冒頭、雪のシーンから始まる。

 

最近朝夕が涼しくなったけど、昼間がめちゃ暑かったり、

そうかと思ったらすごい冷え込んできたり、と

こっちの情緒に合わせてるの?

とでも思わせてくるような天候の日々で、

そこに冒頭の雪のシーンがやってきたら、

もう、一挙に現実はすべて雪の下へ…。

 

 

 

 

現実の雪はいろいろ、混乱を招くことも多いけど、

全てを覆いつくして白一色になってしまう、あの静けさに、なぜかいつも惹かれてしまう。

そんなことを想いながら・・・。

 

2人の想いを覆いつくして隠してしまうかのような暗示の、雪。

そして、すべての音を包み込んで、届かなくしてしまう、雪。

そんな、暗示さえ感じてしまう冒頭。

もう、この段階で切なさがひたひたとやってくる…。

 

高校生、のある意味、無敵のようなきらきら感。

信頼し合ってる二人の、見つめ合う笑顔が、

もうこの段階で

実はもう二度とない瞬間であったことを感じさせる切なさ。

 

 

 

風間監督の切り取り方が、もう、切な過ぎる…。

 

 

 

紬が佐倉を見つけた瞬間。

彼が、大事にしている言葉の中に、

「想いを紡ぎ」とある。

 

自分の名前でもある、「想」の『想い』をつなげていくこと、

それはある意味、

紬の名前の

「繭などから紡いだ絹糸でできた織物」

の中に存在している。

これは偶然?  

 

 

佐倉と紬の出逢いの瞬間。虹が映りこんでる。

 

こんな切り取り方も、風間監督ならではだと思う。

このキラキラ感。

もう、幸せしか待っていないとさえ思える。

高校生の無敵さを改めて思う。

 

なはずだったのに…。

 

 

抜けるような青空。

もう、べただけど、

「青春」の象徴だと思うのは、

青空がやっぱり、眩しいから?

 

でも、本当は誰にでも、平等に広がっている空。

空は、ただ、いつでもそこにある。

でも、見上げるなんて余裕、

なかなかもてなくて・・・・・そして

いつも、意味を見つけるのは、こちらの想い。

 

紬の

「何、聞いてるの?」に、

 

お前が何聞いてんだよ、って、

戸川、本当にいい人全開。

 

こうやって、ずっと二人を見守ってきたんだろうな…。

自分の気持ちに蓋をして…。

 

だから、高校時代の友人から、

「湊斗、ラッキーじゃん、想がいたら、

紬さん、お前と付き合って無くない?」

「再会とかされたら、ヤバくない?」

こんな悪意のある言葉をぶつけられても、

反論なんてすることはない。

けれど、ずっとこの言葉が呪縛のようにこだまし続けていく、

そんな悪い予感しかしない。

 

 

「じゃあ、はい。」

って差し出す佐倉。曲名を言わなかったのは、

それがあまりメジャーじゃなかったから?

でも、自分が身に付けてたものをすぐに差し出すなんて、

なかなかの距離感。

それはきっと、紬の屈託のなさが、

佐倉と信頼関係を作ってきたからだろう。

 

じっと紬を見つめる佐倉の瞳が問いかけてる。

その曲、知ってる?好きかな?気に入ってくれてる?

 

 

 

なぜ、言葉があるのか。

 

 

あの日、言葉について語った佐倉は、

実はそんなに多くを語らなくて、

こうして瞳で語ることが多いことに気が付かせる、

このシーン。

 

ずっと、この笑顔を紡ぎに向けてたから、

多くを語らなくてもよかったのかもしれないけれど…。

 

 

学校の特殊さ。

物語の中で、紬が言う。

「今、思えば学校っていうのは、凄い場所だった。

 いやでも、週5で行く場所で、

 いやでも週5で好きな人に会える場所だった。」

 

そうだね。

いっぱい負もあるけど、そこでささやかな楽しみがあれば、

それだけでもう、通う意味を見出せる。

 

  

 

 

名前を呼びたくなる後ろ姿、と紬が言う。

 

同じ教室にいても、名前を呼ぶことは限られている。

そうだった。

名前を呼ぶ、ということは

振り向いて自分を見つめてもらえる、ということ。

 

学校、という時間は永遠じゃない。

いつでも会える、そんな時間は

実は終わりに向かっていたことに、気づかされる切なさ。

 

紬は、そんな終わり、を永遠につなげようと走り出す。

こんな行動力が、本当にすごくいい。

 

「何、聞いてんの?」

もしかして、これは、本音を隠す合図?

 

好き、と言ったことに、もう一度言っとく?

って言われて笑う佐倉 

本当に温かくて、沁みてくる。

 

 

手をつないで、二人で歩きだす。

幸せでしかないはずなのに、

今のことを知っているから、この切なさに涙が溢れそうになる。

 

 

 

交換しただけになってしまった、って紬が言う、

お揃いの色違いのイヤフォン。

だけど、そのイヤフォンが、

彼との共有の音楽を告げることなく、

そして、一緒に笑い合うこともなくなって、

 

 

文字だけで終わることも、また、切な過ぎる・・・。

 

そんな別れをしてしまったのに、

また出逢ったのはどうして?

ってやっぱり思ってしまう。

 

でも、追いかけてしまう紬。

 

あの、二人のスタートを切った日も、

こうして紬は追いかけて、

そこには佐倉の笑顔が待っていたのに、

 

今は、こんなに苦しい顔が待っているなんて…。

 

 

「何言ってるかわからないだろ? 

 俺たち、もう話せないんだよ。」

「好きだったから。だから会いたくなかった。

 嫌われたかった。忘れてほしかった」

そう言って、背を向ける佐倉には、

紬の心配した言葉は届いていない。

さらに引き留める紬に、虹が映り込む。

 

あの日、映り込んだ虹よりも、

もっとくっきり映っているこの虹は、

新たな関係を作り出す架け橋?

そう思ったんだけど・・・。

 

だけど、佐倉の拒絶は続く。

「うるさい。お前、うるさいんだよ」

 

 

雪を見上げていた無邪気なあのやり取りと同じ言葉。

だけど、この4文字は

決定的な拒絶の言葉。

 

後ろ姿を見つめる紬。あの時、

「名前を呼びたくなる後ろ姿だった。」

「卒業まで、あと何回呼べるだろう。」

「このまま、友達のままだったら、あと何回だろう。」

そう気が付いて、立ち上がった紬。

そこから始まった物語、だったはずなのに、

今はもう、その名前を呼ぶことは許されない。

 

ここに入ってくる、BGM.

 

凍りついた心には太陽を 

そして僕が君にとってそのポジションを 

そんなだいぶ傲慢な思い込みを拗らせてたんだよ

ごめんね(ごめんね) 笑って(笑って) やって

 

 

まるで、紬の無邪気さをあざ笑うかのように…。

 

回想シーン。

後ろ姿の佐倉に元気いっぱいに声をかける紬。

佐倉はいつだって、笑顔で答えてくれた。

もう、この笑顔が向けられることはない。

それを突き付けられたこの瞬間。 

 

 

 

 

2人とも、別々の時間を過ごして、大切な人もできて・・・。

これから、どんな物語を紡いでいくんだろう。