●10/12 リヒテルズ直子さん講演会
10月12日夜、
オランダ在住の教育研究家・リヒテルズ直子さんの講演会がありました。
場所は代々木のオリンピック記念青少年センターの会議室。
主催は Educational Future Center で、副代表の中川綾さんが司会
40名程の方が参加しましたが、2030ビジョン・PURCのメンバーも多かったです。
日本の教育のあり方について、とても示唆に富むものでした。
まず、講演前の直子さんとの立ち話。
◎オランダは北欧と一緒に語られることが多いが、かなり異なる。
・北欧は社会主義だが、オランダは資本主義と社会主義とが良くミックスされている。
もともと商業が発達していたのでバランスを心得ている。
・北欧に比べて、高率の税ではない。
行政と人々の役割認識、共生の考え方が根付いている。
続いて講演
※メモは私の解釈に基づいているので勘違いもあると思います。
ご容赦ください。
------------------------------------------------
『共に生きる未来社会は学校改革から』
―オランダの共生教育―
はじめに、
★ ”オランダの教育目的は、一人ひとりが最大限に社会で力を発揮できるようにすること”
■日本の教育の課題
=行き詰まる産業社会型学校教育=
「近代」という仮面をつけた日本社会とその教育
●私は孤独と感じる割合 (ユニセフ2007)
29.8% 日本
10.3% アイスランド
5-10% オーストラリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、
フィンランド、フランス、ドイツ、スウェーデン、イギリスなど
2.9% オランダ
●不登校 12万2,250人 =1.2%
ひきこもり 政府推計 70万人 (平均年齢 26.6歳)
●うつ病 6-15歳児のうちの 1.5%
中学1年生のうち 4.1%
● 自殺 毎年3万人以上 人口10万人当り 25.8人 (オランダ 10人)
■ 原因はなにか?
○ 明治の学制(1872)以来の教育の歴史
・教育内容の統一
・国のトップダウン統制
・和魂洋才
~西洋の知識や技術と日本の道徳思想
○ 戦後の産業社会に合わせた教育
・民主化による、6・3・3・4制度の導入
・競争原理による教育
・教員が教える自由度の無い画一的教育
・教科書選択権の行政への移行と検定制度の強化
○ 結果として
・自分で考える訓練がない
・人との関係をつくれず社交性が育たない
・社会で役立つ能力が身に着かない
・自己肯定感が低く力を発揮できない
■日本が現在 抱える課題
・失業率の増大 (2010年第二四半期 5.2%)
・貧困な社会保障
~課税圧力(GDPに占める税金と社会保障費の率):29% (オランダ39%)
・雇用慣行(年功序列・終身雇用)の崩壊
-------------------------------
■ オランダとの違いはなにか?
○ 「近代」を理解しているオランダ、分かってない日本
・オランダ:「近代」とは、中世の暗黒社会が終わり、光が差し込みタブーがなくなる世界
=Enlightment
啓蒙思想により、合理的で多様性や自由を尊重する考え方が根付いている。
民衆に民主主義が根付いている。
・日本: 「近代」とは、西洋からの知識・技術や制度を取り入れた時代
⇒ 「近代 ≠ 産業化」 「近代 ≠ 物質主義」 であることをきちんと認識すべきである
○ 20世紀後半(60年代~70年代)の国の生き方
・ オランダ :「静かな革命」 ~カトリック規範の緩和 ~学生の静かな抵抗運動
第一次オイルショック後の深刻な不況 ⇒ ワークシェアリング等による共生
・ 日本 : 「右肩上がりの経済成長」 ~成長神話(成長幻想)
第一次オイルショックからの比較的早い回復 ⇒バブル突入 ⇒新自由主義
○ 社会統合の方法
・ オランダ : 「分権化された権力」と「参加意欲のある市民」
・ 日本 : 「少数のエリート」と「大多数の同調する大衆」
-------------------------------------------
■市民社会型成熟モデル
= オランダの共生教育=
◎ 共生=Inclusion
※ 日本では インクリュージョン=特別支援教育となり言葉の解釈が狭い
◎ 障害の有無で境をつくらないこと
・特別支援教育 WSNS政策 リュックサック政策 IB教員とAB教員
◎ 差別しないこと
・外国籍や低学歴の親 教育遅滞と呼ばれる子どもたち 難民不法滞在の子供たち など
■ インクルーシブ教育の基礎 (イエナプランの典型)
=1. 自尊感情と自己肯定感を育てる=
◎「タテ社会」を「ヨコ社会」に変える『サークル対話』 ・・・円形で話し合う
~お互いに意見を出し合う
~お互いの意見に耳を傾け合う
~共同で何かを産み出す
◎ 「遊び」をたいせつにする
◎ 多面的インテリジェンス
~空間スマート 身体スマート 言語スマート 数理スマート 思考スマート
社会性スマート 自然スマート 音楽スマートなど 多様なインテリジェンスを認める
◎ ラーニング・バイ・ドゥーイングの尊重 (ホンモノに学ぶ)
=理解・吸収のレベル=
・聴く 5% 読む10% ← 日本の教育はこのレベルが多い!!
・見聞きする 20% やって見せる 30%
・ディスカッション 50% 能動的に練習する 75%
・他の人に教える 90%
◎ フレキシブルな時間割
・学校は工場ではない!!
~子供の時間割は子供のバイオリズムに合せて子供が自覚して始められるように
~選ぶ =責任を持つこと
⇒ 自分で選択するからやる気が出る
◎ 生きる場としての学校
・生の空間
・個性のある教室
・教職員と保護者が出会える空間
◎ ポートフォリオによる自己評価
・一人ひとりの発達をすべて評価する
~「5・4・3・2・1」の相対評価では無い
~定期的にチェックし、強み弱みを明らかにする
~毎週、自分が一番良くできたことを知り、次に何をするかを決める
・子どもの発達を把握する、専任の管理する人がいる (教育監督局)
・親子面談の主人公は子ども
◎ 子どもを褒める
(ネガティブな言葉がけをしない)
◎ 自由放任では子どもは育たない
=2.共生の仕方を育てる=
◎ 子どもたちは、私たちにとって仲間の市民
◎ 大人しい子どもは「よい子ども」ではない
~自分で自分の気持ちを言葉に表せること
◎ ピースフルスクール
=子どもは仲間の市民という考え方=
皆違って当たり前という考え方が前提の上で
上級生をファシリテーターとして訓練する制度
~上級生が下級生の仲介役になることで先生の負担を軽減する
一人一人の発達が保障する教育というのは、一見手間がかかりそうです。
でも、それは管理しようとするからではないでしょうか?
~みんな違って当たり前
◎ 4歳からの生徒会
高校生の抗議運動
~教育監督局に何万件もの苦情がくる
(国が奨励し、まとめることを国が資金面で支援する)
~高校生の学校評価
◎ 性教育をきちんと教える
~公式サイト、青少年の「性と生殖の権利」
~議論をする授業
=3.教員と社会との関係性を高める=
◎ 教員を支える社会
~国立カリキュラム研究所
~先生のサポート機関
◎保護者と教員の協力
・保護者は学校を選べる
~不登校を回避できる
~学校は選ばれるように努力する
・経営参加評議会(MR)
・学校は、保護者に対し学校への不満と苦情の処理手続きを事前に明らかにしている
◎ 保護者と学校のコミュニケーション
・おかあさんモーニング
・スト―リバッグ・プロジェクト
~実際の教材を前にして、具体的に考え協力する
以上、
オランダの教育は素晴らしい取組みをしていると思いますし、
とっても勉強になりました。
---------------------------------------------------------
また、以下はEFC鷺島さんブログからの引用です。
一人一人の発達が保障する教育というのは、一見手間がかかりそうです。
でも、それは管理しようとするからではないでしょうか?
子どもに対し、自立、主体性、自主性を望む日本であり、私たち大人ですが、
どれだけ人の成長を信じられるか(例え子どもであろうと)、
どれだけ手間をかけるか、工夫するか、
真剣に取り組む覚悟みたいなものが、私たちにあるのか?
オランダは、教育の改革に10年~15年かかったそうです。
これから私たちの10年が始まります。諦めずに一人一人がやれることを!
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オランダの教育の詳しい内容は、リヒテルズ直子さんの新刊に載ってます。
ご興味を持たれた方はぜひお買い求めください。
平凡社 \1,890 (税込) 2010年10月2日出版
↓ ↓ ↓
『オランダの共生教育』
学校が<公共心>を育てる
また、中川さんが近日中に、講演ビデオをWEBにアップする予定だそうです。
ご期待ください。
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それから、この後の質疑と私の「日本の教育の現状と課題」を述べた
(続き)がありますので、ご覧ください。
↓ ↓ ↓
『リヒテルズ直子さん講演会(続き)』
どうぞよろしくお願いいたします。
中山 弘 記
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オランダ在住の教育研究家・リヒテルズ直子さんの講演会がありました。
場所は代々木のオリンピック記念青少年センターの会議室。
主催は Educational Future Center で、副代表の中川綾さんが司会
40名程の方が参加しましたが、2030ビジョン・PURCのメンバーも多かったです。
日本の教育のあり方について、とても示唆に富むものでした。
まず、講演前の直子さんとの立ち話。
◎オランダは北欧と一緒に語られることが多いが、かなり異なる。
・北欧は社会主義だが、オランダは資本主義と社会主義とが良くミックスされている。
もともと商業が発達していたのでバランスを心得ている。
・北欧に比べて、高率の税ではない。
行政と人々の役割認識、共生の考え方が根付いている。
続いて講演
※メモは私の解釈に基づいているので勘違いもあると思います。
ご容赦ください。
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『共に生きる未来社会は学校改革から』
―オランダの共生教育―
はじめに、
★ ”オランダの教育目的は、一人ひとりが最大限に社会で力を発揮できるようにすること”
■日本の教育の課題
=行き詰まる産業社会型学校教育=
「近代」という仮面をつけた日本社会とその教育
●私は孤独と感じる割合 (ユニセフ2007)
29.8% 日本
10.3% アイスランド
5-10% オーストラリア、ベルギー、カナダ、チェコ、デンマーク、
フィンランド、フランス、ドイツ、スウェーデン、イギリスなど
2.9% オランダ
●不登校 12万2,250人 =1.2%
ひきこもり 政府推計 70万人 (平均年齢 26.6歳)
●うつ病 6-15歳児のうちの 1.5%
中学1年生のうち 4.1%
● 自殺 毎年3万人以上 人口10万人当り 25.8人 (オランダ 10人)
■ 原因はなにか?
○ 明治の学制(1872)以来の教育の歴史
・教育内容の統一
・国のトップダウン統制
・和魂洋才
~西洋の知識や技術と日本の道徳思想
○ 戦後の産業社会に合わせた教育
・民主化による、6・3・3・4制度の導入
・競争原理による教育
・教員が教える自由度の無い画一的教育
・教科書選択権の行政への移行と検定制度の強化
○ 結果として
・自分で考える訓練がない
・人との関係をつくれず社交性が育たない
・社会で役立つ能力が身に着かない
・自己肯定感が低く力を発揮できない
■日本が現在 抱える課題
・失業率の増大 (2010年第二四半期 5.2%)
・貧困な社会保障
~課税圧力(GDPに占める税金と社会保障費の率):29% (オランダ39%)
・雇用慣行(年功序列・終身雇用)の崩壊
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■ オランダとの違いはなにか?
○ 「近代」を理解しているオランダ、分かってない日本
・オランダ:「近代」とは、中世の暗黒社会が終わり、光が差し込みタブーがなくなる世界
=Enlightment
啓蒙思想により、合理的で多様性や自由を尊重する考え方が根付いている。
民衆に民主主義が根付いている。
・日本: 「近代」とは、西洋からの知識・技術や制度を取り入れた時代
⇒ 「近代 ≠ 産業化」 「近代 ≠ 物質主義」 であることをきちんと認識すべきである
○ 20世紀後半(60年代~70年代)の国の生き方
・ オランダ :「静かな革命」 ~カトリック規範の緩和 ~学生の静かな抵抗運動
第一次オイルショック後の深刻な不況 ⇒ ワークシェアリング等による共生
・ 日本 : 「右肩上がりの経済成長」 ~成長神話(成長幻想)
第一次オイルショックからの比較的早い回復 ⇒バブル突入 ⇒新自由主義
○ 社会統合の方法
・ オランダ : 「分権化された権力」と「参加意欲のある市民」
・ 日本 : 「少数のエリート」と「大多数の同調する大衆」
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■市民社会型成熟モデル
= オランダの共生教育=
◎ 共生=Inclusion
※ 日本では インクリュージョン=特別支援教育となり言葉の解釈が狭い
◎ 障害の有無で境をつくらないこと
・特別支援教育 WSNS政策 リュックサック政策 IB教員とAB教員
◎ 差別しないこと
・外国籍や低学歴の親 教育遅滞と呼ばれる子どもたち 難民不法滞在の子供たち など
■ インクルーシブ教育の基礎 (イエナプランの典型)
=1. 自尊感情と自己肯定感を育てる=
◎「タテ社会」を「ヨコ社会」に変える『サークル対話』 ・・・円形で話し合う
~お互いに意見を出し合う
~お互いの意見に耳を傾け合う
~共同で何かを産み出す
◎ 「遊び」をたいせつにする
◎ 多面的インテリジェンス
~空間スマート 身体スマート 言語スマート 数理スマート 思考スマート
社会性スマート 自然スマート 音楽スマートなど 多様なインテリジェンスを認める
◎ ラーニング・バイ・ドゥーイングの尊重 (ホンモノに学ぶ)
=理解・吸収のレベル=
・聴く 5% 読む10% ← 日本の教育はこのレベルが多い!!
・見聞きする 20% やって見せる 30%
・ディスカッション 50% 能動的に練習する 75%
・他の人に教える 90%
◎ フレキシブルな時間割
・学校は工場ではない!!
~子供の時間割は子供のバイオリズムに合せて子供が自覚して始められるように
~選ぶ =責任を持つこと
⇒ 自分で選択するからやる気が出る
◎ 生きる場としての学校
・生の空間
・個性のある教室
・教職員と保護者が出会える空間
◎ ポートフォリオによる自己評価
・一人ひとりの発達をすべて評価する
~「5・4・3・2・1」の相対評価では無い
~定期的にチェックし、強み弱みを明らかにする
~毎週、自分が一番良くできたことを知り、次に何をするかを決める
・子どもの発達を把握する、専任の管理する人がいる (教育監督局)
・親子面談の主人公は子ども
◎ 子どもを褒める
(ネガティブな言葉がけをしない)
◎ 自由放任では子どもは育たない
=2.共生の仕方を育てる=
◎ 子どもたちは、私たちにとって仲間の市民
◎ 大人しい子どもは「よい子ども」ではない
~自分で自分の気持ちを言葉に表せること
◎ ピースフルスクール
=子どもは仲間の市民という考え方=
皆違って当たり前という考え方が前提の上で
上級生をファシリテーターとして訓練する制度
~上級生が下級生の仲介役になることで先生の負担を軽減する
一人一人の発達が保障する教育というのは、一見手間がかかりそうです。
でも、それは管理しようとするからではないでしょうか?
~みんな違って当たり前
◎ 4歳からの生徒会
高校生の抗議運動
~教育監督局に何万件もの苦情がくる
(国が奨励し、まとめることを国が資金面で支援する)
~高校生の学校評価
◎ 性教育をきちんと教える
~公式サイト、青少年の「性と生殖の権利」
~議論をする授業
=3.教員と社会との関係性を高める=
◎ 教員を支える社会
~国立カリキュラム研究所
~先生のサポート機関
◎保護者と教員の協力
・保護者は学校を選べる
~不登校を回避できる
~学校は選ばれるように努力する
・経営参加評議会(MR)
・学校は、保護者に対し学校への不満と苦情の処理手続きを事前に明らかにしている
◎ 保護者と学校のコミュニケーション
・おかあさんモーニング
・スト―リバッグ・プロジェクト
~実際の教材を前にして、具体的に考え協力する
以上、
オランダの教育は素晴らしい取組みをしていると思いますし、
とっても勉強になりました。
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また、以下はEFC鷺島さんブログからの引用です。
一人一人の発達が保障する教育というのは、一見手間がかかりそうです。
でも、それは管理しようとするからではないでしょうか?
子どもに対し、自立、主体性、自主性を望む日本であり、私たち大人ですが、
どれだけ人の成長を信じられるか(例え子どもであろうと)、
どれだけ手間をかけるか、工夫するか、
真剣に取り組む覚悟みたいなものが、私たちにあるのか?
オランダは、教育の改革に10年~15年かかったそうです。
これから私たちの10年が始まります。諦めずに一人一人がやれることを!
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オランダの教育の詳しい内容は、リヒテルズ直子さんの新刊に載ってます。
ご興味を持たれた方はぜひお買い求めください。
平凡社 \1,890 (税込) 2010年10月2日出版
↓ ↓ ↓
『オランダの共生教育』
学校が<公共心>を育てる
また、中川さんが近日中に、講演ビデオをWEBにアップする予定だそうです。
ご期待ください。
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それから、この後の質疑と私の「日本の教育の現状と課題」を述べた
(続き)がありますので、ご覧ください。
↓ ↓ ↓
どうぞよろしくお願いいたします。
中山 弘 記
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