●10/12 リヒテルズ直子さん講演会(続き) | 【2030vision x PURC】 ブログ

●10/12 リヒテルズ直子さん講演会(続き)

リヒテルズ直子さん講演会の続きです。

 ※講演そのものは以下です。
 ●10/12リヒテルズ直子さん講演会

このページでは、講演の後の質疑と、私(中山)の感想です。

≪質疑≫

Q. オランダの共生教育は素晴らしいと感じましたし、日本の教育が抱える問題を
   解決するヒントがたくさんありました。
   いっぽう不思議に思うのは、日本からも政治家や教育関係者が毎年たくさん
   訪問して見学しているにも拘らず、いっこうに変わる気配がありません。
   なぜ日本ができないと思われますか? (中山)

A. 
 ● 日本は批判的精神よりも同一化で成功した。
   ・これが効率的と勘違いしているから、問題意識が低く改革マインドが弱い。
 ● 市民運動は進んでいるが連帯感がなく、大きなパワーになりにくい。
 ● 少数意見が活かされない政治の仕組み
   ・小選挙区制で一人一票が生きない。⇒比例代表なら人々の意識を反映できる
 ● マスメディアに多様性がなく、一定の情報しか流さない
   ・ゆえに国民の見識が高まらない
 ● 議員と官僚が産業社会型教育を受けているから、現状を肯定している。
   ・ゆえに変われない
   ・オランダの現場を一目見て、「これはダメだ。」と決めつける人間までいる。


Q.大学入試をやめて高校卒業資格制度を採用すべきという提言は全くその通りだと思います。
  いっぽうで、オランダでは高校間の格差が少ないので卒業の質を保証できるが、
  日本では学校間の格差が大きいので公正に質を測るのが難しいという指摘もあります
  これについてはどう考えますか? (中山)

A.
 ●オランダでは一人ひとりの適性として子どもを見ている。
   無理をしてもいけないと考えている。
   学歴さえあれば良い仕事に就けると信じている日本とは違う。
 ●オランダでは中2の段階で将来を決める。
   いっぽうやる気さえあればやり直せる。
 ●学歴社会になっているのは、学歴と給与が結びついているから。
   給与格差があるから、有名校に行こうという意識になる
   税で再配分をすれば給与差が少なくなる。→結局は税金の問題
 ●大学の格差は単位互換制で減らすことができる。
   どこの大学に入っても、同じ授業を受けられれば格差はなくなる。
 ●高校格差は入試があるから生じるので、入試がなくなれば問題は解決する

 ※この件に関しては、さらなる問いをしたくなりましたが、遠慮しました。
   ⇒後の感想に記します。


Q.学校と地域コミュニティーとの関係は?  (キャリアサポート関係者)
 
A.
 ● 日本では学びそのものが意味のないところになっている
   子どもがエクスクルード(排除)されている
 ● 先生と保護者と生徒が互いに信頼しあって、協力関係をつくることが必要だが、
   日本では先生が指導案づくりと雑事の対応に追われていてそれができていない
 ● 学校を理想の教育環境にすることが大切


Q.結局、制度の話になったが、これには違和感がある。
  制度を変えるのは無理。何年やっても何も変わらない。 
  住民が学校の補習を手伝うなどの活動で解決するしかないのでは? (学校ボランティア)

A.
 ● 市民活動も大切だが、これだけでは解決策にならない。
   同時に制度や仕組みを変えることも不可欠であり、両方が必要である。

以上

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以下、中山の感想と考察です。

◎ 大学入試をやめて高校卒業資格制度へというのはまったく同意見です。

”2030ビジョン”プロジェクトの日本の教育に関する問題意識は以下のようになります。

大学入学が自己目的化し、これに合わせた入試制度をとっているために、
高校までの教育内容が受験を目的として歪められ、自ら考える力、生きる力が育たない。
協働性、市民性、社会性、なども不足したまま成長し、教育の成果を世の中に活かしきれない。
⇒結果として役立っているという満足感も得にくい。

調べもの学習やグループ学習などを取り入れた新指導要領をいくら作ったところで、
受験期になると「それはともかく今は受験に専念だ。」と不毛の受験指導に時間を費やしている。

また、同時に受験目的の塾・私学への依存度が増すことで公教育が弱体化し、
親の資金力がないと学力がつかず、教育格差もどんどん広がっていく。

さらに、卒業の質が保証されないので、学校を出たからといって企業はそのまま採用もできず、
入社選抜がシビアになり、学業よりも就活が優先されるという本末顛倒なことになる。

この悪循環を断ち切るには、大学入試をやめて高校卒業資格制度に変えるべきです。


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  出典:”2030ビジョン”第15回検討会 「未来を創る教育のあり方」~青年期に何を学ぶか 2010年2月 配布資料
  「未来を創る教育のあり方」視点

このような話をすると、次のような反論があります。

【学生】
 ○ 入試で勉強したことは、基礎知識として役に立つ
 ○ 無意味だと思っても頑張るから、忍耐力が養われる
 ○ 通過儀礼として有効だ。

 でも考えてみて下さい。
 ● 基礎知識なら知っていればよいので、丸暗記する必要もない。
 ● 受験のための反復練習は、スポーツの世界の「うさぎ跳び」と一緒。
   ・・・時間を無駄に過ごすだけ。
 ● 通過儀礼に時間を使うよりも、一人ひとりが持つ能力や才能を
   社会に活かせるように時間を有効に使うほうが遥かによい。

【教育関係者】
 ○ 高校の格差が大きいので、入試をしないと正しい選抜はできない。
   (入試コストは低いので、精緻でないのは分かっているが)
 ○ 受験勉強をしなくても、AO入試があるから大丈夫
 ○ 大学入試は収入確保の上で大切 (うがった見方だが)

 でも考えてみて下さい。
 ● 今の入試制度で、人間を見れているのですか?
   就職の時には人物評価になるのに、大学入学は単なる○×で良いのですか?
 ● AO入試が増えることが勉強しない高校生を生み、学力低下につながる。
   結果として大学入学後に、中高の補習につぐ補習では、何のための大学か分からない
 ● 入試を収益源と捉えるような経営姿勢を変えたほうがよい

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結局のところ、『何のために学ぶか?』に帰結します。
教育の目的が、『社会で役に立つ生きた力』を身に着けることだとしたら、
おのずとやり方が変わるはずです。

”2030ビジョン”プロジェクトが目指す教育観は以下のようになります。

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さて話を戻して、
この高校卒業資格は大検とは性格の異なるものであり、
真の社会人としての資質を見るものでなければいけません。

すなわち、○×テストではなく、考える力や協働力、社会性、などを
できるだけ客観的に評価することが必要です。   

オランダやデンマークでは複数の高校の先生が相互評価をしたり、
高校3年間の総合成績をベースにするという話も、別なところから聞きました。

ここで問題になるのが、高校の格差です。
オランダやデンマークでは高校の格差が少ないので評価をしやすい。
しかし、日本では格差が大きいので、これが難しい。
しかも現在は、中高一貫校を含めてますますこの格差を広げているように感じます。

そこで、私はリヒテルズ直子さんに、2.の質問をしたのですが、
明確な答えは得られませんでした。
(著書 「オランダの共生教育」 を読み、衆議院議員懇談ビデオ を観ましたが、良く解りません)

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でも、直子さんの質問への答えから次のような可能性はあるかもしれないと感じています。

■2020年ぐらいまでの、10年スパンで考えた場合に

 □ 大卒の就職がますます難しくなる
   ⇒ 「卒業の質」の保証が厳しくなる
      ~学力のみならず人間力が必要となる
      ~就活で1.5~2年も時間を使えない
   ⇒ 入学時の人間力としての質が大切になる
    ⇒ 高校卒業時の総合力が求められるようになる

 □ 実力のない大学、特徴のない大学は生き残れない
   ⇒ 単に入学できればOKという大学は淘汰される
    ⇒ 生き残った学校間の単位互換が進む
     ⇒大学間の格差が減少する

 □ 大学卒業後のモラトリアムが一般化する
   ⇒ 自らの適性や資質についての関心が高まる
    ⇒ 社会についてより深く考えることが増える


 □ 産業構造が変化し、デスクワーカーのニーズが相対的に減少する
   ⇒ 大卒の価値が薄れる
    ⇒ 職業教育の重要性が増す

すると
 ◎ 「とりあえず大学に行けばなんとなる」という価値観から親も子も変わっていく
   ⇒高校までに将来の進路をより真剣に考えるようになる
    ⇒ 何をどう学ぶかの重要性が増す
     ⇒ 学ぶ中身の質がより大切になる

 ◎ 進学以外の教育要素の価値が高まり、高校間の単位互換が進む
   ⇒高校の格差が減少していく

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さらに、
■ 2030年ぐらいまでの、20年スパンで考えると

 □ 同一労働同一賃金的な考え方が増えてくる。
   ⇒学歴による賃金差が少なくなる
   ⇒ 年功序列賃金でなくなるので、生活を支える社会保障は充実せざるを得ない

 □ 貧困をなくすために社会保障が進化する
   ⇒ 税による再配分が大きくなる
    ⇒ 競争社会から共生社会へのマインドシフトがおきる

  (これは、資本主義、産業革命以降の物質文明がもたらした社会の歪を
   是正するための、必然的なパラダイムシフトともいえます)

つまり、欧州が20世紀になしえた共生への移行が、
日本でも21世紀初頭に起きることになる。

いずれにしても、我々国民の一人ひとりが「何のために学ぶか?」
を真摯に考えて、価値観と教育観を変えることが必要です。


さて、みなさんはどう思われるでしょうか??

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なお、”2030vision x PURC” 次の企画グループでは
『はたらく』について深く考え始めています。

ご興味がありましたら、以下をご覧ください。

 ⇒ 10・13「はたらく」企画MTG
 ⇒ 10・13「はたらく」企画MTG(続き)
 
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