結婚式を控えた花嫁が車で轢いた男と逃避行「セックス・ライダー 濡れたハイウェイ」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

日活ロマンポルノ50周年 私たちの好きなロマンポルノ より


 

監督:蔵原惟二

脚本:浅井達也

撮影:山崎善弘

美術:川原資三

音楽:真田勉(坂田晃一)

出演:田中真理 吉沢健 瀬戸ユキ 高橋明 梅治徳彦

1971年12月29日公開

 

結婚式を明日に控えた美奈(田中真理)は、横浜市街のラブホテルで昔の恋人尾崎(滝波錦司)と結婚前のSEXに耽っていました。その帰り道、ワゴンを運転していた美奈が若い男(吉沢健)を轢いてしまいます。同乗の尾崎は事故に関わりあいになるのを嫌い、その場を立ち去ってしまいます。途方にくれる美奈は横たわる若い男を後部のシートに引きずり込み、湖へとワゴンを走らせます。美奈は最後の力をふりしぼり、男をボートに乗せて沖へ向って漕ぎ、水中へ突き落します。

 

美奈は岸に戻りますが、一部始終を見ていたハンター(高橋明)が、そのことをネタに彼女の身体を奪おうとします。美奈は林の中を必死で逃げますが、たちまち追いつかれ組み伏せられてしまいます。その瞬間、ハンターの前に水中に投げ込まれたはずの男が立ち塞がります。男はハンターと揉み合ううちに、猟銃を奪い射殺してしまいます。その男亮は、危うく殺されそうになったにも関わらず美奈に惹かれ、彼女も彼に反撥しながらも、一緒にいるうちに結婚式を始め先の事はどうでも良くなります。亮は運転しながら美奈を求め、彼女も彼に応じ二人は絶頂に達します。その瞬間・・・。

 

美奈は結婚式前日に元カレの尾崎とラブホで密会するだけでも如何なものかと思うのに、更に一戦交える前にヤクをキメたり、結婚後も関係を続けることを匂わせたり、花嫁としてあるまじき行為をします。しかも、尾崎はアノ時の美奈の喘ぎ声を録音する趣味の悪さ。この録音テープは後の場面にも使われ、格好のBGMとなって流れます(笑)。

 

事程左様に感じの悪いカップルで、二人が苦境に陥っても全く同情する気にはなれません。また、尾崎は美奈が人を轢く事故を起こした際に、そのまま逃げることを促し、更に彼女とは単なる遊び相手だったことを明かした上で、肝心の時に逃げ出す最低のロクデナシであることを証明します。

 

こいつに比べると車に撥ねられた亮はカワイイもの。美奈の色香に迷い、そのまま死体のフリをしているうちに、彼女に湖に投げ込まれてしまうボンクラ野郎。更に美奈がハンターに犯されそうになると、彼女を助けるべく男と取っ組み合った末に猟銃で射殺までします。さすがに何発も弾を撃ち込むのは遣り過ぎですけどね。

 

また、美奈と一緒にいるうちに辛抱堪らず、無理矢理彼女の身体を奪おうとした際も、美奈の涙にほだされ止めてしまうのです。私なぞは亮が轢き逃げをネタに美奈を強請る展開を予想していただけに、この男の行動は良い意味で裏切られましたよ。

 

亮は元々オートレーサーでしたが、レース中の事故で恐怖心が芽生え、そのことが原因で選手を断念し、現在は博奕で身を持ち崩しています。また、少年の頃の場面も出て来て、亮が不遇な生活を強いられていたことも匂わせます。彼の母親は住居を兼ねた船で売春をしており、モノクロの映像と相まって、後に小栗康平が監督した「泥の河」を連想させます。

 

映画自体は、「俺たちに明日はない」と「バニシング・ポイント」を足したような、遅れてきたアメリカンニューシネマの様相を呈しています。花嫁の道を断たれた女と目的のない生活を送っている男が一瞬の快楽のために破滅へと向かう物語は、学園紛争後の気怠い空気を纏った時代色が表れていました。