ルースターズのサードアルバムINSANE(インセイン)をミニアルバムと呼ぶかどうかは意見が分かれるところだろう。
リリース当時、B面こそ2曲のみだったが、A面には通常アルバムと同様の5曲が収録されていたし、本人たちも、もともとは12インチ・シングルで出すつもりだったと語っていることから、バンドサイドはフルアルバムとして認識していたようだ。
ただ、販売価格が2,000円(当時のLPは大体が2,500円)だったことや、B面がトータルで8分30秒ほどの2曲のみということもあり、自分は当時からミニアルバムとして認識していた。
インセインはメンバーの大江慎也と池畑潤二が出演した映画バースト・シティ(爆裂都市)の撮影と並行して制作され、アルバムA面収録曲のレッツ・ロック、ゲット・エヴリシング、オール・ナイト・ロングの3曲はその映画の挿入歌としても使われていた。
さて、本アルバムは彼らの代表曲と言ってもいい、日本ロック界不朽の名作レッツ・ロックで幕を開ける。
ファーストのR&Bをベースにしたオーソドックスなロックン・ロール、それをポップに進化させたセカンド・アルバム、それらをさらにラウドに、パワフルに進化させた完成形といもいえるこの曲は、最初の”ジャーン”というギターを聴いただけで震えること間違いなし。
アルバムに収録されたこの曲は英詞で歌われているが、シングルでリリースされた日本語verの方がよりストレートに、ダイレクトに言葉が伝わってくるので、なぜそちらをアルバムに採用しなかったのかが残念なところだ。(それほどに日本語詞は秀逸です)
2曲目以降はファースト、セカンドで聴かせたサウンドを踏襲しつつ、ラスト5曲目のインスト曲フラッシュ・バックは曲の途中で寸断される、ある意味実験的な終わり方となっている。
そしてB面1曲目のケース・オブ・インサニティになるとA面と同じバンド?と思わせるほどにそのサウンドは一転、フォーキー・サイケデリックなニューウェイブサウンドにいい意味で期待を裏切られる。キーボードも大々的にフィーチャーされたこの曲は以降を含めた彼らの作品群の中でもひと際美しさが際立った曲と言っていいだろう。
2曲目イン・ディープ・グリーフでは更にサイケデリックな世界が繰り広げられたのは、彼ら(というより大江)の指向だったのか、それともプロデューサー柏木省三によるものだったのか・・・。
いずれにせよ、映画バースト・シティ(爆裂都市)の撮影が影響してこのB面の2曲が出来上がり、当初の12インチ・シングルの予定をアルバムの形態に変えたのではないだろうか?というのが自分の見立てだが、ギターの花田裕之が当時のインタビューで「映画のロケが朝まであった日なんんかは怖かったですよ。殺気走ってて、実際そのあたりから、大江の書く曲も変わったなぁって思いました」と語っていたと、再発された本アルバムのライナーノーツに書かれているので、あながち自分の見立ても間違ってはいないかも。
その後のバンドサウンドのあまりにも大きな変化、とりわけ大江慎也の変調が映画バースト・シティ(爆裂都市)の出演に依ることは、その後、多くのメディアで語られているし、映画出演によりもたらされた狂気がすでにこのアルバムに萌芽となって表れたのは紛れもない事実だろう。
発売当時はそんなことを微塵も感じることができなかった自分であったが(笑)
いずれにしてもルースターズの代表作は?と聞かれれば間違いなくこのインセインと答えるほどの、また、日本のロック史を語るときにも外せないだろうほどの重要作品なので、未聴の方には是非手に取って聴いていただきたい。
ちなみに彼らのセカンド・アルバム"ルースターズ・ア・ゴー・ゴーについても、かなり前にレビューしているので、お暇があれば覗いていただければ。
今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。