1作目の並行世界?「柳生武芸帳 独眼一刀流」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

近衛十四郎の柳生武芸帳 より

 

製作:東映

監督:松村昌治

脚本:高橋稔

原作:五味康祐

撮影:脇武夫

美術:富田次郎

音楽:阿部晧哉

出演:近衛十四郎 松方弘樹 東千代之介 宮園純子

         品川隆二 安井昌二 花房錦一 宇佐美淳也 山形勲

1962年9月16日公開

 

“柳生武芸帳”は水月、浮舟の二巻からなり、水月の巻は江戸の柳生邸に、浮舟の巻は京の五条中納言邸に置かれていました。柳生武芸帳は柳生新蔭流の極意書として知られていますが、天下騒乱の原因にもなろうという機密文書でもありました。そのうちの浮舟の巻が浮月斎一味に狙われ、父親を殺された清姫(宮園純子)が浮舟の巻を尺八に仕込んで江戸へ向かいます。

 

その頃、江戸城内では、大老酒井雅楽頭(佐藤慶)が柳生十兵衛(近衛十四郎)を呼びつけ、武芸帳の二巻を差し出すよう命じます。一方、江戸へ向かう途中、清姫は浮月斎一味に襲われ、川に尺八を投げ込んだ後、崖から突き落とされます。その尺八を拾ったのが霞の千四郎(松方弘樹)。

 

千四郎の祖父は、山田浮月斎(山形勲)、柳生石舟斎と共に、かつて家康の下で働いていた忍者でした。ところが、千四郎の祖父が石舟斎に敗れたのをきっかけに、将軍家御指南役が代々柳生家に受け継がれたのでした。千四郎は浮月斎に手を組もうと持ち掛けられますが、拒否したために危うく殺されかけます。そこに十兵衛が現れ、千四郎は命を取り留めます。

 

一方、清姫は千四郎の妹梨花(三原有美子)に助けられ、千四郎と彼の弟小弥太(花房錦一)と共に江戸に向かいます。やがて、十兵衛は浮舟の巻を奪った浮月斎に対し、水月の巻を賭けて左京ケ原閻魔堂で対決することになります。卑怯な手を使う浮月斎とその一味に、さすがの十兵衛も苦戦します。

 

その対決を見守っていた千四郎は、浮月斎のあまりにも汚いやり口に義憤を覚え、堪らず十兵衛に加勢します。十兵衛は千四郎とその弟や妹が浮月斎一味に狙われるのを危ぶみ、大久保彦左衛門(杉狂児)の元に彼らを預けます。そこには清姫が居て、千四郎の恋心が再燃します。

 

十兵衛は浮月斎の裏に黒幕が居ると睨み、それを炙り出すために、深夜、家光(東千代之介)の寝所に忍び入って武芸帳の秘密を告げ、家光に手渡すことを約束します。ところが、その間に柳生邸が浮月斎一味に襲われ、水月の巻を奪われてしまいます・・・。

 

物語自体は1作目をなぞったような内容で目新しいものはありません。1作目との違いと言えば、十兵衛が隻眼の設定になっていること、千四郎と清姫の恋愛話が絡んでくる点、浮月斎を操る黒幕が酒井雅楽頭であることを終盤に明かしている点、配役が異なっている位でしょうか。

 

ただ、1作目を直近で観ている者からすると、配役に関しては少々戸惑いを覚えざるを得ません。松平伊豆守(徳大寺伸⇒安井昌二)、大久保彦左衛門(堺駿二⇒杉狂児)、柳生但馬守(北龍二⇒宇佐美淳也)、清姫(花園ひろみ⇒宮園純子)、山田浮月斎(原健策⇒山形勲)を別の役者が演じているのはまだしも、十兵衛の弟又十郎が品川隆二なのはさすがに「えっ!」と思ってしまいました。1作目と2作目では十兵衛の命を狙う霞の多三郎を演じていただけに、どうしても違和感が拭えませんでした。

 

その一方で、本作の目玉は何と言っても、近衛十四郎と松方弘樹による本格的な親子共演でしょう。祖父が不遇をかこつ原因となった柳生一族に一矢報いようとする千四郎が、十兵衛と接していくうちに、彼の剣の力量と器の大きさに適わないことに気づき、自分も腕を磨いて乗り越えようとする姿は、剣劇スターの父親の背中を見ながら、自分も同じ道を歩み精進しようとする松方弘樹の実人生とも重なり胸を掴まされます。

 

本作の近衛の殺陣の場面は控えめですが、それでも息子の松方と一緒に疋田流の一派と剣を交じえる場面にはグッときます。また、近衛&松方親子共演以外にも、東千代之介の将軍家光は風格と威厳があり、佐藤慶も裏で暗躍する黒幕に相応しく、十兵衛と伊豆守をねちっこくいたぶる芝居は見ものでしたよ。