話のユルさがタカ&ユウジには似合う 「またまたあぶない刑事」を観て | パンクフロイドのブログ

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国立映画アーカイブ

映画プロデューサー 黒澤満 より

 

 

製作:東映 日本テレビ

監督:一倉治雄

脚本:柏原寛治 大川俊道

撮影:藤沢順一

美術:小林正義

音楽:志熊研三

出演:舘ひろし 柴田恭兵 浅野温子 仲村トオル 中条静夫 木の実ナナ

        伊武雅刀 宮崎美子 ベンガル 山西正道 片桐竜次 有川博 赤井英和

1988年7月2日公開

 

港署の鷹山(舘ひろし)と大下(柴田恭兵)は企業経営者の長峰由紀夫(伊武雅刀)を捜査していました。長峰は若き財界人としての表の顔がある反面、非合法ビジネスに手を染めている疑いがあったからです。ある夜、二人は長峰の息のかかった麻薬密売人・緒方充(飯島弘章)を逮捕しますが、長峰の顧問弁護士・矢野(有川博)が港署を訪れ、証拠不十分で釈放されてしまいます。

 

その直後、緒方が鷹山たちに電話で保護を求めて来ます。ところが、電話中に緒方は何者かに射殺されます。緒方は今わの際に「爆破」という言葉を残すものの、それが何を意味するのか二人には見当もつきません。そこで鷹山と大下は、長峰の密着取材を行っているルポライター・萩原博美(宮崎美子)に近づき、情報交換の協力を求めます。

 

そんな折、港署管内で名門幼稚園の園児全員が通園バスごと拉致される誘拐事件が発生します。人質の園児には国家機密法案反対派の急先鋒と言われる代議士・沢口の実子もいました。港署は人質の解放を優先して、身代金の受け渡しに応ずるものの、身代金運搬役の警備員に実行犯グループが紛れ込み、まんまと金を奪われてしまいます。園児たちは無事に救出されたものの、誘拐事件と緒方の言った爆破の関連が掴めずにいました。

 

その日の夜、萩原博美からの情報で、誘拐事件の実行犯グループに長峰の手下・佐久間(片桐竜次)がいたことが判明し、二人は佐久間の泊っているホテルに出向きます。ところが、そこで銃撃戦となり、佐久間は倉庫に逃げ込みます。鷹山と大下は佐久間を追いつめたものの、落とし穴に落とされた挙句、佐久間から各自1億円の買収を持ち掛けられます。

 

二人は試しにその話に乗ってみますが、受け取り場所には山下署が待ち伏せしており、同僚の町田透(仲村トオル)の協力で辛くも二人はその場から逃走します。それでも、鷹山は懲りずに、矢野弁護士の事務所に赴きます。ところが、事務所で何者かに襲われた上に、意識を取り戻した時には、目の前には矢野の死体が・・・。その上、山下署が現場に踏み込んだことで、鷹山は犯人に仕立て上げられてしまいます。

 

「あぶない刑事」はテレビドラマをチラ見した程度で、映画版は、実は1本も観ていませんでした。それでも、港署の主要刑事のキャラクターは大体把握しており、いきなり映画版の2作目を観ても、あぶデカの世界に入って行けました。昨今のシリーズものとは違い、1作目から観ていなくても楽しめるのが、東映娯楽映画の美点のひとつ。尖り過ぎるほどのアクション全開の「バイバスト」を観た後に本作を観ると、その温度差の違いを実感します。

 

でも、ユルい感じがこの映画には合っています。「バイバスト」が直球のみの勝負だったのに対し、本作は変化球を交えて緩急をつけた演出で楽しませます。タカとユウジの間で交わされる軽い会話も、バブル全盛の時代には似合っています。加えて、浅野温子と仲村トオルを、お笑いのボケにしているのも功を奏しています。二人とも主役を張れる美女と二枚目なのに、敢えてバカを演じ切るのがいいですねぇ。

 

その後、W浅野としてトレンディドラマに引っ張りだこになる浅野温子が、ドリフ並みのギャグをかますなんて最高じゃないですか。仲村トオルも二人の先輩刑事におだてられた末に、ボケで返すのもツボに嵌ります。また、ベンガルが癌の疑いに悩まされる際に、諸行無常と書かれた扇子を持ち出し、疑いが晴れた途端、天下泰平の文字に変わっていたり、浪花のロッキーこと赤井英和に対し、ユウジが「(ロッキーを演じた)スタローンに芝居を教えてもらえ」と言ったり、細かいくすぐりを入れながら遊び心のある作風に仕上げています。

 

ツッコもうとすればいくらでもツッコミを入れることのできる作品ではありますが、このユルさこそが「あぶない刑事」シリーズの魅力の源泉でもあり、あまりキッチリ作り過ぎると、その魅力までも失いかねません。あくまでダンディタカとセクシーユウジの軽妙なやり取りを楽しむのが、一番の鑑賞と思われます。