ふたりの河合優実 「ナミビアの砂漠」「あんのこと」を観て | パンクフロイドのブログ

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私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

早稲田松竹

彼女たちは何を見つめている より

 

ナミビアの砂漠 公式サイト

 

チラシより

世の中も、人生も全部つまらない。やり場のない感情を抱いたまま毎日を生きている、21歳のカナ。優しいけど退屈なホンダから自信家で刺激的なハヤシに乗り換えて、新しい生活を始めてみたが、次第にカナは自分自身に追い詰められていく。もがき、ぶつかり、彼女は自分の居場所を見つけることができるのだろうか・・・?

 

製作:「ナミビアの砂漠」製作委員会

監督・脚本:山中瑶子

撮影:米倉伸

美術:小林蘭

音楽:渡邊琢磨

出演:河合優実 金子大地 寛一郎 新谷ゆづみ 中島歩 唐田えりか

             渋谷采郁 澁谷麻美 倉田萌衣 伊島空 堀部圭亮 渡辺真起子

2024年9月6日公開

 

早稲田松竹に来るのは久しぶり。いつの間にかシニア料金が900円から1100円に値上がりしていましたが、このご時世に二本立てでこの料金ならば、200円上げたところで文句を言うのは筋違いでしょう。

 

さて、本作は作り手が意図的に説明を省こうとした節が窺えました。カナに中国人の血が混じっていたり、ハヤシの荷物の中にあった写真が胎児であったりと、後付けの説明で漸く腑に落ちる点がしばしば見受けられました。

 

ただ、こうした説明不足と相まって、カナがホンダと同棲しているにも関わらず性交渉が全く見られず、逆にハヤシとヤリまくりの状況がイマイチ解りませんでした。ホンダが札幌出張の際、風俗に行って勃たなかった件から不能の疑いもあるのですが・・・。尤も、ホンダが風俗に行ったことをカナに自ら告白するのもどうかと思いますよ(笑)。

 

こんな調子なので、ホンダが不動産会社の営業職らしいのに長髪だったり、ハヤシがカナとデート中に彼女の見える場所から立ちションしたりと、どうでも良い部分が不可解で気になってきます。

 

話が進むにつれ、カナの背景や現在の状況が把握できるようになり、彼女が孤独であることが見えてきます。そのことはハヤシの家族の集まりで疎外感を味わい、彼女の母親が中国に居住しているらしいことで腑に落ちてきます。

 

また、カナは女王様気質な面があり、洗濯や掃除はしているように見える反面、料理に関しては頑なに男に作らせていて、腹が空いて我慢できない場合はハヤシと大喧嘩します。彼女は何を考えているか判らないところがあり、しかも、時に暴力で屈服させようとします。河合優実のような容姿でなければ、お近づきになりたくない女です。

 

「痴人の愛」のナオミのようなタイプではないものの、男を翻弄する点では同じ匂いを感じます。本作のヒロインの河合優実はエキセントリックな面を強調して、熱量のある芝居をしています。真正面からは映さないものの、結構際どいサーヴィスショットもあり、それだけでも鑑賞する価値があるかもしれません。

 

あんのこと 公式サイト

 

チラシより

21歳の主人公・杏は、幼い頃から母親に暴力を振るわれ、十代半ばから売春を強いられて、過酷な人生を送ってきた。ある日、覚醒剤使用容疑で取り調べを受けた彼女は、多々羅という変わった刑事と出会う。大人を信用したことのない杏だが、なんの見返りも求めず就職を支援し、ありのままを受け入れてくれる多々羅に、次第に心を開いていく。週刊誌記者の桐野は、「多々羅が薬物更生者の自助グループを私物化し、参加者の女性に関係を強いている」というリークを得て、慎重に取材を進めていた。ちょうどその頃、新型コロナウィルスが出現。杏がやっと手にした居場所を閉ざされ、孤立して苦しむ杏。そんなある朝、身を寄せていたシェルターの隣人から思いがけない頼みごとをされる---。

 

製作:木下グループ 鈍牛倶楽部 コギトワークス

監督・脚本:入江悠

撮影:浦田秀穂

美術:塩川節子

音楽:安川午朗

出演:河合優実 佐藤二朗 稲垣吾郎 河井青葉 広岡由里子 早見あかり

2024年6月7日公開

 

本作は劣悪な環境により、十代半ばから母親に売春を強要された少女が、せっかく更生の機会を得られたのに、不測の事態で再び不幸の道を歩むことになる受難劇です。香川杏は母親の許から離れることができる立場にあるとは言え、救いを求める手立てを知りません。ろくに教育を受けていないため、就職できる職種は限られており、加えて世話になった祖母を家に残して見捨てることもできません。その結果、現実の辛さをしばし忘れるため、クスリに頼る悪循環に陥っています。

 

そんな中、刑事の多々羅と出会ったことをきっかけに、杏はクスリを絶ち、母親と接触できない住居を得て、週刊誌記者の桐野の紹介により介護施設で働けるようになります。彼女自身も徐々に生きることに対して前向きになり、夜間学校に通い外国人と一緒に読み書きの訓練をします。

 

その矢先、多々羅のスキャンダルが暴かれ、更にコロナ禍が重なったことで、非正規社員の杏も一時的に職を失います。おまけに訳ありの三隅紗良から無理矢理子供の世話を押し付けられます。こうした孤立した状況の中で、誰にも相談できない杏の運命や如何に?という展開になっていきます。

 

ただ、杏が母親のいなくなった子供の面倒を見るエピソードは必要だったかどうか。親しい間柄ならばまだしも、紗良との遣り取りから顔見知り程度としか思えず、杏の苦難を増強する点や、彼女がある行動を取る引き金を引いた点はあったにせよ、唐突な感は否めませんでした。相談できる相手が居なかったとは言え、子供を押し付けられた杏の対応も、悲劇にするためのご都合主義に感じられました。

 

ストーリーとしては面白みに欠ける内容でしたが、日本のセーフティネットがどのように機能しているかを知る上では、多少なりとも参考になりました。「ナミビアの砂漠」同様、河合優実は悪態をつく蓮っ葉な女を演じると俄然輝き、しかもショートカットだと可愛さが増します。個人的には多々羅と桐野に出逢わなければ、「悪い夏」のシングルマザーになっていたに違いないと、脳内変換しながら楽しみました。