死期の迫った肥満症の父親が娘との関係を修復しようとする「ザ・ホエール」を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

ザ・ホエール 公式サイト

 

映画.comより

40代のチャーリーはボーイフレンドのアランを亡くして以来、過食と引きこもり生活を続けたせいで健康を損なってしまう。アランの妹で看護師のリズに助けてもらいながら、オンライン授業の講師として生計を立てているが、心不全の症状が悪化しても病院へ行くことを拒否し続けていた。自身の死期が近いことを悟った彼は、8年前にアランと暮らすために家庭を捨ててから疎遠になっていた娘エリーに会いに行くが、彼女は学校生活や家庭に多くの問題を抱えていた。

 

製作:アメリカ

監督:ダーレン・アロノフスキー

脚本・原作:サミュエル・D・ハンター

撮影:マシュー・リバテック

美術:マーク・フリードバーグ ロバート・ペイゾハ

音楽:ロブ・シモンセン

出演:ブレンダン・フレイザー セイディー・シンク ホン・チャウ タイ・シンプキンス

2023年4月7日公開

 

ダーレン・アロノフスキーの映画を観るのは「ブラック・スワン」以来でした。「ブラック・スワン」はヒロインがダークサイドに落ちていくのが見どころでしたが、こちらは主人公の生きるのをあきらめようとする危うさがあります。話自体は恋人の死から立ち直れないまま、肥満症で引き籠り状態にある中年男を軸に展開され、気の滅入る話になります。また、過去にやらかしをした父親が、疎遠になっている娘との関係を修復しようとする点では、アロノフスキーの「レスラー」をも思わせます。

 

とにかく激太りした主人公を演じるブレンダン・フレイザーの特殊メイクを施した体型はインパクトが強く、映画が開始してから暫くはそちらの方にばかり目が向きました。部屋に移動することもままならず、当然外出もしません。学生への講義もオンラインでの授業になっていて、自分のおぞましい姿を人前に晒したくないためか、パソコンの画面は自分の箇所だけ黒くなっています。チャーリーが太った原因となる過去と向き合えるかが、この映画の見どころのひとつであり、パソコン画面の黒い箇所が最後にどうなるかは凡そ見当がつくでしょう。

 

彼には8歳の時に別れたきりの娘エリーがいて、彼女の抱える問題に関して力になろうとします。しかし、エリーは父親が家族を見捨てたことにわだかまりがあり、チャーリーが手を差し伸べようとすることを拒絶します。彼女の振る舞いは冷ややか且つ辛辣であり、父親だけでなく宣教師のトーマスにも向けられます。トーマスはチャーリーを信仰で救おうと試みるのですが、彼の事を、宗教を過信する思い上がりのように描くのが面白かったです。

 

チャーリーには時折死への願望が見受けられ、看護師のリズが再三医師に診てもらうよう促しても、決して病院に行こうとはしません。発作が起きた際には、手近に居る人物にメルヴィルの「白鯨」を論じた文章を読んでもらうことで気を鎮めています。この文章を誰が書いたのかは、後ほど明らかになります。本作も「レスラー」同様にラストは観客に想像を委ねます。「レスラー」では見事にキメてくれましたが、果たしてこの映画は? 微妙でしたね・・・。