深窓の令嬢を誘拐した女の目的は何か?「襲え!」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

「ORGASM」的偏愛ロマンポルノ より

 

製作:日活

監督:澤田幸弘

脚本:斎藤憐 斉藤信幸

撮影:山崎善弘

美術:渡辺平八郎

音楽:クリエイション

出演:宮井えりな 藤真琴 梓ようこ 堀礼文 大江徹 武井一仁 大河内稔 南寿美子

1978年4月15日公開

 

刑務所から出所してきたばかりの豊(武井一仁)、竜一(堀礼文)、真(大江徹)の3人は、ディスコで九条怜子(宮井えりな)という女性と知り合い意気投合します。彼らは酔いつぶれた怜子を部屋まで送っていき、彼女の乱れた姿に欲情をかきたてられ、竜一と真は玲子を犯してしまいます。

 

数日後、怜子は3人を呼び出し、強姦罪で訴えられたくなかったら、昭和鉱産の社長令嬢・河島久美子(藤真琴)を誘拐するよう話を持ち掛けます。3人は玲子の意のままに久美子を誘拐し、彼女の父・庄三(大河内稔)のヨットに監禁します。玲子たちは久美子の淫らな写真を送り、身代金5000万円を要求しますが、庄三は全く応じる気配を見せませんでした。

 

業を煮やした怜子は、更に過激な写真を送りつけ、漸く庄三をホテルの一室におびき寄せることに成功します。その部屋で庄三を油断させる罠を張り、ボーイに化けた竜一が身代金を奪います。

 

一方、河原庄三の秘書・杉田(本田博太郎)は、秘かに目にした久美子の写真から監禁場所をつきとめますが、豊と真に襲われてしまいます。その後、久美子は隙を見て警察署に飛び込み、彼女から事情を聞いた警官は豊と真を逮捕しようと二人を追います。その頃、身代金を手にした竜一は独り占めしようとするのですが・・・。

 

玲子が3人の若者を誘拐に引き込む手口が巧妙です。隙のある振る舞いをして、敢えて自身を襲わせるように仕向けた上で強姦の証拠を握り、否応なく犯行に加担させるように持っていきます。現場に落としていった豊の給与袋から職場の住所を辿り、そこから芋づる式に後の二人が何者かも分かるくだりは、理に適った展開をしています。

 

ただ、玲子が強姦の証拠として脅すには、豊の給与袋、徹のちぎれたペンダント、玲子の破れた衣服、医師の診断書だけでは弱い気もします。その一方で、3人はいずれも前科持ちのため、誘拐に協力せざるを得ない事情も抱えていて、その点は許容範囲とも言えます。

 

玲子が誘拐の真の目的をなかなか明かさないのは、興味を持たせつつ話を引っ張る上では巧かったですね。豊が玲子にも久美子にも一切手を出さないのは、単に気弱な性格だからなのか、もしくは同性愛者だからなのか?その辺りの判別は難しいです。久美子を誘拐した後に、彼女の父親のヨットを監禁場所に選んだのも目の付け所が良かったです。しかも、久美子の恥ずかしい姿を写真に撮る場合でも、場所が割れないように周囲を布で覆い隠す辺りも、細心の注意を払っています。

 

これで玲子たちには父親と交渉できる下地ができたのですが、娘の卑猥な写真を送りつけても、なかなか交渉に応じしようとしないのは、観終わってからも謎でした。普通は裸の写真を送りつけられた時点で交渉に応じそうなものですが、誘拐犯に手籠めにされる写真を見て漸く重い腰を上げるのは腑に落ちませんでした。

 

河原の秘書の杉田は、社長の様子がおかしいことに気づいており、郵便物を秘かに盗み見し、久美子の写真を目にして彼女が誘拐されたことを知ります。彼は社長の尾行を開始し、途中で久美子が監禁されている場所に気づき、単身その現場に向かいます。ここで首を捻るのは手籠めにされた写真を見ただけで、場所が特定できた事。写真は周囲が覆い隠されていた筈で、もし杉田にだけ分かる根拠があれば、それを具体的に示して欲しかったです。

 

この後、杉田は久美子を救おうとして監禁場所に行き、悲惨な目に遭わされます。ここも豊と真に襲われるのではなく、別の展開にしたほうがもっと面白くできた筈。それと言うのも、ホテルの一室に呼び出された河原が、娘と身代金の交換場所が窓に書かれたのを見て、いち早く警察に電話で通報したからです。その通報中に、河原は向かいのホテルの窓に映る情事に気をとられ、ホテルのボーイに化けた竜一にまんまと身代金を奪われるます。

 

このままの流れで話が進んで行けば、杉田が監禁場所に行ったことで、誘拐犯の一味として警察に疑われるという皮肉な結末の可能性もありました。この後、監禁場所に舞い戻った豊と真は警察に追われた末に死亡しているだけに、余計に説得力もありました。更に身代金を奪った竜一も独り占めしようとした結果、自転車で蕎麦を配達した店員とぶつかり、警察に逮捕されており、ここを少しばかりアレンジして彼も亡き者にすれば、ヒロインがまんまと金をせしめ、真相は闇に葬られたままという結末になってもおかしくはなかったですね。

 

結局犯罪は引き合わないという妥当な結末になりましたが、それでも玲子がめげずに再び協力者を物色するところで終わるのは、彼女の反骨心が窺えて、落としどころとして悪くなかったように思います。