幼馴染に惚れていた車掌が彼女の弟を捜しあてたら・・・「喜劇 初詣列車」を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024 より

 

製作:東映

監督:瀬川昌治

脚本:舟橋和郎

撮影:西川庄衛

美術:北川弘

音楽:河辺公一

出演:渥美清 中村玉緒 佐久間良子 川崎敬三 城野ゆき

   楠トシエ 西村晃 財津一郎 小松政夫 左卜全

1968年1月3日公開

 

国鉄の車掌を務める上田新作(渥美清)は、ある日列車の中で幼な馴染みの美和子(佐久間良子)と再会します。新作は同僚の野々宮(西村晃)と行ったクラブで、酔っ払いに絡まれている美和子を救い、彼女が芸者だったことを知ります。幼い頃から新作の憧れの的だった美和子は、新潟地震で両親を失い、上京後に行方不明になった弟の研吉(小松政夫)を案じていました。新作はそんな美和子のために、非番の日に研の行方を突き止めようとします。

 

ところが、事情を知らない妻の幸江(中村玉緒)は、新作の不審な行動を怪しみ、浮気をしているのではないかと疑い出します。幸江は夫の弟の夏雄(川崎敬三)に素行調査を依頼し、事をはっきりさせようとします。一方、新作は研吉と職場で一緒だった房子(城野ゆき)と会い、研吉がフーテンになったことを知ります。彼は手掛かりを求め、前衛芸術家(財津一郎)のアトリエ、トルコ風呂、深夜スナックなどを訪ね歩きます。

 

その甲斐あって、新作は漸くフーテン姿の研吉を探しあてます。彼は気ままなフーテン暮しをする研吉を理解するため、自分もヒッピーの格好をして行動を共にしながら、研吉の現在の生活を改めさせようと説得します。そんな折、研吉の仲間たちは新作を刑事と誤解し、彼にクスリを混ぜた飲み物を飲ませます。幸江はラリった状態で帰宅した新作に驚き、てっきり夫が狂ったと思い込み、野々宮夫妻や精神科医(柳沢真一)を自宅に呼ぶのですが・・・。

 

前作では渥美清演じる主人公が城野ゆきと結ばれ、目出度く赤ちゃんまで授かって終わったのに、本作では中村玉緒がしっかり妻の座に収まっています。間を置かずにシリーズ作品を観ると、こういう矛盾するような些細な事も気になってきます。ただ、量産体制のプログラムピクチャーでは、その辺りの細かい箇所はあまり考えずに、ユルく製作されていたことが判ります。

 

渥美清主演の『列車』シリーズ3作のうち、「急行列車」「団体列車」に比べると、本作は話の面白さという点ではやや落ちます。そもそも妻に浮気と疑われるパターンはありがちな話で、そこをどう工夫を凝らしていくかが作り手の腕の見せどころなのに、先輩の西村晃にまでとばっちりが及ぶのを除いては、巧く行っていたとは思えません。

 

ただし、60年代終わり頃のカウンターカルチャーの一端に触れられる点では、子供ながらにその時代を知っている者にとっては興味深く見られました。フーテンと呼ばれた若者の生態、ゴーゴークラブ、グループサウンズの影響を受けた女性だけのバンド、サイケデリックなアートは勿論当時の流行を反映していますし、緑とオレンジを基調とした115系の上越線、夜のネオン街などは当時を知る映像資料としても価値があります。

 

この映画では大映のイメージの強い川崎敬三が出演しており、女性がコロリと参る二枚目役。ただし、現在の目から見るとそれほどのイケメンには見えません。それでも、要領よく立ち回る姿は植木等の『無責任男』シリーズの主人公を思わせ、結構目を惹くキャラクターでしたね。逆に佐久間良子は主人公のマドンナ的存在であるにも関わらず、あまり見せ場はなく、彼女が後に東映を離れたのも頷けました。