「ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years」を観て | パンクフロイドのブログ

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ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK The Touring Years 公式サイト

 

 

チラシより

イギリス・リヴァプールのキャバーン・クラブで活動を始めたビートルズは、1961年から62年にかけてイギリスの音楽シーンに華々しく登場し、1963年の終わりにはヨーロッパ・ツアーを開始。そして翌1964年2月9日、アメリカの人気テレビ番組「エド・サリヴァン・ショー」に出演したことで全世界的に人気を爆発させた。同年6月に入ると、バンドは初のワールド・ツアーをスタート。以後2年間は過酷なスケジュールをこなし続け、ツアー活動を停止した1966年8月の時点で、バンドは世界15ヶ国90都市で、166回のコンサートを行っていた。こうしたツアーに助長されて生まれた「ビートルマニア」と呼ばれる社会現象は、それまで世界が1度も目にしなかったもので、文化のグローバル化が始まるきっかけとなった――。

 

製作:イギリス

監督:ロン・ハワード

出演:ジョン・レノン ポール・マッカートニー ジョージ・ハリスン リンゴ・スター

2016年9月22日公開

 

ビートルズを映像で語った作品には、様々な切り口がありました。ビートルズの歴史をてっとり早く知りたいならば「コンプリート・ビートルズ」がいいでしょうし、じっくりと味わいたいならば「ザ・ビートルズ・アンソロジー」が最適でしょう。3年前には、ビートルズの秘書でありファンクラブも運営していたフリーダ・ケリーから見た「愛しのフリーダ」というドキュメンタリーも公開されました。これらに対し、本作を監督したロン・ハワードは、ビートルズのツアーに焦点を当て、当時の社会情勢を絡めながら、ビートルズを通して人々と時代の関わりを描いています。

 

特に盲点を突かれたと思ったのは、アメリカの南部では、コンサート会場でも人種隔離の政策が行なわれていたこと。バス、トイレ、レストランなど公共の場で、白人と非白人の場所が分かれていることを知ってはいたものの、コンサート会場にまでは思い至りませんでした。ビートルズはこの件に異議を唱え、コンサート会場で隔離する方法をとるならば、演奏を拒否することを示します。結局、主催者側は折れ、人種に関係なく聴衆は彼らの演奏を楽しむことができました。最初に手を挙げたのはビートルズなのかは分かりませんが、影響力が大きかったことは間違いないでしょう。

 

ビートルズは有名になるに従い、彼らの音楽も向上していきます。その一方で、ライヴでは歓声に包まれ、まともに演奏を聴いてもらえないジレンマが生じます。高校生の頃、ビートルズのライヴアルバムが発売され、それを聴いたことがありますが、まぁ女の子たちの絶叫の凄まじいこと(笑)。同じ年にビートルズの武道館コンサートもテレビで再放送され、本作でもその映像の一部が使用されています。武道館でも黄色い歓声は飛び交うものの、「Nowhere Man」は明瞭に聴こえました。日本のファンはお行儀が良い?

 

彼らが1966年8月29日のサンフランシスコ・キャンドルスティック・パークでの公演を最後に、レコーディングに専念するようになったのは、ライヴでアルバムの楽曲を再現するのが難しくなってきたことだけが理由でないにせよ、収容人員の多いスタジアム級のコンサート会場でしか演奏できないことへの苛立ち(5000人規模でも会場に入れなかったファンへの警備で警察が対応しきれなくなっています)、頑丈な護送車で会場を後にすることの嫌気が、手に取るように分かります。

 

ツアーの模様を重視したドキュメンタリーなので、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」のレコーディング風景を見せた後は、その後のアルバムに関してはお座なりの紹介程度。最後は1969年のアップル社の屋上での演奏で幕を閉じます。今まで目にしたことのない映像が多数あり、コンサートの模様ばかりでなく、レコーディング時の何気ない会話やアウトテイクにも興味津々で、見たり聴いたりすることができました。

 

当時の関係者や著名人へのインタビューも面白く、エルヴィス・コステロが「ラバーソウル」が発売された当初は、このアルバムが嫌いだった(後に大好きになった)ことは意外でしたし、ウーピー・ゴールドバーグやシガニー・ウィーヴァーが、当時の女の子たちに交じって、彼らの演奏を聴いていた姿はなかなか想像しにくいです。

 

本編が終わった後に、おまけとして30分に編集されたシェイスタジアムでのライヴが映し出されるのですが、これがなかなか興味深かったです。4Kリマスターのライヴ映像では、歓声を意図的に抑えた処理が施され、演奏もクリアに聴こえます。ライヴバンドとしてのビートルズを、改めて考察したくなります。