく ー
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