今度こそ、ちゃんと太一を捕まえてくれた。いつも太一が追っかける番だったけど、今度こそ…。

 

「うめっ」

って言う太一に

「おいしいね。」

って答える航平の声音の優しいこと。何も変わってない。いつもの航平。つい昨日まで一緒にいたかのような、そんなことさえ思わせる、あまりにも優しい声音。

 

そしてそれはこれからもずっとこの関係が続いていくとしか思えないもので、

あの時「元気でな」と別れて以来だなんて嘘のような、声音。

 

 

無理やりお母さんに連れてこられたって言う航平。

 

「ねえ、太一」

って声かけて、ちゃんと太一を自分の方に向かせてから、

 

「久しぶりだね」

って笑顔で声かける航平。このまま二人で歩いていく人たちを眺めながら(お母さんもいなくなっちゃったから、探さなきゃいけないし)話をしてもいいはずなのに、太一にちゃんと自分を向いてほしい、って思う気持ちの表れで、

 

もう、それだけで、太一への想い、変わってないんだよね、って安心できる。

 

だって、11話の終わりで、太一がフラグ立てたから悲しいタラー左矢印

 

「ああ」

って答える太一。ここで二人がうっすら微笑んでいてよかった。

あんな別れ方して、しかもそのあと連絡取ってなかったから、ぎこちなくなっちゃうんじゃないかって思ってたけど、航平が笑顔で太一を見つめるから、何も変わってない、って安心できる。

 

 

「忙しいんだよね。」

 

 

「連絡できないくらい」

って少し嫌みの入るその言葉と裏腹に、言った後、ふっと笑う航平。

 

いたずらっ子のよう。

太一に、こんな態度をとる余裕ができた?

 

その言葉に、ふっと笑いながら

「それはお前だって。」

って言う太一に、

「できないでしょ、俺からは」

「太一が頑張ってるの、邪魔したくなかったし」

 

って、さっきまでの笑顔から少しこわばった顔になって答える航平。

 

邪魔したくない。

そう言われて、

 

何も答えない太一。

 

 

お前、まだそんなこと言うんだな、とか、なんでそう思っちゃうんだ。

まだ、そんな風にしか思えないような関係でしかなかったのか、俺たち。・・・

 

そんな言葉、きっと太一の中にはないかもしれないけど、

でも、この寂しそうな太一の表情が、

航平はいつでも自分から去る覚悟を決めてるのを

わかりすぎるくらいわかってしまってることを思わせて・・・。

 

本当に胸が痛い。

 

置いてけぼりにしちゃだめだ、って思ってる太一の気持ち。

いつでも手を伸ばしてきた太一の行動が何よりそれを語ってるのに・・・。

 

届いてるはずじゃなかったの。

どうしたら、航平に届くんだろう。

 

そんなじれったさが募る。

 

 

マヤに言った太一の言葉。

「聴こえなくても、寂しくないって思える場所を増やしていけるんじゃないかなって思って。」

 

「それがいつか」「あいつのところにまで届いて」

 

「どこにいたって、あいつが笑っていられるような」

 

「そんな世界にできたらいいなって思ったんだよ。」

 

その覚悟で仕事してる。

 

そう言えば、航平はもう、邪魔したくない、なんて言わなくなるんだろうか。

 

自分の中心には、いつも航平がいること。

どうしたら伝えられるんだろうか。

 

そんなこと、単純太一が思いめぐらしてるはずはないと思うけど(ひどい・・・・)

 

でも、そんな言葉にした思いは言葉にならなくてもずっと太一にあること、

でも、伝わってない、ってもどかしく思ってることが、

小刻みに揺れる太一の体とこの横顔が存分に語りかけてきて・・・。

 

苦しい。

 

そんな太一をじっと見つめてる航平もまた、何も言わない。

 

 

この、何も言わず、見つめ合ってる二人の何秒間が、

一緒にいても、こんなに遠く離れてるって思えて・・・。

 

本当に苦しくて切ない。

 

「ヤスから聞いたよ。新しいノートテイカーのやつとうまくやってるんだって。」

そのことばは、

忙しくても、航平のこと、気にしてないわけじゃない。

むしろ、ずっと気にしてる。

 

きっと、そう伝えたかった太一。

 

「うん、仲良くやってるよ。」

って答える航平は、いつもはわかりやすく伝わりやすく真っすぐ自分を見て話してくれる太一が、全然自分の方を見てないこと、どう感じてるんだろう。

 

原作では「でも、教授の冗談までは教えてくれないけど」

って寂しく笑う航平が描かれてる。

 

でも、ここで、航平はそんな、未練のあるようなことを言うわけにはいかない。

太一の進む道を見送る、って決めてるから。

 

「そっか、よかったな。」

って答える太一の姿に、必要ない、もう大丈夫、って言ったことを証明できた、

と思った?

 

これでもう、太一の進む道を邪魔しないですんでる、

あの選択は間違ってなかった、とでも思った?

 

その言葉と太一の様子をじっと見て、ここで、大きく息を吸う航平。

何かを言おうとしてる。

 

 

 

「会いたかったよ。」

その言葉に、ようやく航平の方を向く太一。

 

 

「ずっと太一に会いたかった。」

 

 

え?え?・・・・まさかの????

って、ちょっと浮かれそうになる自分。

 

ようやく、ようやく、航平が自分から進んでくれた????

 

 

 

でも、太一はここで4話の時のように

「はあ、何だお前。そんなに俺のこと、好きだったのか。」

なんて気軽に答えない。答えられない。

 

だって、航平が自分のことを本当に好きだと、

友情以上の想いを持ってることを知ってしまっていたから。

 

 

いつもの太一なら、軽く流してくれるはずなのに、こうして押し黙ってしまった。 

そして

「航平」

って言いながら、

自分を見つめる視線の険しさと 

 

 

その視線がそらされたことで 

  

何かを感じた?

 

 

 

「俺さ~・・。」

の太一の言葉を遮るように、

笑顔を作って 

 

「ねえ太一」

「またこうやって会ったりできる?」

 

「友達としてさ。」

 

このきっぱりとした言い方と、清々しいまでのこの顔つき。

 

もう、太一への想いは過去のものになってる。

太一だけが自分の世界じゃない。太一は特別じゃない。

 

そう告げてくる。

清々しい、決別。

 

 

笑顔なんだけど、その笑顔が伝えてくるものは、自分が思ったものとあまりにも違いすぎて、茫然としてしまった。

 

 

それは、見てる私以上に、

太一が感じてる・・・・。

 

 

 

目をそらしたのは、これ以上見つめると、

言っちゃいけない言葉が出てくるから?

 

 

言っても、もう、届かない言葉が出てくるから?

 

 

ここで、太一の顔がほんの少し、ゆがむ。

「もう、そんな言葉、言っても届かない。」

って思ってるかのよう。

太一らしくない、諦め…。

 

 

そして、また航平を見つめる太一。

 

お前は、もう、本当に俺のことが必要じゃないんだな、

って確認してるかのよう。

 

 

そっか、じゃあ、今の俺に言えることは…

でも、・・

 

って迷いがあることを感じさせるこの視線が本当に苦しい。

 

一緒にいても、迷子のまま・・・。

 

 

でも、覚悟を決めるしかない。

 

「当たり前だろ。」

 

そう答えることが、今の航平の一番望んでいることだってわかってしまったから。

いくら鈍感な太一でも、こんなに念押しされてしまったら、もう抗えない。

 

「よかった」

そう答える航平の顔を、太一は見ていない。

 

でも、あくまで航平は、

自分が選んだことは間違ってない、って思ってる

この顔。

 

 

「間違ってない」

あたかもそう自分に言い聞かせてるかのように、

目をつぶる航平。

 

そんな航平を見ないまま、

 

「じゃあ、俺そろそろ帰るわ。」

ってその場から逃げるしかないよね・・・・。

 

 

その後ろ姿をじっと見つめている航平。

これでいい、って思ってる?

 

 

 

 

このシーン。

 

せっかく二人が出会ったのに、この張り詰め方は何だろうって思ったら、

二人の気持ちが全然すれ違ってて、

言葉と気持ちが裏腹なことがめちゃくちゃ伝わってきたから。

 

 

もちろん、マヤに言ったことを航平に伝えきれてない太一がよくないけど、

それにしても、

航平の「太一の邪魔になりたくない」なんて言葉はとてもきれいだけど、

それは太一との関係、太一の想いから

逃げてることになってるってどうして気が付かないんだろう。

 

どうして・・どうして・・・。

 

 

 

 

そして、ここでもまた太一は捨てられてしまった。

 

 

 

何度も、何度も捨てられた太一。

 

 

 

だから逃げるしかないよね。もう、受け止めるには、あまりにも大きすぎて‥‥。

 

 

この時と、状況は全然変わってなかった。

 

むしろ、悪くなってる。

 

航平が、きっぱりと自分と決別しちゃったことを

確認してしまったから。

 

 

 

 

 

 

 

ここ、わずか3分くらいのシーンなのに、

太一の表情や目線があまりにも雄弁で、本当に胸をえぐられすぎてる。

 

 

 

 

 

虎くん、こんなに繊細なお芝居しちゃうから。

 

 

 

 

 

 

だから太一の、今のむごさが、余計に胸に迫る・・・・。