勢いよく歩いてたのに、

急に立ち止まり、

言ってしまった…

とでもいうかのような大きな、呼吸。

 

後悔…してる…?

 

と、そのあとに、まだ吐き出しきれなかった吐息が

 

「あ・・」という声とともに流れていく…。

 

そのあと、またもう一回、

大きく深呼吸をして歩き出す黒沢。

 

足元がおぼつかないような歩き方。

 

何度も何度も深呼吸したり、息を吐き出したり…。

想いを吐き出したものの、

それ以上のものを抱えてしまった形になって

落ち着かない様子が伝わってきて

本当に・・・・切ない。

 

 

最初は、こういう、秘めた恋、というか、

両想いになるの?ならないの?どうなるの、この後?

というじれったさ、というか、

そういうのを表すのに

吐息、とかため息、とかはもってこい、というと

とても失礼だけど、

黒沢も安達も何度も何度も息を呑んだり、

息を詰めて相手を見つめたり、

言葉と言葉の合間に大きく息を吸ったり、吐いたり…。

 

発する前の、言葉。

発した後の、言葉。

 

この声にならない声。

がどれだけ、雄弁かをありありと見せつけてくれる。

 

やっぱり出してはいけない、って思ってる気持ちって

言葉にできない分、呼吸に出ちゃうと思ってしまうから

町田くんも赤楚くんも、そのあたり

とても表現力があるというか

リアルさがすごいなあって

めっちゃ、想いを伝えてくれる…って感動してた。

演じる方の表現力に、

とても心が震えてた。

 

でも

インタビューで赤楚くんが

「声を出したか出してないくらいの吐息のような」

と言うと、町田くんが

「そうそう、全部録音してくださった。」

と言ってる。

実は監督さんをはじめ、スタッフさんも

そこにこだわっておられて

これを丁寧に拾うことが、

二人の気持ちをどれだけ雄弁に伝えるかと、

そのことにこだわる視点というか。

そのことの重みをわかっておられることに

改めて感動してしまいます。

 

 

このシーン、なんかもう、黒沢が立ち去って

大きく息を吐くこの瞬間まで、

なんだか、自分もどう呼吸してたか

わかんないくらいだった(◎_◎;)

 

そのあと、力なく歩く黒沢。

このまま、この暗い夜に消えてしまいそうな、

背中が切ない…。

 

 

「昔から気づいていた。自分は見た目で得してるんだって」

 

 

いや、これ、リアルすぎるセリフ…(笑)

見てる人たち、盛大に頷いたと思う。

でも、それもギフトだよって

居直っちゃえば、って思うけど

それはやっぱり、他人事でしかない。

 

しかも、この写し方、本当にうまい←いや、誰に向かって

言ってるんでしょう?(こらこら)(;^ω^)

いつも自分の顔と対峙してきたのがわかる瞬間。

顔、しか見てもらえてない、って思ってる哀しさが

わかる瞬間・・・。

 

告白してくる女の子たちに

どして?

って聞いちゃう黒沢。

優しい声音だけど…聞かれた方には、刺さる言葉。

 

相手の反応を見て、

ふっと笑うけど 目は笑ってない。

見えない壁が広がっている。

 

受付の女の子たちの反応を聞いて

けど、外見しか見られてないようでいやで 

でも、口にすれば嫌味になるとわかってて・・・

 

ここでも、やっぱりな、とでもいうかのような、吐息をつく。

気にしてないふりをした。

 

そんな黒沢のがんばり。

御社のレザーバックも買わせていただきました!

このプレゼンにあるのがそうなのかな?

 

でも。

これが、

軽く踏みにじられることになっていく。

 

この後の展開は…。

 

本当に、本当に、正直、気持ち悪い。

そういう意味では、演者さんも脚本もすごくよくできてる。

黒沢の苦悩をこんなにはっきり、えげつないほどに

描いてくれてるからこそ、

そのあとの彼の人生観や、

安達への想いが際立ってくるから。

 

でも、これ、男女問わずたくさん、当たり前のようにあるし

もっとひどい事例もたくさんある。

それを、おかしい、って声をあげた人が逆に叩かれたり。

 

少しずつ変わってはきてるけど・・・。

こんな、黒沢が感じたような思いをする人がいない世界。

早くきてほしい、って切に思う。

 

 

この頃は、安達はまだ同期の一人に。

 

って言ってるけど

さえない同期の一人にしか過ぎなかった。

 

ってわざわざ言い直してるっていう…。あせる

 

 

そのさえない同期、の安達の言葉に

何やってんだよ、空気読めよ。

とでも言いたげな黒沢の冷たい視線。

 

美しい人の冷淡な表情って

なんて、刺さるんだろう…(´;ω;`)

 

連れてかれた上司に陰口をいろいろ言われて、

ああ、やっぱり 

って思ってるはずなのに、

入口で待ってようか

 

何でもない、気になんかしてないってふりができる黒沢。

でも、本当は深く傷ついてる。

 

何、ショック受けてんだ。

役得の自分を、周りが求める自分を

受け入れろよ

 

って。

 

顔だけが取り柄とか、そう言われるのがいやで

仕事も人間関係も完ぺきにこなそうとしてきた。

のに・・・・。

 

なんだか、「こなす」って

悲しい言葉。

まるで「業務」のように、

義務感で行ってるかのよう。

 

でも、それもこんなにあっけなく

ダメになってしまう。

 

そうやって踏みにじられたまま、

このまま、一人でふらつくのかな、とか

もしかしてここで一人で倒れてしまうのかな、とか

 

もう、本当に気が気じゃなかった。

 

で、この手!!!

え?だれ??まじ・・・??ポーン

 

安達だった!!

 

だ…大丈夫か…?

 

黒沢が悪口言われてたのを聞いてるし、

自分の代わりに結構飲んでたのも知ってるから、

心配してついてきてたのかな?

(そういう描写があると、余計に安達の評価が上がるというか…)←勝手に期待あせる

 

しばらく横になってろ、

っていう安達。

こんなに弱ってたら、

やっぱり、甘えちゃうよね・・・・。

何やってんだろ、俺 

顔要員で連れてこられたのに松浦社長のこと、怒らせて。

結局役立たずでさ 

 

って言っちゃった自分に

何こいつに弱音はいてんだろ 

ほら、案の定、困ってんじゃん 

 

って言っちゃうあたりも、

なんだか人を信用してない感じがあって

悲しい・・。

まあ、完璧を求める人って

自分にも他人にも厳しいから

仕方ないのかも。

 

でも、ここで安達が思わぬ本領を発揮する。

そんなことない 

松浦社長のこと、凄くリサーチして 

製品のことも全部覚えてたし

俺の代わりに酒、飲んでくれて 

十分すごいよ 黒沢

 

って。

さえない同期、だったはずなのに、

こんなに自分のことをきちんと見てくれてるって。

 

これは、

弱ってる心に沁みるよね…。

 

そのうえ、

いや、黒沢って、いつも完璧ってイメージだからさ

弱ってるところ見るの、新鮮で

・・・・なんかいいな 

 

って柔らかい笑顔で言われちゃうと

・・・

もう、心を預けたくなるよね・・。

 

なんだよ、それ 

って突っぱねちゃったけど。

実は…。

 

心臓がうるさくて 涙が出そうで・・・・

 

そんな突っぱねちゃった黒沢を意にも介さず

ほら、ちょっと寝ろよ 

 

なんて言われて、

 

とんとんされちゃうって‥‥。

 

今度は、安達が

お母さん…???←

 

 

安達って、家族にすごく大事にされたのかな・・・。

こんな風に、とんとん・・・ってするって、

なかなか発想にないよね…。

 

でも、弱ってる心にはかなり効いた。

突っぱねちゃったのに、

こんな風にそれを気にもかけず、

むしろ、自分をいたわってもらっちゃったら

 

全て、受け入れてもらえるように感じるよね。

 

初めて、心に触れられた気がした・・・・。


まさか、さえない同期の一人、でしかなかった人間が、

ここまで自分の頑張りを見てくれてるとは…

という驚きと同時に、

見てもらえてるっていう、特別感。

 

さらに、

ほら、ちょっと寝ろ、だなんて、

なんだか、頼りにもなる。

 

こんな弱ってる自分を見守ってくれてるようで

「仕事も人間関係も完ぺきにこなそうとしてきた」

自分、

何もかもうまく処理しようと、武装してきた自分の

心の壁を

やんわりとほぐす魔法の言葉。

 

じんわりと滲む涙は

ぱんぱんに張り詰めた気持ちを、

武装していた心の壁を

ゆっくりと解放してくれていく。

 

二人だけの、

静かな時間。

 

黒沢にとって、

「こなす」だけの武装しなくてはいけない世界が

「見つめていたい」優しい世界に

かわった瞬間・・・・。