3話 世にも奇妙な出来事
ここまでのあらすじ
大学の、1年生で、仲良くなった同じクラスの男の子から、恋の相談をされました。
でも、彼が好きになった女の子は、僕の目には、気の毒になるくらいカワイクない女の子だったんです。
僕は、彼女の名前がわかったとき、耳を疑うって、こういうこと?って、思いました。
正直、彼が、イタズラを企(たくら)んでいるんじゃないか?って、疑ったほどです。
どういうイタズラかと言うと、クラスで、1番カワイクない女の子を、1番カワイイって言いふらして、彼女が本気にしたら、「そんなわけないだろ?」って、笑いものにする、ものです。
それで、彼を、殴りそうになったんです。
「おい! していいことと、悪いことが、あるんだよ!」
ところが、彼も、僕を殴りそうになっているんです。
「やっぱりな!
おまえも、彼女を、好きだったって、ことだろ?
なにが、わからないだよ!
はじめから、わかってたんだろ!」
彼は、僕が、彼女を、僕のものにしようとして、話をはぐらかしていたと、思っているんです。
でも、僕的には、彼の恋が真剣だと、わかるにつれて、世にも奇妙な出来事に、遭遇しているような気持ちになってきているんです。
そして、僕が、茫然自失(ぼうぜんじしつ)してゆくにつれて、ますます彼の怒りは、燃え上がります。
つまり、彼の目には、身動きがとまって、顔色を失ってゆく僕が、本音(ほんね)を見抜かれて、うろたえていると、見えたわけです。
「おい! なんとか、言えよ!」
そう怒鳴って、僕の肩を、本気で、殴ったんです。
僕は、その痛みで、ショック死しそうだった状態から、立ち直りました。
「・・・・おまえ、本気なのか?」
本当は、正気なのか?って聞きたかったです。
「本気に決まってるだろ!」
僕は、素直に、謝りました。
「・・・・悪かったよ。
誰を、好きになるかなんて、おまえの自由だったよ」
僕が、謝ると、彼も、すぐに、怒りを、収(おさ)めてゆきます。 もともと、いい男(やつ)なんです。
「オレこそ、殴って、悪かったよ。
おまえの言うとおりだよ。
誰を好きになるか、なんて、自由に決まっているんだ。
おまえが、彼女を好きだからって、オレが文句を言うことじゃない」
僕は、心の中で、首を、左右に、ブンブン振っています。
「本当に、彼女のこと、なんとも思ってないんだ」
「嘘、つかなっくたって、いいよ」
確かに、なんとも思ってないは、嘘です。
1番カワイクないって、思っていたからです。
ー つづく ー

