人は、長く一度だけ会った相手よりも、

短い時間でも何度も顔を合わせた相手に、自然と親近感を覚えます。


これは性格の問題でも、相性の問題でもありません。

人間の脳が持つ、とても基本的な仕組みです。


私たちの脳は、常に無意識のうちに問い続けています。

「この人は安全だろうか」

「この人は信頼できるだろうか」と。


一度だけ長い時間を過ごしても、脳はこう判断します。

「たまたま今回は何も起きなかっただけかもしれない」


しかし、短い時間でも何度も会うと、

そのたびに「今日も大丈夫だった」「今回も安心だった」という確認が積み重なります。

この“何も起きなかった回数”こそが、信頼の正体です。


人は、深い話をした相手を信頼するのではありません。

感情が動いた相手を信頼するのでもありません。

「何度も変わらず、安心だった相手」に心を開いていきます。


繰り返し目にする存在は、やがて「環境の一部」になります。

環境の一部になると、その人は外の存在ではなく、内側の存在になります。

内側の存在には、警戒心が薄れ、親近感が芽生えます。


これは恋愛でも同じです。

特別なデートよりも、短い会話や何気ないやりとりの積み重ねが、

「いないと違和感がある存在」をつくっていきます。


仕事でも同じです。

頻繁に顔を合わせ、態度が安定している人ほど、

能力以前に「安心して任せられる人」になります。


趣味やコミュニティでも同じです。

同じ時間を何度も共有することで、

「同じ世界を生きている感覚」が生まれます。


信頼とは、感情の強さではありません。

信頼とは、予測できること。

一貫していること。

一緒にいて消耗しないことです。


だからこそ、短い時間が重要になります。

短い接触は負担が少なく、防衛心も働きにくい。

人は、無理をしなくていい相手に、自然と心を許します。


親近感は、努力して作るものではありません。

演出するものでもありません。

「何度も、何も起きなかった」という静かな積み重ねの中で、

いつの間にか生まれているものです。


人は、特別な誰かに心を開くのではなく、

何度も大丈夫だった誰かに、少しずつ心を預けていきます。


その仕組みを知るだけで、

人との距離の縮め方は、もっと優しく、穏やかなものになります。