恐怖のボンタン狩り 「ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎哀歌」を観て | パンクフロイドのブログ

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私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

池袋 新文芸坐

追悼・黒澤満 より

 

 

製作:東映

監督:那須博之

脚本:那須真知子

原作:きうちかずひろ

撮影:森勝

美術:大嶋修一

音楽:矢野立美

出演:仲村トオル 清水宏次朗 中山美穂 宮崎ますみ 中野みゆき

        地井武男 木之元亮 浅野ゆう子 成田三樹夫 草薙幸二郎

1986年8月9日公開

 

愛徳高校のヒロシ(清水宏次朗)とトオル(仲村トオル)は、不良の数だけは多い城東工業高校の連中と揉めていました。折しも、女子高に転校したはずの泉今日子(中山美穂)が駅の改札口から出てきて、城東工業の不良たちに追われる二人を目撃。ヒロシとトオルは城東勢をたたきのめした後、今日子との再会を祝福します。その後、白百合女学院13代総番のマンモスお妙が、二人の舎弟の均太郎(上野隆彦)に恋したり、5中の鬼姫こと翔子(中野みゆき)がトオルの愛人になると宣言してつけ回してきたり、立花商業の菊永(石井博泰)が愛徳高校の順子(宮崎ますみ)に一目惚れしたりと平和な日々が続いて行きます。

 

一方、城東工業のテルこと藤本輝男(白井光浩)は、同じ学校の山田敏光(土岐光明)に頭が上がらず、鬱屈とした毎日を送っていました。敏光の喧嘩の強さは、少年課の刑事である鬼島(地井武男)も認めるほど群を抜いています。その鬱憤を晴らすように、テルは後輩と共に他校の不良たちへのボンタン狩りを始めます。更に、中学時代からトオルに恨みを持つテルは、大勢でトオルのボンタンをむしり獲った挙句リンチを加えました。滅茶苦茶にやられたトオルは落胆し、シャバ僧になったとヒロシからも見放されます。

 

ところが、そのヒロシもタイマン勝負で敏光にやられてしまいます。落ち込む二人は今日子にまで当り散らす始末。数日後、先輩の新田(木之元亮)の言葉に励まされ、二人はようやく元気を取り戻します。ある日、今日子から二人に電話がかかってきます。テルが二人に謝りたいので、海辺のドライブインまで出向いて欲しいという内容でした。ところが、テルは今日子を利用して、二人をおびきだそうと企んでいたのです。ヒロシとトオルはそのことを承知で、城東勢が待ち受けるドライブインに殴り込みをかけるのですが・・・。

 

何を隠そう、原作のコミックを全巻持っています(笑)。でも、映像作品を観るのは今回の特集が初めて。原作の「ビー・バップ」の後期は、ヒロシとトオルのコンビが後ろに引っ込んで、舎弟のノブオ、ジュン、シンペーを主役にした話が多くなり、ほのぼのとした雰囲気が漂っていましたが、初期の頃は尖がった不良性を前面に押し出して、かなりエグい描写もありました。本作は、初期の原作のピリピリしたムードを持ち込んでおり、それでいて場を和ませる笑いも随所に挟み込まれるので、原作ファンとしては十分満足。

 

ただし、原作を読んでいる者からすると、登場人物のキャラクターと役者のイメージが微妙に合っていない部分も見受けられます。ヒロシとトオルは結構剽軽な面があるのですが、清水宏次朗と仲村トオルにそこまで求めるのは酷かも。泉今日子役は、いっその事キョンキョンにすればいいじゃんと思っていましたが、ミポリンの可愛さも捨てがたく、これはこれでいいですよ。宮崎ますみのツッパリ具合は十分合格点ではあるものの、欲を言えばもう少し意地悪さが欲しいところ。

 

地井武男の鬼島刑事も十分原作の雰囲気に合っていますが、この映画ではチョイ役だった成田三樹夫の鬼島刑事も見てみたかったです。松田優作主演の「探偵物語」ではコミカルな服部刑事の実績があるだけに、マンガチックな芝居はうってつけのように思います。そんな中で、立花商の菊永を演じた石井博泰は、原作のキャラクターに一番嵌っていました。映画と漫画は別物と割り切れば、キャスティングに関しては許容範囲と言えるでしょう。

 

シリーズ2作目の本作は、城東工業のテルによるボンタン狩りの話を中心に据えて、他の挿話を盛り込みながら話を膨らませています。きうち自身、原作のコミックの中で、東映ファンを匂わすことを描いているせいか、原作者の意気に応えるように、映画も細かいくすぐりを入れています。映画館の駐輪場で手持ち無沙汰にしているトオルからカメラをズラすと、「暴動島根刑務所」と「北陸代理戦争」の2本立てのポスターをさり気なく映しているのはほんの一例。クライマックスは、海辺のドライブインでのアクションシーン。店一軒破壊するほどの暴れっぷりが清々しいです。「不良番長」シリーズでも料亭にトラックを突っ込ませる場面があったように記憶しますが、80年代でもその位の元気があったことを嬉しく思いました。