人を変えたいと思うとき、そこには少しの焦りが含まれています。
人を救いたいと思うとき、そこには少しの優越感が混ざることもあります。

けれど、本当に人の心に火を灯せる人は、
人を動かそうとしていません。

ただ、信じているのです。

「この人の中にも、まだ消えていない火がある」と。

多くの人が自分を信じ切れないのは、能力がないからではありません。
何度か否定され、何度か傷つき、そのたびに自分を守るために火を小さくしてきただけです。

人は、本気を出して失敗するよりも、
最初から諦めていたほうが傷つかないと学んでしまうことがあります。

だから、心の奥では燃えたいと思いながらも、
表面では「どうせ無理だ」と言ってしまうのです。

その矛盾を抱えている人は、とても多い。

では、どうすれば人の心に火を灯せるのでしょうか。

答えは、特別な言葉ではありません。
圧倒的な実績でもありません。
熱い説得でもありません。

必要なのは、安心です。

人は、安全だと感じたときにしか本音を出しません。
否定されないと分かったときにしか、自分の可能性を口にしません。

だからまず、自分が「否定しない人」になることです。

遅い人を責めない。
迷っている人を軽く見ない。
動けない人を弱いと決めつけない。

その人の背景には、その人なりの理由があります。
見えない恐れがあります。
まだ言葉になっていない痛みがあります。

それを想像できる人が、灯せる人です。

そしてもう一つ大切なことがあります。

自分の弱さを隠さないことです。

迷ったこと。
怖かったこと。
他人の言葉に揺れたこと。

それらをなかったことにせず、静かに語れる人は強い。

完璧な人の言葉は遠くに響きます。
揺れたことのある人の言葉は、心の奥に届きます。

人は、「この人も同じだった」と感じた瞬間に、
初めて自分を許します。

そして、自分を許せたとき、火は戻ります。

灯す人とは、火を与える人ではありません。
灰の下にある火種を見つける人です。

「あなたはできる」と断言する必要はありません。
それよりも、「本当はどうしたいですか」と問いかけること。

問いは、外からの命令ではありません。
内側の声を呼び起こす鍵です。

人が変わる瞬間は、
自分で気づいた瞬間です。

だから灯す人は、待てる人です。

急がせない。
焦らせない。
比べない。

ただ、その人の可能性を静かに信じ続ける。

そして何より、自分自身が、自分を裏切らないこと。

自分の本音を押し殺さない。
自分の情熱を笑わない。
自分の挑戦を諦めない。

その姿勢は、言葉よりも強く伝わります。

人は、説得では動きません。
空気で動きます。

あなたが自分を信じて生きている空気。
失敗しても立ち上がる空気。
誰かを見下さず、誰かに媚びない空気。

その空気が、周りの呼吸を変えます。

火はうつるものではありません。
思い出すものです。

誰かの強さに触れたとき、
誰かの誠実さに触れたとき、
誰かの揺れない背中を見たとき、

人はふと、自分の中の火を思い出します。

だから、無理に燃やそうとしなくていい。

まずは、自分の火を消さないこと。

自分を信じ切れない人を救いたいなら、
自分を信じ続ける生き方を見せることです。

完璧でなくていい。
常に強くなくていい。

それでも前を向く姿は、必ず誰かの希望になります。

人の心に火を灯せる人とは、
特別な人ではありません。

自分の人生を、最後まで自分のものとして生きようとする人です。

その誠実さは、静かに伝わります。

そしていつか、誰かがあなたに言うでしょう。

「あのときの言葉で、勇気が出ました」と。

その瞬間、あなたは気づきます。

火は、もう広がっているということに。