この文章はあくまでも科学的な視点で捕鯨を論じる事ができる人向けです。
まめちしき
○南極海にはオキアミが非常に多い、イカも多い、魚類は少ない。
○ヒゲクジラはその海域で一番多い獲物を捕食する為、南極ではほぼオキアミを食べる事になる。
○マッコウクジラなどの歯クジラは南極ではイカを食べている。
○オキアミは夏の間は豊富に存在するが、冬の期間には深い海底へ移動する。
○ヒゲクジラは4ヶ月の夏の間に南極海でオキアミを食べて栄養を貯め、秋に中低緯度の繁殖海域へ移動、殆ど餌も食べず繁殖に文字どおり精を出し、春に南極海へ移動、脂肪を使い果たし痩せて帰ってくる。
○ヒゲクジラがちゃんと食事しているのは、一年のうち夏の索餌海域に居る間である。
では始まり。
オーストラリア政府が調査捕鯨を目の仇にして、野党が日本の調査捕鯨船を軍に追跡させる事を選挙公約にしたり、日本人を捕鯨のモリで捕殺する楽しいCMがオーストラリアでオンエアしたりしているらしい。
政府ぐるみでオーストラリアが調査捕鯨を反対し始めた事に関して、日本の捕鯨文化を理解しないアタマの悪い人々だという意見が多数を占める訳ですが、本当にそれだけでしょうか?。
オーストラリアの人々がホエールウォッチングを通じて、ザトウクジラに親しみを持っているという話は、枕詞としてこの件で語られるわけですが、国ぐるみで力を入れているそうで、年間100万人が来て、三億オーストラリアドル、日本円で265億円稼いでいるそうです。
265億円・・、ピンときませんが、小国の国家予算で300億円というところもあるようで、哨戒艇なら10隻、ジェット戦闘機なら2機買ってお釣がきます。
で・・、南半球のザトウクジラはやはり、冬には繁殖海域へ移動します。
南極からオーストラリアへ、ザトウクジラは来るのです。
つまりは金。
日本はオーストラリアの国益を損ねる行為に手を出した、という微妙な立場にある訳です。
もっとも、ザトウクジラはオーストラリアの所有物ではないけれど、日本だけの物でもない訳で、その辺を突っ込めば、逆に言い返されるだけです。
結局のところ、道端の石ころを奪い合うようなものなのですから。
ところで、このオーストラリアの行為に関して、鯨を野放しにすると魚を食い尽くすという意見をよく見かける訳ですが、ザトウクジラはヒゲクジラの仲間です。
ヒゲクジラの場合はその説の根拠になる捕食率、一日に体重の3~7%の餌を取るというのは、摂食海域のみに限定される訳で、繁殖海域のオーストラリアでは、殆ど餌を食べていないはずなので、その近海ではザトウクジラによる漁業被害は出てはいないでしょう。実際聞いた事もありません。
いくら、オーストラリア国民が鯨好きでも、漁業にダメージを受けてはこういう世論は形成できないでしょう。
そして、我が国の農林水産大臣がこの件に関して、鯨を捕らないと生態系が壊れるとコメントしていますが、壊れるほど増えたのかという疑問があります。
調査捕鯨によって、ザトウクジラが年率14%増えている点が今回ザトウクジラが獲られる事になった最大の根拠です。
ただ、生態系が壊れるほど増えるには、少なくとも南極海の資源を食い尽くすくらい増えないといけませんね。
日本の調査では現在南極海にザトウクジラは3万6千頭生息しているそうです。
過去に南極海に生息していたザトウクジラは100000頭、つまりは健全な状態の南極海は十万頭のザトウクジラを養う事が可能な訳ですが、捕鯨によってそれが、3000頭未満へ減ったそうです。
三千頭です、凄いですね。それが十倍に増えた訳だ、かつての三分の一しか、戻っていない訳ですが。
これが年率14%増えれば、単純計算で8年で十万頭を超えます。
ただし、悪名高いミンククジラの繁殖率が4%である事を考えれば、これはザトウクジラの個体数が激減した為に繁殖率が増加した為と考えられます。
つまりは、いずれ一桁の増加率へ落ち着いて、頭打ちになるでしょう、現状では増える事が自然な状態といえます。悪名高いミンククジラの増加だって、どこかで落ち着くはずです、際限なく増える動物など存在しません。
(昆虫類やイワシなどは一時的に大量発生しますが、自然的要因ですぐに激減します)
そう考えると鯨が増えてが魚を食い尽くすという説は、冷静に考えれば、このように奇妙なものです。
ザトウクジラで計算しますが、一頭が一日に食べるオキアミは2t、一年間に食べる分は240t。
計算が違うって?、ちゃんと食事するのは夏だけだから、これでいいんです。
3万6千頭のザトウクジラが一年に消費するオキアミは864万t、南極海のオキアミ資源は・・数千万トン、参考までに最近の年間漁業生産量は約一億二千七百万tだそうで、オキアミは人類が一年間に最低一千万t消費しても大丈夫だそうです。
ザトウクジラに南極の生態系を壊せるんでしょうか?。
このような狂った説の布教に、わが国はかなり金をかけているようですが、それも税金から出ているんでしょうね。
結局はザトウクジラなどという、ウオッチングの人気者を捕った事が、今回の摩擦の原因です。日本政府があくまでも科学調査の為の捕鯨をしたいというならば、マッコウクジラを薦めます。
実は南極海の中層にはイカが大量に生息しているんですが、捕獲方法がなくて、人類はその資源を使うどころか、その生態さえも謎に包まれています。
いえ、マッコウクジラやゴンドウクジラが丸々太っているのが、イカが大量に南極海に生息する何よりの証拠ですよ、つまりマッコウクジラの胃には未知のイカ資源の貴重なデータが入っているわけです、それを目玉にすればいいんです。
狙うはでかい頭のマッコウです、ヒゲクジラと違って、年中イカを食って人類からイカを奪っている(ただし殆どはあまり人類が食べない深海凄のイカだとも言われます)奴らなら間引きしても良いと思いますよ。
ただ・・、200万頭世界中にいるのに、日本近海の調査捕鯨で、マッコウクジラを5頭しか捕っていないんで、一説にはヒゲクジラほど美味しくなくて売れないから、捕らないんじゃないかと勘ぐられているんですが…。
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