奇想天外な3つの物語をメインキャストが別のキャラクターで演じ分ける「憐れみの3章」を観て | パンクフロイドのブログ

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憐れみの3章 公式サイト

 

映画.comより

「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」に続いてヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー。選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女が繰り広げる3つの奇想天外な物語を、不穏さを漂わせながらもユーモラスに描き出す。

 

製作:イギリス アメリカ

監督:ヨルゴス・ランティモス

脚本:エフティミス・フィリップ ヨルゴス・ランティモス

撮影:ロビー・ライイアン

美術:アンソニー・ガスパーロ

音楽:イェルスキン・フェンドリクス

出演:エマ・ストーン ジェシー・プレモンス ウィレム・デフォー マーガレット・クアリー

        ホン・チャウ ジョー・アルウィン ママドゥ・アティエ ハンター・シェイファー

2024年9月27日公開

 

本作は以下の3つの物語によって構成されています。

 

第1章:選択肢を奪われ自分の人生を取り戻そうと格闘する男

第2章:海で失踪し帰還するも別人のようになった妻を恐れる警官

第3章:卓越した教祖となると定められた特別な人物を懸命に探す女

 

そして、3つの異なる物語を同じ俳優が異なるキャラクターで演じ分けています。

 

3つの物語に繋がりは見られませんが、無関係という訳でもありません。逆境にある人物が生まれ変わろうとする点では一致しているように思えますし、第1章で事故死を了承した男が第3章であのような形で甦ると、益々結びつきがあるように思えてきます。

 

どの章も最初の10分間は一体何を見せられているのかと訝しがりつつ、物語がある程度進んで行ってもどのように話が転がっていくのか予測のつきにくい面白さがあります。また、第1章では一朝一夕には人は変わらないと打ちのめされたり、第2章では読者に解釈を委ねたり、第3章では苦労したにも関わらず一瞬にして水泡に帰す皮肉なオチが待ち構えていたりと、いずれの章も幕の閉じ方は様々。

 

そして、第2章で妻の行方が分からず鬱になっているジェシー・プレモンスが昔のビデオが見たいと言って、その映像が映し出されたら、まさかの・・・だった場面には、空気の読めないボンクラ野郎に相応しすぎて思わず爆笑してしまいました。他にも第2章のエマ・ストーンのある行為は、状況は異なれど、ロアルド・ダールの「南から来た男」の賭け事の好きな男を思い起こさせ、内に秘めた人間の狂気を思わずにいられませんでした。

 

元々変な映画を撮ることに定評のあるヨルゴス・ランティモスですが、近年の「女王陛下のお気に入り」や今年公開された「哀れなるものたち」は、変な映画には変わりなくても、理不尽さと言う点で物足りなさがありました。特に初期作品からリアルタイムで観てきた者にとっては、少々毒気が不足してやや大人しく感じられました。それらに比べると、本作は「籠の中の乙女」「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」に見られた不条理が溢れ出ていて、個人的には堪能しました。

 

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