「俺はもう、太一がいなくても平気だよ。」

そう言いながら目を伏せたのは、

これ以上、太一の顔を見ちゃうと決心が鈍るから。

薄く開かれた唇から、

本当は、そうじゃない言葉が漏れ出そうになるから。

 

もう、痛々しすぎて苦しすぎる…。

 

その言葉の裏にあるもの、太一には届かない。

「いなくても平気」

そんな、酷い言葉だけが届いてしまった。

 

 

「なんだよ、それ。」

 

「好きにすりゃいいんだろ。」

「悪かったな。余計なお世話で。」

 

みるみる潤んでいく、太一の瞳。

 

こういう時の虎くん、ほんと、最強(え?)照れグッ気づき

眦が赤くなって、

なんていうのかな。

より、思いが強く迫るっていうか。

瞳が最大に、想いを告げてくる。

目をそらせない。

 

 

 

航平は、そう言われること、覚悟してたのかな。

どうなんだろう。

一瞬、険しくなる航平の表情。

 

「お前は・・・お前はもう」

 

ここで押し黙る太一。

いつもなら、思ったこと、そのまま出すのに、

黙ってしまうのは、それを言ったところで、

って諦めたのかも。

 

本当ならこの続き。

「俺がいなくても、平気なんだな。」

なんて、自分に鞭打つ言葉。

いまさら、できるはずない。

 

4話で航平は

「太一、俺さ、なんか、急に分かった。」

「太一にすごく会いたかったんだって。」

 

なんじゃ、そりゃ、って、その時太一は照れてたけど

「太一がおいしいって言ってると、こっちもなんか、

嬉しくなって」

「やだな。」

「あれが」

「聴こえなくなるのが」

 

って言った。

今までは聴こえないから仕方ない、

って諦められてたのに、

諦められなくなってる自分に気づいて

離れようとした航平に太一は気づいて

「頼むから、もう一人で我慢なんかすんなよ。」

「ちゃんと相手に伝えろよ。」

「最初から、諦めたりすんな。」

って必死でつなぎとめて、

 

さらに航平の気持ちを受け取って

 

「でも、いくら考えても、

お前を嫌いになる理由が

見つからなかったんだよ。」

って、一緒に考えたいってきちんと航平に向き合ってきたのに。

 

なのに「平気だよ。」なんて突き放されてしまったから。

 

「鈍いよね。」って航平は言ったけど、

ここの航平こそ、鈍すぎる。

 

けど、そうやって諦める、ということで

身を守ってきたから、仕方ないのかな‥。

とも思うけど、でも・・・。

 

責めている言葉とは裏腹な太一に気づいた航平。

「太一」

航平は太一に嫌われるのが怖いって存在だったはずなのに、

「平気だよ。」

なんて、それがどれだけ酷い言葉なのか。

 

その一言が

どれだけの切っ先をもって

太一を切ってしまったか。

ようやく気づいた?

 

でも、だからこそ、追いかけられなくて…。

 

もう切なすぎる。

 

あれだけ、「相手に伝えろ。」

って太一は言ってきたのに、

航平はそれをしないんだろう。

 

なぜ、こんなにも伝わらないんだろうって、

なぜ、こんなにも難しいんだろうって。

言葉が足らなさすぎる。

もう、もう、もう・・・・。

 

地団太を踏んでしまう。

 

 

 

 

 

「平気だよ。」の言葉。

それは航平はもう自分がいなくても平気だってこと。

それは、航平がそう判断した、いわゆる公平側の理屈。

でも、太一はそれを

「せっかく友達が頼ってくれたのに、

自分の都合で振り回してばっかでさ」

って言う。

その言葉で、自分が悪いって思ってたことにちょっと驚いた。

 

そんな太一に、おじいさんは

「どんな奴とだっていつまでも同じ場所にいられやしない。」

 

だから

 

「おめえは足元を照らしてくれる明るい道を行けよ。な。」

と背中を押す。

 

 

太一は、航平に突き放されたことは辛いんだけど、

この言葉で自分が寂しいという事実に

向き合うことになったんじゃないかな。

 

「足元を照らしてくれる明るい道」って何だろう。

 

それは寂しさじゃないことは確か。

 

明るい、ってことは後ろめたさがない、

誰にも、何も言われない、自分で決めた道

ということなのかもしれない。

 

 

 

一方、航平はマヤから、

太一のことが好きか、って聞かれて

「うん、片思いだけどね。」

って、すっと言っちゃう。

 

原作ではここで航平の性的指向について

マヤが尋ねる言葉があるけど、ここでは出てこない。

そういう指向は関係なく、

あんな(言い方!笑ニヒヒ)太一は必要な人か、

と問う。

 

ここで航平は少し考えて、

「こういう耳じゃなかったら、って考えたことない?」

「俺はあるよ、何度もある。」

「ちゃんと聞こえてたら、

全然違う人生だったんだろうなって。」

 

「話すことを怖がることもなくて、

無理して笑うこともなくて、

新しいことにどんどんチャレンジできて、

楽しいことがたくさんあって。」

 

「最近まで忘れてたんだ。

笑うこととか、怒ることとか、

誰かのために何かしたいって考えることとか。

 

何も考えずに、

ただ、息してるだけだった。」

 

何も考えず、ただ息をしてるだけ。

それは、どれだけの孤独だろう。

 

息が詰まる…。

 

 

それはマヤもおそらく同じ。

 

聴こえることを知っているからゆえの、

喪ってしまったことの

苦しさ。

 

 

でも、ここで

 

「でも、太一と一緒にいるうちに思い出したんだ。

いつもお腹すかせて、

走り回って。」

 

 

太一のあれこれを思い出してるんだね。

 

笑顔になってしまう航平。

 

「他人のことなのに、本人以上に怒って。」

 

「聴こえないのは、お前のせいじゃないだろ」

 

「講義の内容よりも教授の冗談を

一生懸命教えてくれて。」

「気づいたら、俺も一緒に笑ってた。」

 

 

いつもなら、マヤを見てわかるように言う航平が、

マヤを見ない。

 

それは、今更のように、

喪ってしまったものの大きさを感じているから。

 

もう、戻れない。

 

それがわかっているから・・・。

 

航平には、今のマヤも見えていない。

 

ただ、ただ、

太一との日々があるだけで…。

 

 

 

 

だからこそ、マヤは聞き漏らさまいと耳を澄ます。

 

 

 

 

「太一と逢えてよかった。」

 

「太一と逢えたから、

俺は今の俺でよかった、って思えたんだ。」

 

「嫌なこともたくさんあったけど」

「こんな耳いらないって何回も思ったけど、

太一と逢えたから、

それだけでよかったって。」

 

 

「だからもう少しだけ」

 

 

このままでいたかった。・・・・

 

 

 

 

 

 

おじいちゃんの言葉じゃないけど、

「いつまでも一緒にはいられない。」

 

だからこそ、一緒にいられることの尊さ。

 

それをなぜ、太一は大事にしようって思わなかったんだろう。

 

今できることなんて限られてるのに、

なんて思うけど、

太一はそれだけ、航平のことを考えて、

少しでも早く、って思う気持ちもわかるから、

余計に

きちんとお互いの想いを分け合って、

この選択につなげてほしかった。

 

 

 

ここまでマヤに語れるのに、

太一には全然語れない。

 

航平の「自分はひねくれてるから」

って言葉が余計に重くのしかかる。

 

 

ふう~・・・・・・・。

 

 

もう少し、

このままで

いてほしかったのは

ワタシタチモ

デス!!!!

 

 

 

 

 

 こーゆー二人が

不足してるんですけど

(ずっと言っちゃう)wwww