2024年11月24日、東久留米で実施した
「登校拒否・不登校・中退者のための 進路学習会」
で、体験談をお話しました。

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<2:不登校の間の親の葛藤と気付き>

うちの娘は、小学校1年の2学期、転校をきっかけに行けなくなりました。
その頃わたしは、テレビや本などで「学校に行かない、あるいは行けない、不登校の子」
がいるのは知っていました。
不登校の子を無理やり登校させるのはよくない、というのも知っていました。
「知識」としては知っていたんです。
でも、それが、どこか他所様のお子さんではなく「我が子」となると、話は全然違います。
学校は行くもの、行くのがあたりまえ、というのがわたしの「常識」なので、
アタマでは理解していても、感情がついていかないんです。

我が子が学校に行かなくなった時、
多くの親は、テレビや本で、有名な先生が言っているように、
「行かなくていいよ」と言ってあげたほうがいいのでは?と考えたり、
「でも、ちょっと休んでそのままズルズルと不登校になったらどうしよう?」と思ったり、
「励ませば、行けるんじゃないかしら?」と思ったり、
いろいろ考えたり迷ったりすると思います。

一方、子どものほうは、「本当の限界」です。
ちょっと頑張って行けるものなら、すでに行ってる。
頑張って行けないくらい「限界」だから、行けないし、身体症状にでる。
そこを、親は見誤ってはいけないと思います。
子どもの「限界」「辛さ」に向き合うと、「このまま不登校になったらどうしよう?」
「不登校になって、この子の将来はどうなるのだろう?」という「親の不安」が大きくなります。
その「親の不安」を抱えるのが辛くて、つい、子どもの「辛さ」を勝手に割引して、
限界状態の子どもに「もうちょっと頑張ってみよう」なんて言っちゃったりするんです。

あの手この手でなだめすかして、子どもを学校に行かせようとする親は多いと思います。
でも、やがて、子どもが全く動けなくなる時が来ます。
その時やっと、親は諦めて「学校に行かなくてもいいよ」と言えるのかもしれません。
足に深い傷を負って血を流している人には、
「病院に行って手当てしてもらおう、傷が治るまでゆっくり休もう」と言えるのに、
不登校の子には、何故言えないのか。

今、親が安心することよりも、
将来にわたって、子どもが安心して自分らしく幸せに生きていけることのほうが大事なはずです。
親は、皆、そう考えているはずなのに、
子どもが学校に行けなくなると、なぜか、そこを忘れちゃうんですよね。
わたし自身もそうでした。

小学校1年生の娘が、ランドセルを背負ったまま、
玄関でまるで根がはえたように、一歩も動けなくなった時、
わたしはやっと諦めて、「学校に行かなくてもいいよ」と言うことができました。

娘は、その後、少し荒れた時期もありましたが、
本当に学校に行かなくても良いとわかると落ち着き、
家の中で過ごしたり、妹やわたしと公園で遊んだり、
学校に行かない意外は普通に過ごすようになりました。

ところが、です。
学校に行かず、家の中で落ち着いて過ごす娘を見ているわたしが、辛くなりました。
「なんでこの子は、学校に行かず、楽しそうにしているんだろう」とイライラしました。
イライラしましたが、そのイライラを娘にぶつけるわけにはいかないので、
「お母さん、ちょっとお買い物してくるから、お留守番しててね」と言って、家を出ました。

自転車でスーパーに行き、買い物して、でも家には帰りたくなく、
かといって、そうそう長く留守にするわけにもいかず、のろのろ遠回りしたりしました。

自転車をこぎながら、このまま車道にハンドルをきったら家に帰らずにすむなあ、
とぼんやり思い、
でもそろそろ家に帰って夕飯をつくらなくちゃ、子どもたちがお腹空かせてる、
と家に向ったこともありました。
車道のほうではなく家に帰るほうを選べたのは、本当にたまたまだったと思います。
あぶないところだったと自分で気付いたのは、1〜2年たってからです。

不登校になる子どもが一番辛いわけですが、親だって辛い。
自分の子育ての何が悪かったのか、これから子どもをどう育てればいいのか、途方に暮れます。
そんな時は、どうぞ「親の会」に来てください!

時には、家族に協力してもらって、「一人の時間」を確保してください。
自分の好きなことでリフレッシュする時間は大事です。
親が自分の人生を生き生きと楽しそうに生きてることが、
子どもに対しても何よりのギフトになると思います。

この時期に親の心得として大切なのは、

○第1に「親の不安を子どもに負わせない」ということです。

普通の親は、自分が不安になると、
その不安の原因である子どもに自分の不安を押し付けようとします。
タイプその1)なんで、行かないの? みんな行っているのに、行けないなんて情けない! と、子どもを攻撃する親。
タイプその2)直接子どもを攻撃しないけれど、
   子どもの前で不幸そうな暗い顔をしたり、大きなため息をついたり、嘆き悲しむ親。
   
タイプその3)大人同士で「あの子がこうなったのは、おまえ・あなたのせい」と喧嘩して、責任をなすりつけあう親。 
   
「これはダメなんだ」と気付いて、自分の不安はダダ漏れさせないように努力してください。
努力しても、何度も失敗して「しまった!」と後悔します。
でも、努力するうちに、だんだん少しずつ、漏れ出なくなります。
漏れ出す不安より、子どもに寄せる信頼のほうが、子どもに見えるようになります。


○親の心得その2、
子どもを全力で守り応援する決意をして、子どもに「あなたの味方だよ」と伝えてください。
肚をくくりましょう! どこぞのよそ様のお子様ではありません。自分の子どもです。
自分が守らなくて、誰が守ってくれますか!
まずは、「子どもを全力で守り応援する決意」をして、それを子どもに伝えてあげてください。

お母さんが、お父さんが、学校や社会の味方ではなく、
自分の味方でいてくれる、と信じられることは、どれだけ子どもの力になるでしょう!
でも、「味方宣言」したら、一気に不登校がおさまるわけではありません。
むしろ、「試し行動」が増えると覚悟してください。
 
あなたの味方だよ、と言われた子どもは、
本当に味方してくれるのか、あの手この手で親を揺さぶって試します。
「こんなに情けない自分でも、本当に親は見捨てないでくれるのか」を子どもは試しているのです。
 
ここで、子どもから目を離し手を離したら、ダメですよ。OKを出し続けてください。
とは言え、危ないことや、人間としてダメなことは、冷静にダメと言ってください。

子どもの存在にOKを出すことは、甘やかすことではありません。
子どもが大事なら、危ないことや、犯罪などが、OKなはずはありません。
でも、学校に行くとか行かないとかは、どうでもいいことです。
子どもは、自己肯定感がたまったら、ちゃんと自分で歩き出せます。


○親の心得その3
子どもが不登校になると、親は
出口が見えない暗いトンネルをとぼとぼと歩いている気持ちになります。
いつまでこのトンネルが続くのか、はたして出口はあるのか、どんどん心配になります。
そんな時は、タイムスパンを長くとってみてください。
1年後2年後の受験をどうしよう、ではなく、
5年後10年後に、この子にどんなふうに生きていて欲しいかを考えましょう。

いつか将来、この子が
自分の好きなこと、得意なことをみつけて、やりがいのある仕事に出合い、
信頼できる友だちや恋人や家族と、笑顔で過ごせていたらいいな、と思いませんか?
5年や10年、回り道しても、まったくかまいません。大丈夫です!


続き(体験談その3)はこちら → 

 

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