未知の生命体が音に反応して大都市の人間を襲う 「クワイエット・プレイス:DAY1」を観て | パンクフロイドのブログ

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クワイエット・プレイス:DAY1 公式サイト

 

チラシより

喧騒の大都市・ニューヨーク。唯一の家族である猫と暮らす1人の女性・サミラの平穏な日常は、突如として空から隕石とともに飛来した、音を立てるものすべてに襲いかかる“何か”によって一瞬で破壊されてしまう。呼吸の音さえ逃がさない“何か”の群れに支配された街に、生き残る術など存在するのか。そして、サミラはいかに“音を立ててはいけない”というルールに辿り着くのか。“音を立てたら、即即死。”のサバイバルが今、始まる。

 

製作:アメリカ

監督・脚本:マイケル・サルノスキ

原案:ジョン・クラシンスキー マイケル・サルノスキ

撮影:パット・スコーラ

美術:サイモン・ボウルズ

音楽:アレクシス・グラプサス

出演:ルピタ・ニョンゴ ジョセフ・クイン アレックス・ウルフ ジャイモン・フンスー

2024年6月28日公開

 

前作に登場した人物もいますが、基本過去の2作とは繋がりがなく、舞台を田舎町からニューヨークに移して物語を一新しています。とは言え、音を立てれば未知の生命体が襲いかかってくると言う概念は変わっておらず、マンネリになりがちな3作目にどのような変化をつけるかに注目していました。

 

前2作は家族で行動する物語だったため、必然的に大人が子供を護る形になっていて、同時に生への執着心も強くなっていました。それに比べると本作は、ヒロインのサミラが難病を抱えていることもあって、生きる意欲を失っているようにも見えます。グループセラピーの場では醒めた振る舞いをし、時には辛辣な発言をして参加者の眉を顰めさせます。

 

彼女が気にかけているのは介護猫とお目当てのピザ屋に行くこと。特に、怪物に襲われたにも関わらずそのピザ屋に行くことに執着するのは異常で、店に行ってもピザは食べられないだろうとツッコミを入れたくなります。後々、サミラがその店に固執する理由は明らかになるのですが、少々常軌を逸しています。

 

サミラは施設の患者たちとマリオネットのショーを見物した帰途に、いきなり怪物たちの襲撃に巻き込まれます。この襲撃は予兆を匂わせてはいたものの、2作目同様に臨場感に溢れた見せ場になっています。舞台をニューヨークのマンハッタンに移した効果は、スケールの大きさだけではなく、特殊な地域性にも表れています。

 

マンハッタンはハドソン河の中州にあり、他の地域とは橋で結ばれています。この映画で良くも悪くも感心するのは、政府がマンハッタンに架かっている橋を全て破壊し、被害を最小限に抑えようとするくだり。怪物は水に弱く泳げない体質のため、マンハッタンに取り残された人々は孤立する反面、怪物が他の地域へ侵入するのを食い止められるメリットがあります。

 

橋を破壊した代わりに船を出すから、川岸まで自力で辿り着けという発想は、自己防衛、自己責任の徹底しているアメリカらしいとも思えます。日本ではそもそも橋を破壊する発想すら思いつかないでしょう。ただし、川岸まで辿り着いても、船を待っている間に怪物は襲って来ないのかとツッコミたくはなりますが・・・。

 

サミラは最初の襲撃で生き残ったものの、川岸に向かう人々とは逆の方向に歩み始めます。その途中、浸水で溺れかかったエリックと遭遇します。彼は単独で行動するのが心許ないのか、サミラについて行こうとします。サミラからすれば、エリックがアメリカ留学をしている良識のあるイギリス人であっても、異常事態の状況で見も知らぬ男と行動を共にするのは抵抗があります。エリックはサミラにとって必要な男と証明しなければならず、彼女が必要とする薬品を入手すべく、怪物が徘徊する街を通り薬屋に向かいます。

 

怪物は目が見えない代わりに、音に敏感に反応する特性がある一方、川のせせらぎや雷鳴など自然界で発生する音には反応しません。二人は怪物の弱点を利用しながら、数々の困難を潜り抜け、漸く川岸まで辿り着きます。ここから先は言わぬが花でありますが、サミラはエリックの誠意に見合う男前の決断で応えるとだけ言っておきましょう。

 

3作目にあたる本作は、ヒロイン側に多少変化をつけたものの、基本路線は変わっていません。その一方でシリーズを継続させるには、思い切った方向転換に迫られていると感じました。いっその事、『男はつらいよ』のように世界各地を回りながら、マンネリの極致を目指すのならば、それはそれで面白いかもしれませんが(笑)。