前科者の女が再起を図るたびクズ男に邪魔されて・・「続 おんな番外地」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

OIZUMI 東映現代劇の潮流 2024 より

 

製作:東映

監督:小西通雄

脚本:舟橋和郎

撮影:星島一郎

美術:北川弘

音楽:富田勲

出演:緑魔子 城野ゆき 弓恵子 春川ますみ 原知佐子

        若水ヤエ子 荒木道子 今井健二 田中春男

1966年5月3日公開

 

平山妙子(緑魔子)は3年の刑期を終えて、栃木刑務所を出所しました。彼女は保護観察官(高橋とよ)の手配したアパートで間借りしながら、刑務所内で免許を取得した美容師で身を立てようとします。ところが、妙子と同房だった郁子(城野ゆき)の頼みで、郁子と愛人関係にあった長谷川(今井健二)の元を訪れたのが運の尽き。

 

妙子は、郁子がいくら手紙を出しても一向に返事の来ない長谷川の様子を伺うだけだったのに、長谷川は妙子に目をつけ、以後彼女にまとわりつくようになります。妙子が就職し落着こうとするたびに、長谷川が告げ口して解雇されてしまうという繰り返し。

 

そんなある日、妙子は刑務所時代の仲間照代(若水ヤエ子)に会い、同じ仲間のフミ(清川玉枝)が経営している小料理屋に行きます。そこは刑務所仲間たちのたまり場で、派出婦になった千代(浦辺粂子)、ストリッパーの桃子(春川ますみ)などがたむろしていました。妙子は自分の店を出すため、フミから黒江(田中春男)を紹介してもらいます。

 

それから間もなくして、黒江の尽力で妙子の美容室が開店します。妙子も最初のうちは、パトロンとその愛人という関係で割り切っていましたが、次第に情が移り黒江を愛するようになっていました。ところがその矢先、長谷川が再び妙子の前に現われ、彼女を脅迫してきます・・・。

 

本作は「おんな番外地 鎖の牝犬」の続編で、女子刑務所における描写は小さく、出所後のヒロインの生活が主に描かれます。彼女の受難の元凶になるのが、今井健二演じる長谷川。今井は善人役も良いのですが、やはりロクデナシの男を演じさせると非常に落ち着きます。妙子にしつこくつきまとうクズっぷりが炸裂しており、その人間性が最低で最高。今井は強面を活かした暴力的な悪役に定評がある一方、この映画のような忌み嫌われる役柄もかなり合っています。

 

このクズの脅しに妙子も負けてはおらず、長谷川の顔にハイボールをかける場面は胸の梳く想いがします。また、約束を反故にしてヤリ逃げしようとする髪結いの亭主の沢彰謙に対して、威勢のいい啖呵を切るところも、緑魔子ならではのキャラクターを活かした芝居に痺れます。

 

妙子はせっかく仕事を得ても、元受刑者であることがばれて馘にされます。就職が駄目ならば結婚という発想が如何にも昭和らしく、保護観察官の手配によって妙子はお見合いをさせられます。その相手が由利徹なのは笑えます。しかも、がさつでおしゃべりな上に、妙子以上に前科があることが判明します。妙子も前科者という引け目がありますから、堅気の人間ならば多少の事は我慢できても、同じ前科者となると話が違ってきて、結婚話はご破算になります。

 

彼女は就職もままならず、縁談も失敗に終わり、クサクサしていたところ、刑務所仲間だった照代と再会します。前作に登場したメンバーが集まり、妙子の出所祝いと同窓会を兼ねた飲み会が開かれ、そこでは妙子も自分の居場所であるかのような安心感を味わいます。

 

酒の席では、就職が無理ならばいっその事自分の店を持てばいいという話になり、小料理屋の女将のフミの伝手でパトロンになってくれる黒江を紹介されます。二号となる代わりに、美容室の開店資金を提供してもらうことで、両者の思惑は一致します。ところが、またしても長谷川に居場所を嗅ぎつけられ、妙子の運命や如何に?という具合に、一難去ってまた一難と苦難の物語が繰り広げられます。

 

終盤に長谷川の情婦だった郁子が脱走したことで、凡その結末は予測できますが、最大の癌となっていた人物を排除できても、ヒロインの道のりは険しいことを匂わせて映画は終わります。刑期を終えて更生しようとしても、世間の風は冷たい事を思い知らされると同時に、緑魔子を徹頭徹尾甚振るような風俗ドラマであることが強く印象に残りました。