最終話 最高の思い出を作って、帰ります
ここまでのあらすじ
小さな神社で、毎朝、手を合わせているキレイなお姉さんに、片思いしていました。
すると、小さな神社の夢を見るようになったんです。
僕らは、いつか、神様のもとへと帰るらしいんです。
だから、神様にふさわしい思い出を作れってことでした。
僕は、小さな神社で、キレイなお姉さんを待ちました。
もし、いつか、神様に帰るとしたら、何もしないでいるなんて、もったいないからです。
僕が、神様の思い出だと思うだけでも、心強いです。
以前の僕は、あのお姉さんが、あまりにキレイなので、すれ違いながら、盗み見するくらいしかできませんでした。
キレイなお姉さんを待つ、こんなドキドキからは、逃げたはずです。
でも、今は、このドキドキを持って、神様へと帰ろうと、思うんです。
僕は、小さな神社で、手を合わせました。
「神様、絶対に、最高の思い出を作って、帰りますから、待っていてください」
そこへ、あのキレイなお姉さんが、走って来ました。
僕は、お姉さんが、神社の前で、立ち止まって、祈りを、終えるのを、待ちました。
「僕、小さい頃、お姉さんの頬に、キスとか、したんでしょうか?」
お姉さんが、香るように、ふぁ、ふぁ、ふぁ、って笑います。
「お母さんから、聞いたの?」
「いえ、お婆さんから」
「お婆さん? どこの?」
「この神社の神様かもしれないです」
「この神社の神様って、弁天様よ?」
「じゃ、やっぱり、お姉さんだ」
「私?」
「お姉さんって、いつか、弁天様へと帰るんです。
だから、そんなにキレイなんですよ」
「へぇー、あなた、口、うまくなったわねぇー」
「本当ですよ!
本当に、この世界で、一番キレイです!」
「言いすぎよ」
「反対ですよ! お姉さんが、キレイすぎるんです!」
「私のこと、見ようともしてなかったくせに?」
「キレイすぎて、見れなかったんです!」
「忘れていただけでしょ?
私は、もっと前から、あなただって、気づいていたのよ?」
「だから、キレイすぎて、ちゃんと見れなかったんですってば!
本当ですよ!
本当に、あなたのこと、誰よりも、キレイだって、思っているんです!」
そのとき、小さな神社から、ふぁ、ふぁ、ふぁ、って笑い声が聞こえました。
きっと、弁天様が笑っていたんです。
夢の中で、弁天様が、お婆さんの姿で現れたのは、きっと、キレイすぎると、僕が、逃げ出していたからです。
おわり
お読みいただいて、ありがとうございます![]()

