ラピュタ阿佐ヶ谷
製作:日活
監督:林功
脚本:鹿水晶子
撮影:山崎敏郎
美術:川船夏夫
音楽:佐藤健
出演:志麻いづみ 鶴岡修 珠瑠美 梓ようこ 小川亜佐美
木島一郎 島村謙次 秋風敏勝 浜口竜哉 玉井謙介
1978年4月15日公開
サラリーマンの亀山六次郎(鶴岡修)は、妻の益子(珠瑠美)の尻に敷かれ、しがない生活を送っていました。ある日、益子はテレビのワイドショーに主婦代表として出演し、身の上相談のコーナーで夫婦平等を力説します。一方、鳥海まり子(志麻いづみ)は、夫の武(木島一郎)の有り余る性欲と特殊な性癖に悩んでいました。思い余ったまり子は、同じ団地に住む益子に窮状を訴え、益子は我慢に出来なくなったら自宅に来なさいと安請け合いしてしまいます。
そんな折、朝、六次郎が目を覚ますと、横で冷たくなっている妻を目にします。益子は生命保険に入っており、3500万円の保険金がおりたため、六次郎は会社を退職し怠惰な生活を送ります。彼は隣の部屋に住む苦爪豊(浜口竜哉)と憲子(梓ようこ)夫妻の美人局に引っ掛かりつつ、競艇で儲けたり、浪人生の矢沢(秋風敏勝)に対して女子高生(小川亜佐美)との筆下ろしを手伝ったりしていました。しかし、六次郎は徐々にそんな生活にも飽きて、空虚な気持ちになっていました。
ある日、六次郎が帰宅すると、まり子が夫から逃げるように家出してきており、そのまま六次郎の自宅に居座ります。武にまり子の居所を突き止められ、一度は彼女を連れもどされたものの、六次郎は彼女のことが忘れられず、3000万円で武からまり子を買おうとするのですが・・・。
本来艶笑喜劇になり得る素材にも関わらず、全編笑いで押し通せばいいところを、変にシリアスな描写を混ぜ合わせたために、中途半端な作品に終わったのが惜しまれます。3000万円を鳥海に払った代わりにまり子を得たものの、実際彼女と生活したら前の女房とさして変わらなかったという皮肉なオチが用意されていただけに勿体なかったです。
また、悶々とした生活を送る浪人生を登場させたのも腑に落ちませんでした。女高生との筆下ろしの念願が叶ったものの、あっさり彼女を捨てる浪人生のドライな面を、同じ過ちを繰り返す六次郎と対比させる狙いがあったのでしょうが、イマイチ機能していなかったように思います。
主人公の相手役の志麻いづみは、ロマンポルノの中でもSM作品に多く出演しており、この映画の中でも身体を縛られ道具で責められる場面では活き活きと演じていました。個人的にはワイドショーの身の上相談のコーナーが目を惹きました。相談者が誰か分からないように特殊なガラスを用いたり、後ろからの角度で撮ったり、当時の番組作りが懐かしかったです。