最終話 鬼の中の、鬼
ここまでのあらすじ
僕は、鬼の世界に、迷い込んでしまいました。
鬼の世界では、牧場で、食肉にするために、人間たちが飼われていました。
僕は、こっそり逃げようとしたんですけど、飼われている人間たちが、一緒に逃げてきちゃったんです。
僕は、何百人もの、人間たちと、鬼たちに、追い駆けられて、死に物狂いで、逃げました。
何百人もが、追い駆けて来るんですから、地響きだけでも、凄いんです。
牧場は、鉄条網(てつじょうもう)で、囲まれています。
あれさえ、越えられれば・・・と走ったんですけど、近づくにつれて、鉄条網の所々に、高圧電流を示すマークがあったんです。
電線も巻かれてあるので、触れたら、感電死します。
僕は、みんなに、両手をあげて、「来るな! 電流だ!」って、叫んだんですけど、地響きと、叫び声が、凄いんで、聞こえないんです。
それに、みんな、これまでの恐怖から、逃げることしか、できないんです。
僕は、その場で、うずくまって、頭を抱えました。
鉄条網を越えようとした人間たちが、悲鳴をあげて、焼けて行くんです。
人間たちの悲鳴と、肉の焼ける臭いが、怖ろしいです。
でも、僕は、そんなことより、大勢の犠牲者たちによって、高圧電流の鉄条網が壊れることを、期待したんです。
そうしたら、僕は、ここから、逃げられる・・・・・・
ところが、鉄条網が壊れる前に、鬼たちが、押し寄せて来ました。
人間たちを、金棒(かなぼう)で、殴り殺して行きます。
人間たちは、高圧電流と、金棒に、怯(ひる)んで、逃げて、戻って行きます。
僕は、頭を抱えて、うずくまっていたんですけど、辺りは、文字通り、死体の山です。血の海です。
ところが、鬼たちが、僕を見つけて、集まって来ました。
そして、僕を囲んで、鬼たちが、平伏(ひれふ)すんです。
鬼の女が来て、僕の手を取って、立たせてくれました。
そして、跪(ひざまず)いて、僕に、謝るんです。
「こんな不始末をお目にかけてしまって、申し訳ありません。
どうか、お許しください。
どうして、人間たちが、逃げようとしたのか、よく調べさせますから」
それで、僕は、ハッとするんです。 原因は、僕なんです。
僕は、自分だけ助かろうとして、こっそり逃げたつもりが、人間たちが一緒に逃げて来ちゃったんです。
僕は、心の中で、ついて来るな!って叫んでいました。
そのうえ、さっきの怖ろしさから、頭の上に三角形を作って、角(つの)があるフリをするのを、忘れているんです。
ところが、鬼の女は、僕の頭に角(つの)がないのに、全然、気づかないんです。
僕を見つめて、うっとりしているんです。
「あなたこそ、鬼の中の、鬼よ。
あなたぐらい鬼らしい鬼はいないわ」
そう言われて、僕は、本当に、僕は鬼だと思いました。
自分さえ助かればいいと、思っていたからです。
ー おわり ー
読んでくださって、ありがとうございました🙏

