若尾文子の明朗なキャラクターが際立つ「温泉女医」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

若尾文子 映画祭 大映〈プログラムピクチャー〉の職人監督と より

 

製作:大映

監督:木村恵吾

脚本:田口耕三 木村恵吾

撮影:宗川信夫

美術:柴田篤二

音楽:小川寛興

出演:若尾文子 丸井太郎 姿美千子 山下洵一郎

             中村鴈治郎 ミヤコ蝶々 柳家金語楼 飯田蝶子

1964年1月9日公開

 

伊豆にある子宝温泉と呼ばれる町では、医者は高血圧の老人薮内大作(菅井一郎)ただ一人でした。息子の昌彦(丸井太郎)は医大を卒業しながら、養蜂業を営んでおり、父親から勘当を受けていました。そのため、薮内医院では万が一のために代診を依頼していました。その医院に現われたのは、女医の塩月イサオ(若尾文子)。イサオの美貌と適切な診察は次第に人気を博し、忽ち待合室は人で溢れるほどになります。

 

ある日、イサオは芸妓の豆福(三原葉子)から半玉の吉弥(姿美千子)を紹介されます。本来看護師志望の吉弥は、学費が払えずに芸妓の世界に入りました。そんな事情があるため、イサオは彼女の為に力になってあげたいと思います。一方昌彦は、友人である旅館の若旦那淳吉(山下洵一郎)から、吉弥への恋心を告白されます。気弱な淳吉は、昌彦に恋の橋渡しを頼みます。

 

昌彦は吉弥の人柄を確かめるため、お座敷に彼女を呼び人物テストを試みます。ところが、イサオも吉弥を座敷に呼んだことで、昌彦と淳吉がその様子を盗み見していたことが誤解され、二人の男はイサオから大目玉を食らいます。しかし、昌彦が施設に居る孤児たちを援助していたことを知り、イサオの昌彦を見る目が違ってきます。そんな矢先、イサオに東京の病院に復帰するよう依頼する手紙が届きます・・・。

 

若尾文子が自転車を駆って街中を疾走する冒頭からワクワクさせられます。彼女は若干堅物ながらも、増村保造の「青空娘」におけるヒロインが、そのまま強く明るく成長して女医になったかのようで、徹夜麻雀する不良グループに絡まれてもへこたれない根性を見せます。

 

それでいて宿泊料を払えなくなった彼らの代わりに立て替える太っ腹なところを見せ、そのことに恐縮する旅館に対し芸者遊びをすることで気を遣わせない配慮をするなど、要所で粋な計らいをします。こうした愛すべきキャラクターのため、誰からも好かれる役柄になっています。若尾演じる女医が来てから、診療所も繁盛しますが、彼女の美貌だけでなく人柄も影響を及ぼしているとも言えます。

 

三原葉子演じる芸妓とは妊娠後の処置を巡って、意見の食い違いから対立構図になりかけますが、イサオが豆福に高圧にならなかったことが功を奏し、豆福も最終的には女医の意見に従う形になります。若尾文子と三原葉子の組合せは珍しく、二人の遣り取りを見るだけでも一見の価値はあるでしょう。また、二枚目ではない昌彦役の丸井太郎と最終的に結ばれる点も、若尾の好感度を上げています。

 

ただ、あまりにもヒロインがいい人過ぎると、ひねくれ者の私としては逆に醒めてしまうのですが、その一方で、若尾ファンとしては彼女ならば許せるという気にもなります(笑)。

 

捌けた三原葉子も良かったですが、菅井一郎、中村鴈治郎、飯田蝶子らベテラン陣のいぶし銀の芝居も、この喜劇を面白くしていました。無類の酒好きの菅井、菅井の暴走を嗜める飯田、菅井の囲碁相手でしょっちゅうセクハラをする中村による絶妙なアンサンブルが、ヒロインを引き立たせていました。

 

個人的には序盤における林家三平の小芝居も嬉しかったですね。新妻が風呂で倒れオロオロする夫役で、新妻の名がネタであるセツコさんなのも笑えます。こうした脇役陣に支えられながら、若尾文子が魅力的な女医を活き活きと演じているのが、この映画の一番の見どころでした。