☆中野あや・動物行動クリニックなかの☆問題行動は獣医行動診療科認定医にご相談ください☆犬猫子どもとの暮らし応援@兵庫/神戸/西日本

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犬猫の心療内科:動物行動学を学び問題行動の診療をおこなう獣医行動診療科認定医の獣医師のブログです☆主要テーマ:ペットの問題行動・犬猫との暮らしに役立つ話・犬猫のいる育児・発達障害を考える☆犬猫と子供のいる家庭・ママ応援☆

☆動物行動クリニックなかの☆
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獣医行動診療科認定医です!(https://vbm.jp/syokai/)


神戸市を中心に犬猫ペットの問題行動の診療をおこなっています。高齢犬の夜鳴きや認知症の予防もお任せください!しつけや生活内のストレス緩和のご提案も得意です。講演もご好評いただいてます。
神戸近郊以外も交通費相談でお伺い、オンライン相談も可能です。


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🍓今日のお仕事🍓
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北海道帯広にお住まいの獣医行動診療科認定医、室井尚子先生(

 

目が見えないネコと子育て獣医の作者の生きる力溢れる暮らしに、エモい古典文学が織り込まれてて、すっごいいいの。
ちゃんと本の紹介を書きたかったのだけど、できていなくて、猫と本と漫画が好きな人は、とにかく!読んでみて!!!

 

音譜関連記事音譜

問題行動の診療以外の仕事の話はコチラ↓↓

 

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我が家の合格&卒業と入学&進級祝いは、車中泊+弾丸日帰りポケパークツアーでした😻
自分はポケモン全然詳しくないのですが、ポケモンと育った息子くん的には、「再現度エグい」そうで大興奮で楽しい1日になりました✨️
親的には片道7時間のドライブはエグい!で、しかも激寒の日で体調大変なことになりましたが(笑)。

家族旅行自体がいつぶりか…というほど旅行しない(できない…)我が家なので、子どもたちの成長ぶり的にも4人で旅行は最後かもなぁと思ったり。

子供のことを綴ることは普段あんまりしないし、読んでくださってる飼主さんにとっては「関係ない話」かもしれないんですが、自分の行動診療の視野の幅や、「一人一人の飼主さんにできること」を探すときの想像力&創造力は、子育てを通して培ったもので、この体験をしなければ獣医師としての今の私もいないのです。
だから、子供たちの存在も成長も私を作る一部🐱
子供の時間が終わりつつある寂しさと誇らしさを感じる春🌸
頑張れ〜!!!

人と接する時に、相手の向こう側にも家族や大切な存在がいるかも…って想像してみる心の余裕をもって進んでいきたいな、と自分自身、思うのでした🍀
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お待たせしてます。

【4月のお知らせ🌷】

photo: ポケパーク行ったぞ〜💕
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寒暖差が激しかったり、爆弾低気圧で頭痛に悩まされたりしつつ、ぼちぼち元気に頑張っております!
皆さんもまずは体調第1でお過ごしくださいね🐱
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4月中旬までに診療以外の仕事が複数重なっており、お休み多めにいただいておりますm(_ _)m
4月のご予約、HP上は埋まっておりますが、オンラインひご予約いただけますので、お問合せフォームからご連絡ください。
最短日程での初回オンラインと、往診可能日程で再診という2回分のご予約をまとめてお取りいただく方法もオススメしております。

ご予約の際は
・往診のご予約はクリニックカレンダーの「◯印」からご予約希望のお日にちを選んでいただくようにお願いいたします。
・問い合わせフォームにご住所などの情報不足がないようにお願いいたします。
これらが満たされないと、メールお返事に時間がかかるため、お日にちをお待たせする確率が上がってしまいます。
また、お送りしたメールにお返事がないケースが多々あるのですが、予約キャンセルとさせていただく場合があります。ご了承ください。
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ご予約アナウンスメント
➡️行動診療はクリニックのホームページからお申込みください🌷(プロフィールからリンクしています)
➡️鍼灸(ご自宅に往診)もホームページからご連絡ください …病院で実施できる形を目指す!が時間がない。
➡️moshオンライン相談(1時間、定額)→多忙にてお休み中です、ごめんね🙀
 https://mosh.jp/Nyakano/home
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➡️セミナーや、飼主さん向け講習会のご依頼相談など、いつでもどうぞ!オンライン可。
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※インスタの更新がHPにうまく反映されないので、お知らせは引き続きインスタをご確認ください🍀
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①ご予約状況
4月…空きなし、オンラインは応相談
5月GW明け以降はまだまだご予約可能です!
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②今後の提携セミナー、講演、予定など
🟢毎月第3月曜 午後:神戸市の問題行動 電話相談担当 @こうべ動物共生センター
※詳細は施設のホームページ等にてご確認ください🍀
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③インスタ(日常アカウント)&アメブロ
ぼちぼち🐱
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④学会の仕事、後進育成
ふぅぅ。頑張ります👊
西日本の行動診療科を底上げしていくために勉強会をやってます✨️
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以下は、毎回載せてる内容です↓↓
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※ご予約について⑴
お急ぎでご希望の場合には、診察時間以外でもご提案をさせていただいておりますので(時間外の往診、土曜午前や夜のオンライン相談など∶時間外のお費用やオンライン費がかかります)、ホームページのフォームからご相談ください。

※ご予約について⑵
ホームページ予約カレンダーの「◯」印がご予約可能な日程になります。「△」は近郊の再診とオンラインがご予約頂けます。
ブラウザによって◯△印が表示されないことがあるかもしれません、クリック(タップ)していただくと◯✕が表示されますm(_ _)m
休診日が表示されるように設定変更してみました。
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※ご予約について⑶
オンラインよもやま相談所(60分定額)はMOSHのページからご予約ください🐾(休止中)
https://mosh.jp/Nyakano/home
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※お問い合わせについて※
インスタやフェイスブックのDMは対応しておりませんので、お手数ですが、ホームページの問い合わせフォームからご連絡ください🍀
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※インスタのフォローバックについて※
(ただいま対応が間に合っておりません😿)
以下の場合にはフォローバックをしていませんので、フォローバックほしいな〜という方がもしいらしたらコメントください🐥
・アカウントの投稿内容が動物メインではない
・投稿が非公開
・うっかり忘れてることもある
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動物と暮らす
犬と猫どっちも飼ってると毎日たのしい
猫のいる暮らし
犬のいる暮らし

大切な犬や猫たちが空に昇ったあとの物語。

虹の橋の手前から愛をこめて...

 

約10年前?に書いた物語です。

トップ記事に置いている犬のハッピーちゃんとの別れ以降、動物たちのバトンタッチの物語を書いていました足あと

長ーーいので、お時間がタップリあるときにでも読んでいただけたら嬉しいですてへぺろ

 

※センターの描写が本当に10年の時代を感じる感じで、今は多くの命が次につなげてもらえるセンターが増えていることを追記いたしますしっぽフリフリ

 

 

 

Pass the baton(バトン)

―大切な動物たちの空の上の物語―
 
 

プロローグ

 

「ごめんね、ほんまにごめんねぇ」
押し殺したような泣き声を聞きながら、ボクはフワフワと空に浮かんでいた。

見上げると大きな雲が一つ、二つ、三つ…。
振り返って下を見ると、とってもとっても大好きなお父さんとお母さんのうつむく姿が窓の中に見えた。

「ごめんね…、ハッピー」
もう何度目だろう、お母さんの声がまた聞こえた。

お母さん、ボクのために泣かないで。
ボクは本当に幸せで、とてもすてきな時間をお父さんとお母さんといっしょにすごせたのだから。
ボクはお空のイヌになるけれど、お空の神様にちょっと挨拶したら、また遊びに来るよ。
お母さん、心配になるから泣かないで。
ボクはもう痛くもつらくもない。


動物霊園から立ち上る白いけむりの中を、黄金色のイヌが空へとのぼっていく。
だいじょうぶだよ、待っていてね、お父さん、お母さん。

虹の橋の犬とバトン

 

1.青空の原っぱ

 

真っ白な雲の中を通るうちに、いつの間にかボクはぼんやりとしていた。
ハッとして四本の足を踏みしめて目を大きく開くと、ボクはキラキラと光がはねる草原の中にいた。

そこは見える限りどこまでも原っぱで、大きな木があちらこちらに立ち、きれいな色の小鳥も飛んでいた。
木の枝の上をリスが走り、ボクも思わずリスを追って木の下へ走った。でも木の下について見上げてみても、さっきのリスがどこに行ったのか、もうわからなかった。
残念。
ボクは、そのまましばらく大きな木を見上げていた。


「きみは新入りかな?」
かけられた声にふり向くと、そこにはボクよりずっと大きくて、耳のたれたミルク色のイヌが立っていた。
「こんにちは。ボクは、新入り…、なのかな?」
よくわからずにボクがそう答えると、そのイヌは声を出さずに笑った。
「新しくてきれいなバトンを持っているから、きみは新入りだろうなぁ」
「バトン?バトンてなぁに?」
「ほら、きみの首輪についている、光のリボンがバトンだよ」
「首輪に何かついているの?自分の首輪ってよく見えないんだよなぁ」
「そのしげみの向こうに小さな池があるから行っておいで。水面に映して見てみるといい」

ボクは言われた通りに、そのイヌが鼻で指したしげみへと入っていった。
そこにはボクが想像したよりもずっと大きくてきれいな池があり、少し離れたところには水鳥も浮かんでいた。
ボクは池をのぞきこんだ。
「わぁ!」
お母さんが、ボクには赤が似合うから、と買ってくれた首輪がピカピカになって首についていた。
そして、そこに光で編んだような美しいリボンが結ばれている。
「きれい……」
犬のハッピーと虹の橋の物語
ボクは少しの間見とれていて、そして、あ、おじさんがいなくなっちゃったらリボンのこと聞けないぞ、と思って急いで木の下へともどった。

おじさんイヌはさっきと同じところに立って、ボクの方を見ていた。
「このきれいなリボンは何ですか?」
「バトンだよ」
「バトンじゃなくて、リボンです」
「そう、そのリボンのことをここではバトンと呼ぶんだよ」
リボンがバトン?
「バトンてどういう意味なんですか?」
「次につなげる、ということのようだよ。リボンを渡すと次につながるんだ」
「次につながる?なんだかよくわからないよ」
「そうだね。まぁ、しばらくは自由に跳びまわって、いろんな動物たちに話を聞いてみるといい」
おじさんはにっこりと笑った。

ボクは、もうひとつ聞いておかなきゃいけないことを思い出した。
「そうだ、おじさん、ここはどこなの?空にかけ上がったところまでは覚えているんだけど」
「ここはね、『空の国』だよ。いや、呼び方は何でもいいんだ、生きている人間たちは『虹の橋のたもと』と呼んだりもするらしい。でも、私たちは『空の国』と呼んでいる」
「ふーん。つまりそれって『あの世』ってこと?」
お母さんがいつか話していたのを聞いたことがある。あの世はとってもきれいなところだって。
けれど、おじさんは首を横にふった。
「ここはあの世ではないみたいだ。命を終えてから、あの世に行くまでの時間をすごす場所さ。だから地上の飼い主を見に行くこともできるし、彼らがいつか死んでここにやってくるのを待つこともできる。体はもうないから、目を閉じて行きたいところを願えば、目を開けたらそこに着く。雲のてっぺんでも、フカフカの寝床でも、飼い主の見える場所でも、どこでもだ」


そうか、たしかに目の前のおじさんも、さっき水に映して見た自分の姿も、イヌの形ではあるけれど、どこかすき通るようにたよりない。
「そっか。ボク、死んじゃったんだもんね。色々教えてくれてありがとう。ボク、少し探検してみるよ」
ボクは霞のようで、だけどフワフワのシッポをふった。
「行っておいで。あの大きな雲の上にも行ってみるといい。バトンのことがもう少しわかるだろうよ。ああ、行く前ににキミの名前を聞いてもいいかい?」
「ボクはハッピー、柴犬だよ!ありがとう、おじさん。雲の上かぁ。オッケー、行ってきます!」

そう言って、ボクは目をつむった。
空の国、草原の犬と猫

 

2.雲の上


目を開けると、願った通りそこはモコモコの雲の上だった。
「すごぉい!」
ボクは少しの間、ぽわぽわとはずむ感じを楽しみながら歩いた。

遠くの方からだれかの声が聞こえた。
「行ってみよう!」

盛り上がった雲の向こうに、その声の持ち主が見えた。
「だからぁ、このバトンはお前にはやれない、って言っているだろぉ」
少し低くて太い声は、どうやらこげ茶色にトラのような縞模様の、大きな大きなネコだ。
「いいじゃないかぁ、くれたって…。お願いだよぉ、ボクはどうしてもあの家に行きたいんだ」
かんだかい子供のような声の主は…、あれれ、ホワホワの雲のボールかな。
雲のボールに耳としっぽもついているようだけど…。
 

大きな大きなトラネコが言う。
「行きたいなら月の女神様にたのんだらいいだろ?雲の上から見て、行きたい家を決めたら女神様に言えばそこのうちの子になれる、って聞いたぜ?」
「そうだけど、あのうちは、行きたい子がいっぱいいすぎてさ、もうずぅっと順番待ちなんだよ。いつまでたっても生まれられない」
「みんなが順番を待っているなら、お前も待てばいいだろう?」
「いやだ…。だれでも行きたいって言えば行けるわけじゃない、って月の精も言ってたもん。人気のあるおうちは、みぃんなは無理なんだって…」
茶トラ猫と雲のボール
雲ボールが涙声になり、大きな大きなトラネコも次の言葉につまっていた。
 

よし今だ。
「あのぉ?」
「うわ!何だ、だれだ?急に」
「あのぉ…、バトンが欲しいとかあげないとかって話していたけど、バトンてなんなの?」
ボクは大きな大きなトラネコと雲ボールのすぐ横まで進み出た。
「それと、この雲みたいな動物はなぁに?」

大きな大きなトラネコは、ボクをじろじろとながめた。
「なんだ?お前。空の国の新入りかい?バトンも知らないのかよ」
「うん、ボクの首輪についてるってことのほかは、まだ全然わからない」
「はぁ…。バトンはな、渡したいヤツが見つかったら、渡したらいいんだ。そうしたら、そいつが次の家族になる」
「次の家族?だれの?」
「そんなの、おれたちがさよならした飼い主に決まってんだろ」
「ええっ、そうなの?」
「そうだぜ」
 

ボクは、言われたことを少し時間をかけて飲みこんだ。
「じゃあ、バトンをだれかにあげるとぉ、その子がボクのうちの次の子になる、ってこと?」
「まぁ、だいたいな」
「すごい!それでそれで、どうしてネコさんは雲ボール君にバトンをあげないの?っていうか、じゃあ雲ボールくんはいったい何者?」
ボクは雲ボールを見た。
 

「雲ボールとは失礼なのだ。ボクは死んだ者たちとはちがうんだぞ!これから生まれいずる神聖なる『命』様なんだからな」
雲ボールがキイキイ声を上げて飛び跳ねた。
「生まれいずる命?」
ボクにはいまいちよくわからない。
「おまえは、本当にまだ何も知らないんだなぁ。この雲のようなやつらは、これから地上に生まれる生き物の『命』、魂みたいなもんだ。雲の上から地上の行きたい家を決めて、そうして月の女神様と月の精たちに送り出してもらうんだ。そこらじゅうにいるだろ?」

言われて周りをよく見ると、雲だと思っていた部分のあちこちが、動いたりささやきあったりしている。
うわぁ、みんな新しい『命』たちなんだ!
 

「じゃあ、ボクのバトンも『命』君にあげればいいの?」
「『命』の中の気に入ったやつにやってもいい。ここにも、世界中の雲の上にも色々な『命』がいる。こいつみたいに『想い』が強い『命』も、弱い『命』も、何も考えてない『命』もいる」
「ふんふん」
「だが、バトンはべつに新しい『命』にやらなくてもいい。もう地上に生まれている幼い動物たちや、地上で暮らしながら困っているヤツにやってもいいんだ」

「うん」

「オレは、オレの母ちゃんがいつも困っている動物を助けたい、ツラい目にあってる子を救いたいって言っていたからな、地上の誰かにバトンを渡してやろうと思って見晴らしのいいここから地上のネコたちを見ていたんだ」

大きな大きなトラネコは鼻からふうっと息をふいた。そのシッポに赤く煌めくリボンが揺れている。
 

「そんなわけだ。オレはお前にはバトンをやれないよ、小さな『命』。ごめんな。母ちゃんのためなんだ。オレももともと野良ネコだったのに、大事にしてもらったんだ。恩がある」
「だめだよ…」
ずっと話を聞いていた小さな『命』から息のような小さな言葉がもれた。
「それじゃだめなんだ。お願い…。バトンがあれば順番を待たなくても、あのおうちに行けるでしょ?」
小さな『命』が大きな大きなトラネコをじっと見つめて、一生懸命に言葉を続ける。
「ボクは、前に生きたときに、あのおうちのお母ちゃんをずっと見ていたんだ。木陰に隠れた小さなボクに、お母ちゃんは毎日『おいで』って言ってくれて…、毎日困った笑顔で少しのご飯を置いていってくれて…。それで、近づいてみたくて、でもできなくて。そんなままボクは車にひかれて死んでしまった。だからね、それでもどうしてもあのおうちに行きたかったから、ボクはだれも待たずに『虹の橋』を渡ったんだ。少しでも早くまた生まれてくるために、たった一人で渡ったんだ」
声はだんだん大きくなり、それは一つの強い決意の声になっていた。

静かなときが流れた。ネコはただじっと小さな『命』を見ていた。
そしてまた、ふうっと一つ息をついた。
「困ったな、おまえ、母ちゃんの知り合いかよ。うーん、しょうがない。もう少しだけ話を聞いてやる。とりあえずいっしょに月の精のところに行くかぁ」
フワフワの『命』は大きな大きなトラネコに抱きついた。
「おい、まだバトンをやるとは言ってないぞ」
そう言いながらも、大きな大きなトラネコもゴロゴロとのどを鳴らしていた。
 

「なんだ、優しいんだね」
ボクはシッポを振った。
「ばか言うな。まだバトンをやるとは言ってない、って言っているだろ。お前も自分の母ちゃんや家族のために、バトンをだれにやるのかちゃんと考えるんだな。せっかくバトンを持っているんだからさ」
大きな大きなトラネコはそう言ってニヤッと笑うと、
「チビ、行くぞ。」
そう言って、小さな『命』を前足でちょんとついて歩き出した。
天に向かって伸びたリボンのついた長いシマシマのシッポをゆるやかにくねらせて。
「ありがとう!」
ボクはパタパタとシッポを振りながら、ふたりを見送った。

よし、ボクもバトンを渡す相手を探そう!
まずは、お母さんがどんな子が好きなのかを聞いてこなくちゃ。

ボクはまた、しっかりと目を閉じた。

柴犬ハッピー、雲の上でバトン探す

 

 

3.お母さんのとなり

 

本当にすごいなぁ。
目を開ければ目の前は、ボクが毎日遊んだボクの家の庭だった。
庭をかけ回っていた頃のこと思い出しながら、ボクは何度か家の回りの空を走ってみた。

「ごめんね、ハッピー。本当にごめんね」
あ、お母さんの声。
家の窓を通して、背中を向けて座っているお母さんの姿が見えた。
「お母さん!」
閉まっている窓に鼻をつけようとすると、鼻が窓をつきぬけた。
わあ!通れるんだ。

ボクは窓を通りぬけ、お母さんにかけよった。
「お母さん、だいじょうぶだよ。ボク、いるよ。謝らないで」
お母さんはお仏壇に向かって手を合わせている。
「本当にごめんねえ…」
謝らなくてもいいのに、お母さん。
 

ボクは思いっきり、
「ワンッ!」
と吠えてみた。お母さんが動きを止めて目を見開いた。
わ、聞こえたかな?
「あらまあ、仏さまのお水に泡が立ったわ。ハッピーちゃん、近くで聞いているんかもねぇ」
なんだかよくわからないけど、聞こえたのかなぁ。
ボクはワンワンッとさっきよりももっと大きな声で続けて吠えてみた。
でも、もう何も起きなかった。

吠えるのをやめて、しばらくお母さんの近くにいた。
どんな子にバトンあげてほしいの、って、どうやってお母さんに聞いたらいいんだろう。

お母さんを鼻でつついてみた。
お母さんの白い腕を前足でカシカシとかいてみた。
お母さんの頭の上にも乗ってみた。
でもお母さんにボクの気持ちは届かない。
ボクはお母さんのとなりにただ寄りそっているしかできなかった。

そうやって、日が暮れるまでお母さんのそばですごした。
お母さんは洗たく物をたたんでも、夜ご飯を作っても、ソファにこしかけて何か考えごとをしていても、ときどき急に涙をうかべて鼻をすすった。
寝る前になると、布団の上にボクの写真がついた水色のきれいな四角いふくろを持ってきて、抱きしめながら泣いていた。

ボクはどうすることもできなくて、そのままずっとお母さんのそばにいて、そしてお母さんが眠ったら、お母さんの頭の横に丸くなってボクも眠った。

翌朝、ボクはお母さんの興奮した声で目を覚ました。
「ほんまなんよ、ハッピーが夢に出てきてな、じいっとこっちを見つめてるんよ。何か言いたそうな顔しててなぁ…」
仕事に出かける準備をしているお父さんの後ろをついて歩きながら、お母さんが話しかけていた。
 

「そりゃあ夢ぐらい見るやろ」
「何か言いたいことがあるんやないかねぇ」
そうだよ、お母さん。
「まだ八才だったのに、もっと生きられたのに、私がもっと早く気づいてあげとったら…」
お母さんはもう涙声だ。
ちがうよ、お母さんは何にも悪くないんだよ。

次の日も、その次の日も、お母さんに寄りそってすごした。
お母さんと犬のハッピー
お母さんが毎日、朝と夕方に同じ場所で手を合わせるから、ボクはそのたびにワンッと鳴いた。
「不思議やわぁ、やっぱりいつもお水に泡が立つ。ほんまにハッピーがおるんかもしれんねぇ」
お母さんが少し笑った。お母さんが笑ってくれると嬉しい。

そのとき突然キッチンで電話が鳴りだし、はいはいと言いながら、お母さんはとなりの部屋に行ってしまった。
ボクはもどかしくてうつむいていた。

そんなボクの耳が、電話で話すお母さんの声をつかまえた。
「うんうん、そりゃあ、イヌのいない生活なんて考えられへんけどね。もうハッピーに申し訳なくて、次の子なんてすぐには考えられへんよぉ」
「子犬ねぇ。そりゃあ子イヌはかわいいけど。もしイヌを飼うんなら、次はセンターからイヌを引き取りたいって思ってるんやわ」
「そやねぇ。柴犬より大きくってもいいけど、ハッピーみたいに耳が立ってりりしいイヌがええねぇ」
「いやいやほんまにぃ。四十九日もまだまだやのに。心が落ちついてからじゃないと考えられへんわぁ」

せんたーの、イヌ?
センターってなんだろう?
そのままお母さんの話し声をしばらく聞いていたけど、あとはお母さんがなにやらうんうん、そうやねぇと言うだけで、それ以上のことは何もわからなかった。

よし。だれかに聞きにいこう。
ボクは目を閉じて、まぶたの中に真っ青な空を思い描いた。

 

 

4.青空の原っぱ

 

目を開けると、青空の下の原っぱにいた。
おじさんイヌと出会った場所とは少しちがうみたいだけれど。

少しはなれたところを動いていく茶色いものが見えた。
声をかけてみよう。
僕は小走りに茶色いものに近づいていった。

「あのぉ…。ねえ、すいません!」
茶色いものが立ち止まった。近づいてみると、それはボクより一回り大きいけれど、とても細い細いイヌだった。

「あのぉ、『センター』って何か知りませんか?ボク、センターのイヌに会いたいんですけど…」
細い細いイヌはだまったまま、ボクを見ていた。
「あの、センターに行きたいんです。どこなのか知りませんか?」
聞こえていないのかな、と思ってもう一度たずねてみた。細い細いイヌはどこかさみしそうな顔をして、
「センターなんて行くもんじゃない」
とだけ言うと、どこかへ向かってまた、ぽつりぽつりと歩き出した。

「あの、センターってなんですか?あなたはどこに行くんですか?あなたはバトンをもうだれかに渡したんですか?」
細い細いイヌの背に向かってそう問いかけたけれど、彼はもう立ち止まることも、ふり返ることもなかった。

その後ろ姿がまだ見えるうちに、ボクの前を白黒のネコが通りすぎ、ボクは同じように声をかけた。
けれどネコは立ち止まりもせず、ボクを見ることもなく、細い細いイヌと同じ方へ向かって歩いて行った。
そのあとも何匹かの動物が、特にたくさんの子ネコたちがボクの前を通ったけれど、みんなボクの声が聞こえないみたいだった。
そして、もうだれかに渡した後なのか、彼らはだれもバトンのリボンをつけていなかった。
空の国の動物たち
「あらあら、こんなところにつっ立って、どうしたの?迷子かしら」

声にハッとしてふり向くと、そこにはココア色でくるくるの毛をした、明るい瞳のイヌが立っていた。
「あ、きみは…、だれ?」
「あたし?あたしはプードルのチェカ。虹の橋へ行くところよ。あなたもそうじゃないの?」
「『虹の橋』…って?」
だれかもそんな話をしていたような気がする。

「あら、虹の橋を知らないの?生まれ変わるための橋よ。橋をわたってあの世で神様にお願いをしなきゃあ、また生まれてくることができないでしょ」
「みんな、あっちへ向かっている動物たちは虹の橋に行くの?」
「そうでしょうね。私ももうバトンを次の子にあげちゃったし。その子のおかげで飼い主のユキくんも泣かない元気な子に育ったから、そろそろ虹の橋を渡ろうと思うの。ユキくんの人生がまだまだ残っているうちに、もう一度ユキくんに会えるようにね」
「ふぅん。虹の橋は生まれ変わるための橋だって言ったけど、虹の橋を渡っても、今みたいにお母さんたちに会いに行ったり、おうちの様子をながめたりできるの?」

プードルのチェカは、言葉を選ぶように少し間をおいてから口を開いた。
「虹の橋の向こうがどんななのかはわからないの。ただ、そこはたぶん、人間たちが『あの世』と呼んでいた場所で、そこに行ったらもう飼主のそばに寄りそうことはできない…。でも、そこに行けばまた生まれてくることができて、『生まれいずる命』になれる…。そうしたら、また大好きな人に出会うことができる、って。そう言われているわ」

「ここにずうっといたり、お母さんたちのそばをかけ回ったりしていてはいけないの?」
「ううん、飼い主が命を終えて虹の橋を渡るときまで、ずっと空の国で待っている子たちもいっぱいいるわよ。ここにいてもいいの。あたしだって、あたしが命を終えた時には3才だったユキくんが15才になるまで、ずっとこの空の国から見守っていたのよ。でもね、ユキくんはきっとまだまだずっと生きていくから、あたしはここで待つよりも、もう一度ユキくんのそばに生まれて、ユキくんになでてもらいたいと思ったの」
プードルのチェカ、虹の橋へ

「そっかぁ。ユキくんにもう一度なでてもらう、ってすてきだね。いいなぁ、チェカはとても幸せそうな顔をしているよ。さっきここを通った動物たちとは大ちがいだ…。彼らはボクが呼んでも返事もしてくれなかったんだよ」
プードルのチェカは、また少し考えるような顔をした。

「あなたが見た動物たちは、同時にみんなここを通っていったの?」
「うん。イヌが何匹かと、けっこうたくさんの子ネコが通ったよ」
「そう…。それなら、それはどこかのセンターの子たちかも…」
センター?
 

そうだ、センターのことをすっかり忘れていた!
「センターだよ、センター!チェカは『センターのイヌ』ってなにか知っているの?ボク、それが知りたかったんだ!」
プードルのチェカがボクをじっと見つめる。
「どうして、センターのことが知りたいの?」
「お母さんが、ボクの飼い主がね、次はセンターのイヌが欲しい、って言っていたんだ」

チェカはまた少しの間ボクを見つめていたけれど、口元をゆるめた。
「そっか…。あなたのお母さんが言っていたセンターっていうのはね、人間たちが『動物愛護センター』とかって呼んでいる場所だと思うわ。どんな場所かは、自分で行ってみなさい。大きな雲のはしっこから地上を広ぉく見下ろしてみて。命を終えた子たちが何匹かいっしょに空へのぼってくる場所があったら...、たぶんそこがセンターよ。」

うーん、なんだかよくわからない答えだったけれど、ボクは行ってみようと思った。
「わかった。チェカ、ありがとう」
「がんばってね。ここは自由よ。バトンはだれかにあげてもいいし、あげなくてもいい。ここでずうっと飼い主を見守り続けてもいいし、さっさと生まれ変わってもいいの。でも、あなたはまだここに来たばっかりなんでしょう?しばらくは飼い主のそばにいてあげるものよ。そんなきれいなバトンを持っているんですものね」
チェカはまた明るい笑顔になって言った。

「それじゃあ、あたしは行くわね。少しの間ユキくんとはお別れだけど、あたし、絶対ユキくんの次のイヌになってみせるわ」

チェカの表情に、雲の上で会った小さな『命』を思い出した。
絶対って思っていれば、本当にもう一度出会って、いっしょに暮らせるのかもしれない。あぁ、それはなんてすてきなことだろう。

でも、今はお母さんのためにできることをしなくっちゃ。
「ありがとう、チェカ。いってらっしゃい。」
チェカはほんわりと立ったシッポをくりくりと上品にふって去っていった。

よし。じゃあ、雲のはしっこへ!
 

 

5.センターと幼稚園

 

目を開けると…、もちろんそこは雲のはしっこ。
強い風がふいたけれど、それはなんだか心地よかった。

雲のはしっこから下を見る、っと。
顔の下からも風がふきあがってきて清々しい。ひげがゆれる。


犬のバトンと空の国の物語

下を流れていた雲の群れがすぎさると視界は広がり、ボクが住んでいた町が見えた。
行ったことのない遠くの町までよく見える。

しばらくながめていると、遠くにけむりが生まれた。
ボクもけむりといっしょにのぼってきたことを思い出した。

空へと上がっていくけむりを追いかけるように、最初はうっすらとした影のように、そしてだんだんはっきりと動物たちが姿を見せた。
二匹の大きなイヌと…、小さな子ネコは、何匹いるんだろう…。
けむりとからみ合うように、みんな空に向かって上がっていく。

「あそこが、センター?」
ボクはけむりの出ている建物に向かって一直線に空をかけた。

まだイヌと子ネコたちがいる。ボクは思いきりワンッとほえた。
黒いイヌが立ち止まり、ふりむいた。
「こんにちは!ねえ、キミたちが『センターのイヌ』なの?」
ふりむいた黒いイヌは、不思議そうにボクの顔を見た。

「あのぉ、ボク、センターのイヌに会いたいんだ。ここが、キミたちが出てきたこの屋根のおうちが、センターという場所なの?」
ボクの声に、残りのイヌも子ネコたちも、立ち止まってボクを見ていた。とても静かな瞳で。

黒いイヌが口を開いた。
「センター…。そうだね、ここの人たちは、この場所のことをセンターと呼んでいた。ボクたちはセンターにいた動物たちだよ」
「よかった!ボク、センターのイヌに会いたかったんだ!」
ボクはいきおい込んでそう言ったけれど、もう一度黒いイヌが口を開くまでに、少し時間が開いた。

「たぶんだけど、ボクたちはキミが探しているセンターのイヌではないと思うよ。ボクたちを求めてくれる人は、だれもいなかったんだ…。でも、キミに探している相手がいるのなら、あの建物に行ってみればいい。あの場所には、そんなに長い時間はいられないのだから…」
ボクは言っている意味がよくわからなかったけど、ありがとうと言った。
そして、どうしてこんなにたくさんの動物がいっしょに空にのぼっていくんだろう、ふとそう思ったけれど、それをたずねる前に、もう黒いイヌは天を向いていた。
他の動物たちも。

黒いイヌと話していたときから聞こえていたイヌの鳴き声が、ボクが近づいたことでいっせいに大きくなった。
そこに遠ぼえがまざり、次々と声が重なった。
ボクは声の方へ建物のかべを通りぬけた。


イヌがいた。
ほえているイヌもうずくまっているイヌも、どこかうつろな目をしている。
別の部屋には空に向かって遠ぼえを繰り返すイヌたち。
また別の部屋には体をかたくして、かべをにらみ続けるネコ。

お母さんが言っていたセンターって本当にここなんだろうか?
 

お母さんはどの子を探しているの?
みんな、すごくさみしそうだよ。
 

ぐるりと動物のいる部屋をながめて、その奥にけむりが上がっていた建物があるのだと気づいた。

そこに行ってみたが、もう動物の気配はない。人間たちが話している。
「私はやっぱりクロは譲渡にまわせるイヌだったと思います…」
「しょうがないだろ、人になつかないイヌは譲渡会には出せない、ルールだ」
「クロは私になついてましたよ。あともう少しだけ時間があれば、なんとかできたのに…」
「しょうがない、と言っているだろう。人慣れのテストに落ちたら、次はないルールなんだ。ここの犬たちに『もう少し』はない。新しい家で人にけがをさせるわけにはいかないんだから。うなってテストに落ちれば、それまでだ。譲渡にはまわせない。そういう決まりだ」
「動物を処分しなければいけない仕事なんて…」
「人が安全に暮らすため…、今のこの国ではどういようもない…」

「絶対、変えますっ」


なんの話をしているんだろう、あの人たちは。
動物を処分する…?
さっきの黒いイヌを追いかけよう、とボクは建物を飛び出して外へ出たけれど、もう彼らの姿はどこにも見えなかった。



少しして、風に乗ってたくさんの子供たちの声が聞こえてきた。
ボクはいろんなことがよくわからないまま、子供たちの声に引き寄せられていった。

「ミミちゃんは、みんなも知っている通り、とても年をとって病気になっていました。でも、毎日みんなが大好きなニンジンを持ってきて話しかけてくれたから、病気になってからもたくさんいっしょにすごすことができましたね」
「ミミちゃん、痛くはなかったかな?」
「先生、ミミちゃんはどこに行くの?」
「ミミちゃんも悲しいのかなぁ…」

そこは幼稚園の庭のすみっこ。
子供たちのすすり泣きとかわいい声の中で、先生とよばれた女の人が話している。

「ミミちゃんは死んでしまって今日でさようならだけど、ミミちゃんはきっと悲しんではいないと思うよ。みんなが大好きでいてくれて楽しかったよ、って思っているんじゃないかなぁ。いつも話しかけてくれてありがとう、って言っていると先生は思います」

先生は土が小山のように盛り上がったところを見下ろしてから、また子供たちの顔を見て言葉を続けた。
「だから、みんなでミミちゃんに『ありがとう』を言いましょう。大きい声で、大好きな気持ちをこめてね。せぇのっ」
「ありがとーっ!」
子供たちのありがとうが響き渡った。


色とりどりの花が咲く丘の絵
 

子供たちがかこんでいた盛り上がった土の上の空間には、とても優しい眼差しで子供たち一人一人を見ている一羽の美しい白ウサギがいた。
そして、子供たちの『ありがとう』の声はキラキラと輝くと七色のリボンとなり、ボクにしか見えない美しいウサギの周りを舞い、フンワリ耳に結ばれた。
それはそれは美しい虹色のリボンだった。

「バトン…」
ボクの声に、ウサギは一度ボクを見て、そして幸せそうに目を細め、耳をふるわせると、子供たちの上を優しく跳ねまわった。
光がこぼれ落ちるんじゃないかと思うほど美しかった。
そこは愛であふれていた。

そうして、しばらく子供たちのそばを跳ねまわり、涙を流す子供の頬を優しく舐め、そのうち子供たちがだんだんに落ちついてくると、ウサギは幸せそうにボクににっこり笑ってみせた。
 

そして子供たちがいつのまにか少しすっきりした顔になって部屋に戻るのを見とどけると、空へと跳ねてのぼっていった。

ボクはただ見ていた。
なんて幸せな景色だろう。

 

 

6.青空の原っぱ、そして…

 

空の国で最初にいた木の下に座って、ボクは考えていた。
ウサギの耳にゆれていたバトン。
黒い犬と子ネコたちにはついていなかった、バトン…。

顔を上げると、おじさんイヌが目の前に立っていた。ボクは、自分が見てきたものを一息におじさんに伝えた。
 

ボクにはまだわからないことがいっぱいだった。

おじさんは、ゆっくりと話してくれた。
バトンは死んだときに だれもがもらえるわけではない、ということ。
センターでは、飼い主が捨てたりして飼い主のいない動物たち、行き場のない動物たちが、殺されることがあること…。
だから、動物たちがいっせいに空へのぼってくること。

彼らの中には、バトンを持っている動物はめったにいないこと。
 

そして、そんなセンターの中でも、新しい飼い主に引き取られて幸せになる動物もいること。

ボクは、お母さんがその『殺されるかもしれない犬』を救いたいのだろうということが、ようやくわかった。
でも、今日見たイヌたちはみんな悲しそうで、本当にお母さんが求めているイヌたちなのか、よくわからなかった。

お母さんは、ボクにどうしてほしいんだろう?
 

おじさんは、ゆっくりでいいんだよ、と言った。
「どうしたいかが決まるまで、バトンはずっと持っていればいいんだから…」
ボクは顔をあげておじさんを見て、その時はじめて気がついた。
 

「おじさん…、おじさんのその首の後ろについてるのは、バトンですか?」
おじさんの首輪にも、白い小さな端切れのようなものがついていた。
「ん、ああ。そうだよ」
「おじさんは、バトンを渡せる相手が見つからなかったの?」

おじさんは、じっとボクを見つめた。
「そうじゃないんだ。私の飼い主はね、もう動物を飼わない、と決めているんだ。もう二度と飼わない、と…」
ボクはすぐには言葉の意味が飲みこめなかった。
 

「おじさんの飼い主さんは、もうイヌはいらない、ってこと?」
「彼は、親友と呼べるのは私だけだ、と言ってくれてね。代わりのイヌなんていらない、と言ったまま、もう長い間ひとりで生きているんだよ。もちろん、つらさやさみしさを乗りこえる姿を見るたびに、だれかにバトンを渡した方がいいんじゃないか、とも思ったんだ。でも…、心が決まらないまま、もうずいぶん時間が経ってしまった」
 

ボクはおじさんの話を聞いていた。
「ここにいれば、彼がつらいときはそばにいって寄り添ってやることができる。彼もきっと私の存在を感じてくれている…。彼がいらないと思っているのにだれかにバトンを渡しても、バトンを持って彼のもとへ行った命がかわいそうだろう?」

「ボクは…」
ボクは…、こんな優しそうなおじさんの飼い主さんなんだから、きっと新しい命が来ればとても大切にするだろうと思った。
だから、おじさんがバトンをだれかにやって、飼い主さんのところに命を送りこんでしまえばいいのに、って思ったんだ。
 

でも、だまっていた。
たぶん、バトンを渡すかどうかはおじさんが決めることなんだ。

おじさんが深い茶色の瞳でボクの言葉を待っていたから、
「ボクは、ボクは、ボクは…、だれかにバトンを渡そうと思うよ。お母さんを笑顔にしたいから」
そうとだけ言った。
 

「それがいいだろうよ。さあ、行っておいで、ハッピー」
虹の橋のたもとの犬小屋とバトン

かべを通りぬけて、お母さんのそばに行くと、今日もやっぱりお母さんはきれいな四角いふくろをかかえて泣いていた。
「ハッピーちゃん、こんなことならもっと色々してあげたらよかったね。」
四角いふくろには壷が入っていて、その中にボクの骨が入っているんだそうだ。
これもおじさんが教えてくれた。

お母さん、泣かないで。
ボクはとっても幸せだったんだよ。
 

お父さんとお母さんがボクのことを本当に大好きでいてくれたことを知っているから。
 

病気になって入院してからも毎日毎日病院に来てくれて、がんばって、大好きよ、もっといっしょにいよう、って言ってくれたのをちゃんとずっと覚えているから。
 

お別れの日も、空の犬になったときも、ボクは幸せに包まれていたんだから。
泣かないで、お母さん。


ーーーピリリリリリッ
 

テーブルの上でお母さんの携帯電話が鳴った。

お母さんより早くたどりついて、ひょいと携帯電話をのぞいてみると、お父さんがボクをだいて笑っている写真が光っていた。

お父さんは今、何をしているんだろう?
お父さんの所にも行ってみよう!

ボクのバトンが、黄金色の毛がゆれるのに合わせてキラキラとかがやいた。


虹の橋へ向かう動物のバトン



エピローグ

 

「ただいまぁ」
「もう、お父さん!さっき電話で言っとった、子イヌをもらった、ってどういうことです?」
「いやぁ、仕事仲間の家で柴犬の子が産まれとってな。帰りに見てきたんやけど、そりゃあもうかわいくって。その中でも、まるまる太った白毛の男の子はどうか、って」


「まぁ!ハッピーちゃんのこともう忘れたん?四十九日もすぎてないっていうのに、子イヌなんか飼われへんわ」
「いやぁ、そうは言うが、もう生まれて二カ月過ぎとるんや、もらうには今がいい時期やと言っててね。ほな、今度の週末にでももらいにきます、って言ってしまったんやわ」
 

「なんで勝手に決めてくるんですか。断ってください!」
「いやぁ、それがわしも、ぜひうちに、って言ってしまって…。まぁ、とりあえず、明日の晩にでも見るだけ見に行かへんか、いっしょに?」
「私、お断りしますからね。まだうちには早すぎです」


「しかし…、イヌがいないのは…、やっぱりさみしぃんやないか?」
「そんなすぐに別のイヌを飼ったら、ハッピーがおこります!」
子供と犬、テーブルの上のパン

あのね、お母さん。お父さんが見にいった、真っ白の柴犬の子にね、ボクね、ボクのバトンをあげたんだよ。
キラキラと好奇心いっぱいの目をした子でね、きっとお母さんをいーっぱい困らせて、いーっぱい笑わせてくれると思ったんだ…。
元気だった頃のボクみたいに、さ。
 
ボクは、もう少し空を飛びまわりながらお母さんの近くにいるけれど、思い出してくれるのは少しでいいよ。
そうして、思い出してくれるときは、お母さんをたくさん泣かせた最期のボクじゃなくて、なにも知らずに無邪気に駆け回っていたときのボクを思い出してほしいよ。

どうか笑っていて!

ボクはだいじょうぶ。
ボクはとっても幸せな色のバトンをもらえたイヌだからさ。

 

 

ーーー END ---

(過去に角川の「カクヨム」サイトに掲載していたものです@あやまるねこ)

 

 

以下、こんな長いのに蛇足ですが…

私のペットの死生観

 

 

バトンのシリーズも、少しずつ再アップしていく予定ですクローバー

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やっと
確定申告が終わりましたm(_ _)m

毎年よくまあこんなギリギリになるなぁと自他共に思うところではあります。12月末に帳簿はついてるはずなのに…私の7不思議🙀


と言いつつ、実は特性が関係ありそうなことも知識として知っている、いつまでに〇〇したら間に合うという「見えない時間」の計算が特に弱いらしい。時間リミットが具現化(あと数日…みたいな)されてから初めて仕事スイッチが入る…、の繰り返し♪

まぁ、今年は特に1,2月が忙しかったので、よく頑張ったと自分を褒めつつ、眠い目をこすって溜めてる仕事にとりかかりましょお🙈

余談ですが、このポケモン、ご存知ですか?有名?
うちの息子じゃないですが、息子の推しで、息子みたいな性格のポケモンみたいです。
何度聞いても名前を覚えられないけど、サルノリではないことだけ覚えたぞ💕

動物の仕事してると、ポケモンと比べて考えちゃうこともよくあって…、と語れば尽きないのですが、仕事してないのバレるのでまた今度です😸
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エイパムだよー🐒

 

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漫画を読む時間はあるんだなー、な、ぜ、かウシシ