銀座の夜の蝶を引き抜く請負人を描いた「夜の手配師」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024より

 

製作:東映

監督:村山新治

脚本:下飯坂菊馬

撮影:仲沢半次郎

美術:藤田博

音楽:八木正生

出演:梅宮辰夫 城野ゆき 稲垣美穂子 白木マリ 真理明美 沢たまき 南原宏冶 伴淳三郎

1968年4月11日公開

 

剣持秀夫(梅宮辰夫)はやくざの朝倉(南原宏冶)の女と寝たことが発覚して、朝倉をはじめ組員たちから手荒い制裁を受けました。それから数年して、秀夫は銀座でバーのホステスを紹介して手数料を稼ぐ、夜のスカウトに転職していました。

 

彼はバー「貘」のマダム留美(稲垣美穂子)から、新しいホステスを工面するよう依頼されると、別の店のホステスで愛人関係にある初枝(白木マリ)と一芝居うって、新人のユカ(真理アンヌ)に秀夫に関して興味を抱かせるよう誘導します。そして、ユカを「貘」に連れだした秀夫は彼女を鞍替えさせることに成功します。

 

更に、秀夫は「獏」で未知(真理明美)と嵐子(桑原幸子)にも目をつけます。初枝もキャバレー王の二階堂(伴淳三郎)をパトロンとして掴み、バー「ドンキー」のママの座に収まれば、新しいホステスを必要としており、いずれ引き抜こうと目論んでいたからでした。ところが、秀夫は留美と初枝が犬猿の仲であることを知らずに、No.1ホステスの未知を「獏」から引き抜いたことで、留美から恨まれる羽目になります。

 

その頃秀夫は、小料理屋で働くよし子(城野ゆき)に自分の本性を曝け出すほど好意を抱いていました。秀夫はよし子と世帯を持ち、彼女をママに据えてスナックを開業しようという計画をもっていました。しかし、よし子は常連客の佐伯(藤木孝)から求婚されている上に、秀夫も落ちぶれた朝倉から付きまとわれそうになり、おまけにスナックを買い取ろうにも資金が足りない状態。

 

そんな折、秀夫は留美から初枝を追い落とす算段を持ち掛けられます。秀夫は高額な報酬を条件に留美からの提案を受け入れ、二階堂が初枝の部屋にやって来る日を見計らって、彼女との情事の現場を見せつけるように工作します。工作は見事に当たり、留美との約束通り初枝を「ドンキー」のママの座から引きずり下すことに成功します。スナックの開店に必要な金を手にした秀夫は、よし子名義で店を譲渡する契約に漕ぎつけます。ところが、その場に朝倉が現れて・・・。

 

主人公が兄貴分のイロを寝取ってリンチが加えられる冒頭からして、従来のシリーズ作とは少しばかり趣きが異なっているのが感じられます。スケコマシの上、自分にとって得になると思ったら手段を択ばぬ梅宮辰夫のキャラクターは同じだったとしても、今までのドライな感じはやや薄れ、人間的な弱さや脇の甘さが見られます。

 

特に城野ゆき演じるよし子と接する時はそれが顕著に表れます。秀夫は留美、初枝、ユカに対しては騙しや裏切りは平気でも、よし子に関しては唯一恋愛感情を抱いています。そもそも、スケコマシ役の辰ちゃんが女に対して、結婚するまで最後の一線を越えないというのはあり得ないでしょう。どんだけ乙女かよ(笑)。

 

しかも、愛する彼女のために自分が罵られようと、あらゆる手段を用いてスナックの開店資金を工面する姿は涙が出てくるほど。その挙句、思いもよらぬ人物に足元を掬われ、シリーズ中最も立ち直れないほどのダメージを受ける結果となります。ただし、彼が散々水商売の女たちにしてきたことを思えば身から出た錆は免れず、更に言えば、他人の女を寝取った点からすると、意趣返しをされただけと考えることもできます。

 

少し変化をつけてきたこの映画も、女に酷い事をしてきたろくでなしが最後に報いを受ける点だけは、最後まで貫かれています。本作の秀夫は『夜の青春』シリーズの中では、最も悲惨な目に遭わされます。ただしどんなに裏切っても、初枝のように最後まで彼についてきてくれる女がいるだけマシ。最後に秀夫が女をスカウトする際の口説きの手口を見ると、懲りないバカと言うより、めげないボンクラと言ったほうが良いかもしれませんね。