モッズのデビューのきっかけとなったのが石井聰亙監督の映画「狂い咲きサンダーロード」のサントラへの参加だったことはあまりにも有名な話。
その石井聰亙の次なる新作として1982年に公開された作品が「爆裂都市/バースト・シティ」である。
モッズがサントラに参加した映画の監督が制作した新作ということだったのはもちろんなのだが、当時モッズとともにめんたいロックの代表と評されていたロッカーズ、ルースターズのメンバー、パンクロックの旗手として台頭していたスターリン、INUの町田町蔵(現 町田康)というそうそうたるメンツが出演しているとなれば、否が応でも作品への期待はMAXまで高まるというものだ。
映画の内容は近未来都市を舞台にした、ロックバンド、ギャング団、ポリス軍団、下層民群入り乱れての大激突ストーリーというところだろうか。
地元の映画館でも公開されすぐに観に行ったのだが、さほど映画好きというほどでもない高2のガキにとってストーリー的には「??」と何がなんだか理解できず、町蔵(今では芥川賞作家ですな)の言葉が話せずにただただ「ウォー」と叫ぶ姿、ロッカーズの陣内孝則(この頃のシャープさと言ったら)、鶴川仁美、ルースターズの大江慎也、池端潤二らが演じるロックバンド「バトルロッカーズ」のカッコよさ、バトルロッカーズのメンバーとコント赤信号が演じるチームのゼロヨンレース後の滑稽さなんかだけが今でも忘れられないくらいの強烈な印象となって残っているのだが、僕は映画自体よりもその後に発売されたオリジナルサウンドトラック「爆裂都市 BURST CITY」の方に夢中になったのだった。
アルバムには、ロッカーズ、陣内孝則のソロ、ルースターズのプロデューサー柏木省三とルースターズのメンバーらで構成された「1984」、そして劇中に登場する「バトルロッカーズ」らの楽曲が収録されている。ただ、インストもの以外はすべてで陣内がボーカルを務めていることと曲と曲の繋がりが絶妙なバランスからなのか、サントラにありがちなバラバラ感はまったくと言っていいほどなく、1バンドのオリジナルアルバムと言われてもわからないのではないかな。
その中でも文句なしの№1ソングはA面2曲目とB面のエンディングに収められている「セル ナンバー8」。超高速ギターとブルースハープのイントロがあまりにもカッコよすぎで、それに続く「コツコツ靴音響かせてー」の歌の出だしの「コツコツ」のところのリズム感、スピード感がたまらない、80年代日本ロック界の名曲中の名曲。この曲の歌詞(作詞は陣内孝則)はその過激さゆえかアルバムの歌詞カードには「都合により歌詞の掲載を省略します」とある。
前述の町蔵の叫びも5曲目「プア ボーイ」と6曲目「ソロー」の曲間で聴けるのでこれも必聴。
B面1曲目を飾る「視界ゼロの女」はアレンジをロッカーズが担っているにも関わらず、曲のクレジットが陣内のソロとなっているのはなぜなのかいまだ不明だが、心地よいポップさはスマッシュヒットしててもおかしくない佳曲である。
「ざまぁみろ!バトルズをなめんなよ!」の大江のセリフで始まるB面4曲目「バチラス ボンブ(細菌爆弾)」から5曲目「フラストレーション」もセルナンバー8と並ぶ気持ちいいほどの高速ナンバー連続クラッシュ弾だ。
セルナンバー8、バチラスボンブの2曲は大江が作曲しているのだが、在籍していたルースターズの「レッツ・ロック」、「ゲット・エヴリシング」と合わせ、この時期の大江慎也はものすごくバンキッシュな名曲を数多く創作していたな。
このレッツ・ロックが収められた「インセイン」というアルバムはいつか紹介したい名作なのでこちらも是非聞いてほしい。
少しだけこの映画にまつわる個人的な思い出を。
当時僕の通っていた高校には学内の悪ガキたちのリーダー的存在でラグビー部のキャプテンを務める強面のMという男がいたのだが、僕はラグビー部にも所属していなかったしこのMと同じクラスになったこともなかったのだが、多分Mを始めとする当時の悪ガキ連中がが集まっていた喫茶店に僕もよく顔を出していたせいなのか、なぜだかこの強面Mと気が合い、この「爆裂都市」の映画も彼と一緒に観に行ったはずだ。
そのM、高3になるまでラグビー一辺倒でバンドなんかしてなかったのに突然、どうしてもバトルロッカーズの「バチラスボンブ」とルースターズの「日本語バージョンのレッツ・ロック」を歌いたいと言い出した。で、高3の時の学園祭で友人のバンドが演奏する際、この2曲だけボーカルを取るというわがままを押し通していた。さすがにこいつの強面で迫られたらみんな断ることなんかできなかったんだろうなぁ、自分のバンドに頼み込まれなくてよかったぁなんて思ったのも今となっては懐かしく笑える思い出だ。
また、一緒にアナーキーのライブに行ったときは「俺はジョニー・B・グッドだけが聞きたいんだ。早く演ってくんねぇかな」と言って、この曲が演奏されるとすっかり満足し、演奏が終わったとたん残りは聞かずに本当に一人で帰ってしまうし、ある時はマーガレットという少女漫画雑誌に連載されていたいくえみ凌の漫画に登場する八田(多分ケントリのケンジがモデル)という男と同じ髪型にしたいから美容室(!!)についてこいと無理矢理付き合わされたほどのわがままな奴だったが、根は優しく面倒見の良い気のいい男だったのでいつも彼の周りにはたくさんの仲間が集まっていた。
高校卒業後は進路も住む場所も違ってはいたが、年に何回かはお互い行き来して付き合いは続いていた。が、ある時(もう25年も前になるが)、Mは自動車事故であっけなくあの世に行ってしまった。その時の想いはここには書き尽くせないほどなのだが、自分が死んであの世に行った時にはまっ先に会いたい一人である。
さて、話を暗いまま終わらせるのも気が引けるので、最後は爆裂都市の映画に使われていたコピーで締めることにしよう。
「これは暴動の映画ではない。映画の暴動である。」
カッコよすぎだよね。
友人のパンクバンド「ベインビール」のライブ映像もYouTubeにアップされているので、よかったらご覧ください。
※急にYouTubeの画像埋め込みがうまくできなくなった…↓