仕事でも日常生活でも、「ちゃんと伝えたはずなのに、相手に伝わっていなかった」という経験は誰にでもあります。
その原因は、文章力がないからではなく、「自分が知っていること」と「相手が知っていること」を同じだと思ってしまうことにあります。
文章を書くとき、書き手の頭の中には、その出来事の背景があります。
いつの話なのか。
誰のことなのか。
何が起きて、どうなったのか。
自分ではすべて分かっているため、必要な情報を書いたつもりになります。しかし、読み手には頭の中の情報は見えません。見えるのは、書かれた文字だけです。
そのため、「誰が」「何を」「いつ」「どこで」「なぜ」「どのように」が省略されると、読み手は内容を推測するしかなくなります。
ここで大切なのは、「自分は理解できる」ということと、「相手が理解できる」ということは全く別だということです。
文章は、自分のために書くものではありません。相手に伝えるために書くものです。
もし文章を書き終えたら、一度だけ自分に問いかけてみてください。
「この文章を初めて読む人は、状況を正しく想像できるだろうか。」
「この文章だけで、『誰が』『何を』『いつ』『どこで』『なぜ』『どうした』を説明できるだろうか。」
もし答えが「できない」であれば、それは文章が悪いのではなく、情報が足りていないだけかもしれません。
最近はAIで文章を整えられるようになりました。しかし、AIが整えられるのは、入力された情報です。書かれていない事実まで補うことはできません。
どれほど自然な文章になっても、必要な情報がなければ、相手には正確には伝わりません。
だからこそ、本当に大切なのは「AIに直してもらうこと」ではなく、「相手はこの文章だけで理解できるだろうか」と考える習慣を身につけることです。
文章力とは、難しい言葉を使う能力ではありません。
相手の立場に立ち、必要な情報を不足なく伝えられる力です。
その意識が少し変わるだけで、メールも報告書も、チャットも、相手に伝わる文章へと大きく変わっていきます。
