DVDあらすじより
倒産寸前の興信所「キャリー・サービス」に久しぶりに調査の依頼が舞い込んできた。大阪・三協銀行中之島支店に勤める課長、神津が4800万円の集金を終えた後、忽然と姿を消してしまったのだ。何らかの事件に巻き込まれたのか、それとも公金横領なのか?銀行側は信用失墜をおそれ、内密に調査を進めるよう「キャリー・サービス」に依頼する。調査員の瀬木(松田優作)は、神津の妻・弓子(烏丸せつ子)に会いに行く。金銭が原因の逃亡や蒸発は、以前住んだことのある住居の周辺、親族や実家のそばに潜んでいることが多いからだ。しかし、事の仔細を知らされていない弓子は、ただひたすらに夫の安否を気づかう――その数日後、社宅内で行われた「管理職妻の会」で、夫にかけられている疑惑が、初めて弓子の知るところとなる。
製作:NHK大阪
演出:佐藤幹夫 三枝健起
脚本:筒井ともみ
撮影:皿井良雄 八木悟
美術:稲葉寿一 石村嘉孝
音楽:井上信義
出演:松田優作 烏丸せつ子 阿木燿子 橋爪功 月亭八方 岡本麗
1986年7月12日~8月2日放映
瀬木は手掛かりが掴めず、弓子の過去を知る化粧品販売員の富岡(岡本麗)に会い、彼女から弓子には子供の頃複雑な家庭事情のせいで自宅に火を放ったことがあると聞かされます。そんな折、弓子は若狭の小浜で水死体が上がったという報せを受け現地に向かいます。
一方、瀬木も情報屋の竹宮(國村準)から情報を仕入れ若狭に向かいますが、その地にはかつての妻・小夜子(阿木燿子)の実家があり、今も彼女が住んでいました。瀬木は妻子を捨てて蒸発した過去があり、小夜子と再会したことで過去の自分と向き合う話の流れになってきます。
このドラマは40年前に4週に亘ってNHK総合テレビで放映されました。私の場合、連続ドラマは1週間待つのがかったるくて、余程のことがない限り見るのを避けてきたのですが、松田優作が「探偵物語」の工藤俊作とは異なるキャラクターで探偵役を演じるのに惹かれ毎週見ていました。
ただし、最終話だけは見逃してしまい、DVD化されたおかげで事件の真相を確認することができました。事件の真相は想像したように、旦那の公金横領ではなく、事件に巻き込まれた不幸な出来事であり、私が当初から目を着けていた人物の犯行でした。本格ミステリーのような意外性はありませんが、その分、ハードボイルドに相応しい探偵のほろ苦い心情を感じさせる作品でした。
瀬木は元々製薬会社で新薬の開発に当たっていましたが、十分な実験をさせてもらえずに、会社は販売に踏み切ります。ところが、その新薬が原因で事故が起きて、詰め腹を切らされた末に姿をくらました経緯がありました。瀬木が失踪している間、妻は親友と懇ろの仲になり、更に娘の事故死が続いたせいで、彼は人間不信に陥り現在の職業に就きました。
瀬木は弓子と接触した当初は、傍からはかなり感じの悪い調査員に映るのですが、話が進むうちに徐々に印象が変わってきます。彼は弓子とその娘のかおりと接するうちに、社宅の妻たちの嫌がらせや学校でのいじめに苦しむ母娘の姿を目にして、次第に義侠心が芽生えてくるからです。同時に、自分が失踪したことで家族に苦しみを与えてきたことも漸く自覚していきます。こうした過程を経た上で、雇い主から調査の打ち切りを告げられても、母娘のために調査を続行する辺りが男気を感じさせます。
弓子を演じた烏丸せつ子はグラビアで目にしたことや、ラジオ番組「サウンド・ストリート」のパーソナリティとして耳にしたことはあっても、彼女の出演した映画やテレビドラマはあまり観た記憶がありません。したがって、この「追う男」が私にとって烏丸せつ子という女優の代表作になります。
ただし、ヒロイン役にも関わらず、彼女以上に目を奪われたのが阿木燿子。阿木は本業が作詞家や作家であり、この当時40歳を過ぎていた筈ですが、成熟した美しさにヤラれました。儚げな中にも凛とした雰囲気を漂わせており、短い出演時間ながらも私に強烈なイメージを植え付けました。
また、無名だった國村準や出前持ちの生瀬勝久(芸風が今と変わっていないのが笑える)を見られる点でも、今となっては貴重なドラマと思えました。再開発を始めとするバブル景気が始まりそうな雰囲気が劇中にもそこはかとなく漂っていて、その点においても懐かしさを覚えました。
