61話 あなた方の心が、抱いてもらいたがっている
「遊んでいる? 俺たちが?
生きてゆくって、そんな生(なま)やさしいものじゃないぞ?」
私は、笑いました。 生まれ変わっても、竹四郎は、全然変わっていません。
「生やさしくないと思うから、生やさしくないのですよ。
遊んでいると思えば、遊べるのです。
心が、姿を創るのです」
「姿って、何だよ?」
「あなた方が、現実と呼んでいるものです。
それは、現実そのものが、あなた方の心だからです。
あなた方は、あなた方の心の中にいるのです。
ですから、愛されているのです」
「現実が、心のわけがないだろ」
「もし、あなたに、心が無ければ、現実も無いのですよ?
もっと言うなら、現実そのものが無いのです。
あなた方は、あなた方の心を経験しているだけです」
剛(竹四郎)は、自分の頬をつねっています。
魚だと思って、引き揚げたら、ダイヤモンドで、それが、夢を言い当てたり、心の話をするので、夢かと、疑っているのです。
「石の心と、人間の心とは、違うので、石にとっての現実と、あなた方の現実とは、違います。
魚の現実とも、違います。
風の現実とも、違います」
「風に、現実なんてあるのか?」
「あなた方の言葉で言えば、自由ですよ。
自由が、風の現実です」
「それって、現実って言わないだろ」
「でしたら、なぜ、あなた方は、あなた方の現実を、自由にならないと言うのですか?」
「自由にはならないのが、現実だからだよ」
「でしたら、自由になったら、自由が、現実でしょ?
風にとっては、自由が、現実なのです」
剛(竹四郎)は、突然、片膝をつくと、私を、網(あみ)から、出してくれました。
「海を見ていると、海が生きているって、わかるんだよ。
それは、もっと大きな生命(いのち)なんだ。
でも、海が生きているなら、風も生きている。
そういうことだろ?」
私は、網から、出していただくと、もう我慢できなくて、竹四郎に抱きつきました。
だって、数百年も、我慢したのです。 竹四郎に、抱いてもらいたくて仕方がなかったのです。
「竹四郎、約束ですよ? 私を抱いてください。
私を抱くことは、地球を抱くことになるのです。
ずっと、地球は、抱いてもらいたがっているのです。
でも、それは、あなた方の心を抱くということです。
あなた方の心が、あなた方に、抱いてもらいたがっているのです」
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