池玲子の魅力が引き立つ 「やさぐれ姐御伝 総括リンチ」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷 【追悼!天尾完次】 より


神戸港へ着いたばかりのお蝶(池玲子)は、麻薬の運び屋と間違われ、危うく女殺しの濡れ衣を着せられそうになる。お蝶は刑務所帰りの謙二(内田良平)に助けられ、恩人の扇清造(嵐寛寿郎)の娘清子(星野みどり)の行方を捜すことに協力する。その一方、麻薬に関連した事件の調査をしながら、運び屋と間違え自分を辱めた金造(名和宏)、扇一家の跡目を継いだ剛田(遠藤辰雄)、お蝶の過去に因縁のあるデカ虎(凡天太郎)に落とし前をつけようとする。



パンクフロイドのブログ-やさぐれ姐御伝 総括リンチ


製作:東映

監督:石井輝男

脚本:掛札昌裕 関本郁夫 石井輝男

撮影:わし尾元也

美術:雨森義充

音楽:鏑木創

出演:池玲子 愛川まこと 栗はるみ 芹明香 遠藤辰雄 名和宏

    凡天太郎 大泉滉 嵐寛寿郎 内田良平

197367日公開


神戸港に降り立ったお蝶は、女スリの朱美(春日朱美)の案内で、知らない場所に連れて行かれます。彼女はいきなりクロロフォルムを嗅がされ意識を失います。気がつくと腕を吊るされ、身動きできない状態に。そして、金造を始めとする三人組に、女の大事な部分を弄られるという屈辱を味わわされます。


しかし、お蝶は彼らの探していた女ではなく、彼女は女の死体の横に捨てられます。お蝶の手には血のついた凶器を握らされていたため、新聞で騒がれている女の又裂き事件の殺人犯に仕立てられてしまうのです。お蝶は譲二というやくざ者の忠告で危機を脱しますが、彼自身は人相の悪い男たちに追われます。追いつめられた譲二は、シスターの姿をした謎の女・好美(愛川まこと)に危ないところ助けられます。


手掛かりを求めに、お蝶は神戸港に張込みをしていると、朱美が現れ彼女を尾行します。すると赤いマフラーをした女たちが、次々と翡翠館という館に入っていくのを目撃します。やがてお蝶は翡翠館から譲二が出てきたのを見て後をつけます。ところが、あっさり見つかってしまい、今度は譲二がお蝶を追う展開に。


お蝶が向かった先は彼女の恩人・扇清造の家。清造は何者かによって殺され、清造の死後、扇一家は叔父貴分の剛田が跡目を継いでいます。お蝶は17歳の時、賭場でイカサマをして指を詰められそうになった時、清造が彼女の代わりに指をつめた過去があり、扇一家には借りがあります。


一方、譲二は扇一家の幹部でしたが、彼が服役中に清造が殺され、清造の一人娘・清子が行方不明となり、彼女の捜索を行なっていました。しかし、譲二は一家から歓迎されておらず、譲二が刑務所に入った経緯も何やらきな臭い様子。お蝶は扇一家に草鞋を脱ぎながら、内情を探りつつ、一連の事件を調べようとします。


譲二を助けた好美は番を張っていましたが、更生施設に入所している間、仲間はバラバラとなってしまいました。好美は出所すると、かつての仲間たちが金造にヤクの運び屋をやらされていることを知り、彼女たちを解放する機会を窺います。


お蝶は捜査を開始し、朱美が女スリ集団のメンバーであることを知ります。彼女は金造に弱みを握られており、元締めのお定(根岸明美)に内緒で仲間たちとヤクの運び屋をやらされていたのです。更に好美のグループと朱美のグループを使っている金造が、剛田の手先だったこともわかってきます。


剛田は麻薬の取引をしているデカ虎に多額の借金をしており、ビジネスパートナーでありながら、執拗に借金の返済を迫られています。そこで、剛田はお蝶にイカサマをやらせ、デカ虎の借金をチャラにしようと目論みます。しかし、剛田はお蝶とデカ虎の間に、深い因縁があることを知らなかったのです。その結果・・・。


オープニングでは、お蝶が敵を斬るたびに着物がはだけていき、最後はスッポンポンになるという趣向で、観客にいきなりガツンと一発カマしてくれます。ところが、映画が始まってから入場してくるバカ野郎が、観ている前を横切ったために、せっかくの演出も台無しになってしまいました。せめて頭を低く下げながら座席を探すならば可愛げもありますが、こういう輩に限って他人の迷惑を考えずに堂々と入場しますからねぇ。本当、腹立つわ。


出鼻を挫かれましたが、オープニングタイトルで示したようなケレン味たっぷりな演出をするかと思えば、鈴木清順ばりの原色を生かした画面作りをするなど、「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」を踏襲しながら、石井輝男の色を出しています。石井監督はソクブン監督より笑いを抑えながらも、女優陣たちの露出の多さで野郎どもを楽しませます。


また、内田良平が追われる入り組んだ路地のセットは、東映の美術スタッフの底力を感じさせ、ヤバい雰囲気が画面から漂ってきます。運び屋の女たちの中には、私の好きな芹明香もいましたが、彼女の持つ不良性ゆえに存在感が際立っていました。個人的には「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」のほうが好みですが、本作もまた池玲子の魅力を十分に引き立たせる任侠物に仕上がっています。