私たちが生きる世界は、ずっと前から静かに傾き始めていました。
努力するほど疲れ、働くほど余裕がなくなる。そんな矛盾を、多くの人が日々感じています。
一部の人だけが富を増やし、多くの人は必要なものさえ手に入れられない。
この構造は、誰かのせいというより、長い時間をかけて積み重なってきた制度や価値観の結果です。
そしてその負担は、性別や人種、立場に関係なく、普通に生きる人々の心に影を落としています。
本来、働くことは「誰かを支え合うための行い」であるはずです。
けれど今の仕組みは、働く人の力や時間を安く扱い、資本だけが大きく増えるようにできています。
利益が生まれても、その喜びを分かち合える人は限られ、そこで働く多くの人には十分に還元されません。
この不均衡が続くほど、社会の土台はきしみ、未来への不安だけが大きくなります。
しかし同時に、私たちは気づき始めています。
本当に大切なのは「奪うこと」ではなく、「分かち合うこと」なのだと。
富も、機会も、安心も、ひとり占めにしても世界は豊かになりません。
人が安心して心穏やかに暮らせる社会は、互いの尊厳を守る仕組みと、思いやりのある関係から生まれます。
私たちが望む未来は、誰かが勝ち続ける世界ではなく、
誰もが取り残されず、自分の役割を生かしながら生きられる世界です。
誰かが豊かになるために、誰かが苦しまないといけない――
そんな時代は、もう終わらせなければいけません。
今、世界は確かに揺れています。
けれど、揺れているからこそ、改めて見えてくる光があります。
それは、ひとり一人の中に残っている「本当の情熱」や「優しさ」や「人としての感覚」です。
社会の波に飲まれて眠っていたその力は、まだ失われていません。
私たちは小さな選択から変わっていけます。
相手を思いやること。
分かち合うこと。
自分の価値を正しく扱うこと。
そして、誰かを支えることを恥じず、弱さに寄り添える強さを持つこと。
世界を一気に変えることはできないかもしれません。
でも、私たち一人ひとりの小さな動きが重なれば、
搾取ではなく、信頼に基づいた社会へ、確かに近づいていきます。
「安心して生きられる世界」は幻想ではありません。
それは、互いを尊重し合う姿勢と、
利益を独占せず分かち合うという、
とてもシンプルな態度から始まります。
私たちには、その未来を選び直す力があります。
どれだけ世界が揺れても、
人の心には、希望を灯し続ける力があるからです。
