破天荒な二人の良かれと思った行動が不幸をもたらす「まむしの兄弟 刑務所暮し四年半」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

娯楽映画職人の矜持 野上龍雄 遅すぎた再発見 より

 

製作:東映

監督:山下耕作

脚本:野上龍雄

原案:斯波道男

撮影:山岸長樹

美術:富田治郎

音楽:広瀬健次郎

出演:菅原文太 川地民夫 渡瀬恒彦 三益愛子 浜木綿子

1973年2月17日公開

 

 

刑務所を出所したばかりのまむしのゴロ政(菅原文太)は、弟分の不死身の勝次(川地民夫)に迎えられ、早速神戸へ繰り出します。ところが、政がバー“ユキコ”のママ、倉石優子(浜木綿子)にひと目惚れした挙句、優子の4歳になる娘を、名古屋で水上生活を送る祖母のたか(三益愛子)から取り戻すことを安請け合いしたため、二人は名古屋へと向かいます。

 

名古屋へ着いた二人は、早速、キャッチガール(ひし美ゆり子)に引っ掛かり、暴力バーで飲み食いした末に法外な料金を請求され、マスターの真吉(渡瀬恒彦)たち相手に大暴れします。また、トルコ風呂に行けばパツキンの外国人を指名したのに、馴染みの花江(三島ゆり子)と洋子(女屋実和子)が出てきて、ほうほうのていでその場を立ち去ります。

 

二人は欲求不満の捌け口を、クラブの外国人のレズビアンショーに向けると、従業員たちに痛めつけられ放り出されると言った体たらく。その二人を助けてくれたのが、意外にもたかでした。更に、政と勝次が暴力バーで暴れた真吉がたかの息子であることも知ります。真吉のバーは芝江組が目をつけ、ショバ代を捲き上げようと様々な嫌がらせを受けていました。

 

そんなある日、優子が神戸から直々にユキコを引きとりに来ます。しかしたかは頑強に拒否をします。思いあまった優子は、ユキコの父親である芝江組々長の多三郎(小松方正)に会いますが、冷たく突っぱねられた挙句、組員たちに凌辱されてしまいます。和服の乱れた娘を目にしたたかは、自分が依怙地になっていたことを悔いるのでした。

 

芝江の優子への仕打ちに怒った政と勝次は、何度も芝江組に嫌がらせを仕掛けるうちに政が警察に捕まってしまいます。一方、芝江組の脅迫を受けて、優子、ユキコ、たか、真吉らは神戸へ逃げ出そうとしますが、追って来た手下に真吉が殺されます・・・。

 

映画の冒頭における政が出所する際、遠藤辰雄演じる刑務官との遣り取りだけで、このシリーズのファンは一気に心を掴まれます。後はいつも通り、政と勝次による派手で度を越した暴れっぷりが堪能できます。

 

このシリーズは相棒映画である一方、「男はつらいよ」「トラック野郎」同様に、愛しのマドンナとの仲が叶わない共通項があり、本作でもその路線は踏襲されています。特に優子が政に芝江への強請は止めてくれと頼んだのに、芝江組に嫌がらせを続けた挙句、弟の真吉まで殺された結果になったのをなじられる場面は、彼女に理があるだけに、優子に惚れた男としては辛いものがあります。

 

その反面、勝次が芝江から100万円の報酬で、標的が誰かも知らされずに罠を仕掛けた末に、危うく兄貴分がオダブツになりかける笑いもあって、硬軟織り交ぜた山下耕作監督の演出が光ります。報酬の100万円を1000万円に増やそうと、公営ギャンブルにつぎ込んだ挙句オケラになる顛末も、定番とは言え観る者の期待を裏切りません。

 

政と勝次のコンビは義理人情に縛られないのが強みであり、直情型のためあまり怒りを溜め込むタイプではありません。それでも真吉が無残に殺されたことによって一気に爆発します。ここから芝江組に殴り込みをかけるくだりは、この映画が公開された頃でも、任侠映画の名残があったことを窺わせます。

 

二人が芝江組に殴り込みをかける場面でも、パトカーを突っ込ませてしまう辺りが、破天荒な行動をする二人の面目躍如と言ったところで、ドスやマシンガンを手に暴れ回る姿は、毎度の事ながら爽快感がありました。