父の再婚に揺れる天地真理の複雑な娘心 「虹をわたって」を観て | パンクフロイドのブログ

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ともに苦難を乗り越えよう!

神保町シアター

植木等と渡辺プロダクションの映画 より

 

 

製作:松竹

監督:前田陽一

脚本:田波靖男 馬嶋満

撮影:竹村博

美術:佐藤公信

音楽:森岡賢一郎

出演:天地真理 沢田研二 岸部シロー 日色ともゑ なべおさみ 財津一郎 萩原健一

1972年9月29日公開

 

横浜の運河に水上ホテル「レンゲ荘」と掲げられた一隻のボロ船が停泊していました。ある日、その住人の豊さん(三井弘次)が亡くなり、遺品の中から100万円が見つかります。住人のマフィア(なべおさみ)は、船に居住している者たちを焚きつけて競艇で一儲け企みますが、一銭も残らずスッてしまいます。その頃、このレンゲ荘に清楚な娘マリ(天地真理)が宿泊をしに来ます。船のオーナーであるおきん(武智豊子)は、訳ありの様子の娘に何も聞かず泊めてやることにしました。

 

翌日からマリは、おきんの紹介で食道船「末広」で働きます。そんな折、マリに暴力団京浜会の大津(財津一郎)の魔の手が忍び寄ります。大津はマリを売春婦として温泉街に売り飛ばそうとしており、マフィアに10万円を渡して話をつけるよう迫ります。マフィアは金を受け取ったものの、さすがにマリをやくざに渡すのは気が引け、競艇で倍にして金を返そうとします。

 

ところが、今回も予想を外して、またしてもスッカラカンに・・・。しかし、同行したマリが大穴を当てて高額配当の80万円を手に入れます。こうして、マフィアたちは大津に色をつけて金を返すことによって、話をなかったことにしようとします。ところがやくざのメンツにこだわる大津は、2倍の金でも納得せず、80万円を丸々奪ってしまいます。

 

数日後、マリは父(有島一郎)の再婚相手の恵子(日色ともゑ)と偶然会います。多感なお年頃のマリは、恵子があまりにも若く、バーのホステスだったこともあり、家出をしていたのです。マリは、逃げるようにその場を離れ、居会せた昭夫(沢田研二)のヨットに乗り込み、何処へでも連れて行ってくれと頼みます。二人は台風が近づいているのも知らず、やがて荒れ狂う海に呑み込まれそうになりますが・・・。

 

人気絶頂時の天地真理主演によるアイドル映画。彼女がタイトル曲の「虹をわたって」を始め、「ひとりじゃないの」「水色の恋」などを歌う他、共演の沢田研二の「君をのせて」も披露。このあたりは渡辺プロのプロモーションが色濃く出ています。萩原健一もチョイ役で出演しており、真理ちゃんを助手席に乗せてドライヴするシーンがあります。同じ画面にこそ映らないものの、結果的にはジュリーとショーケンが共演していることになりますね。

 

映画の中では劇中劇として「白雪姫」の芝居が演じられていますが、物語自体も真理ちゃんと水上生活者の面々を、白雪姫と七人の小人に見立て、「白雪姫」をアレンジしていると言えなくもありません。実際の物語は、父親の再婚に反発した娘が家出をしたことによって、普段の生活では決して知り合うことのない水上生活者たちと接し、様々な経験をしたことで、未熟な自分に目が覚めると言った内容。ただし継母は、「白雪姫」ほど酷い悪女ではなく、むしろ義理の娘を思い遣る後妻の面が強く出ていました。

 

ヒロインが継母との確執を克服した一方で、水上生活者の男たちの将来に関しては中途半端に終わった感があり、喜劇の名手・前田陽一にしてはやや片手落ち。また、彼らが目的を果たした後にモデルハウスを破壊する行為は、一生かかっても手に入れられない鬱屈した心情は理解できても、壊した彼らが何の制裁を受けずにスルーする演出は、モラル的には如何なものかとも思ってしまいます。と、若干の不満を述べながらも、アイドルの真理ちゃんを愛でる映画としては悪くありません。

 

 

天知真理 ちいさな恋

作詞:安井かずみ 作曲:浜口庫之助