問題なんてない
中学3年生の女の子が、地獄に落ちた夢です。
試験が始まると、私、本当に、どの問題にも、ありがとう、って答えちゃいました。
ありがとう、ありがとう、って書いていると、笑えちゃうんです。
なんで笑っているのか、わからないんですけど、おかしくて、たまりません。
どうせ、ありがとう、って答えるんで、問題も読みません。
みんなは、一生懸命に問題を解いています。
私だけ、試験時間を持てあまして、キョロキョロしています。
ところが、試験の終わりを告(つ)げるベルが鳴ったんですけど、鳴り止まないんです。
ずっと、鳴っているんです。
それで、目を覚ましたんですけど、電話のベルの音でした。
電話に出てみると、母です。
弟が助かったって、泣いています。
時計を見ると、夜の11時で、弟が自殺未遂をして、救急車で運ばれてから、2時間くらいしか経(た)っていません。
母が泣いているのが、私、ありがたかったです。
どんなに愛してくれているか、わかったからです。
考えてみれば、私、自分でなんか、生きていませんでした。
母が産んでくれたから、私、いるんです。
おっぱいをくれたから、オムツを取り替えてくれたから、世話してくれたから・・・・・
「お母さん・・・ありがとう・・・
お母さん・・・ありがとう・・・」
感謝が止まりません。
ところが、母も、私に、ありがとう、って言い出したんです。
「どうして?」
「・・・・・生きていてくれて、ありがとう」
弟が、死にそうになったからだと思います。
「・・・・そこに、お父さん、いる?」
父に、電話を代わってもらいました。
「お父さん? お父さん?
・・・・ありがとう。
お父さん、ありがとう・・・・・」
そのとき、ふっと、思いついたんです。
「お父さん?
私、高校へ行かないで、花屋さんで働いてもいい?
いつか、お父さんと、花屋さん、やりたい。
一緒に、やろうよ?」
父は、花の育て方を、直接、花から聞けるんです。
問題だったんじゃなくて、むしろ、素晴らしかったんです。
父は、花のように、何も言わないんですけど、きっと、支えてくれます。
そういう意味では、私は、大地にも、水にも、空気にも、支えられているんです。
自分で生きていないって、素晴らしいことだったんです。
ちなみに、ですけど、翌日、中学校で試験があって、私、すべてに、ありがとう、って答えました。
0点でした。
先生から、「ヤケクソか?」って、聞かれました。
でも、もう私には、問題なんてないんです。
おわり
最後までお読みいただいて、ありがとうございました