ここでちょっと自分史から離れて、最近味わった怖い話をしておこう。
私の自宅は5階建ての集合住宅(団地)の下の方であるが、数年前から、同じ階段に住む住民同士が生活音が原因で揉めていた。
当事者はOさん(70代)の息子(40代)、そしてFさん(70代)である。
揉めていた…といっても、上の階に住むOさんの息子が、音がうるさくて眠れない!と、すぐ下の階のFさんの家のドアを蹴飛ばすのである。
Fさんは音など立てていないことは、他の住民の証言でもはっきりしているのだが…。
Oさんの息子は、おそらく適応障害か何かで両親の手には負えない状態であり、
両親は家を離れ、別の家での生活を強いられていた。
Oさんは週に一度ほど郵便物やゴミの処理をするために帰ってくる。
そして、息子が当面食べるものを置いて行く。そういう生活が続いていた。
私は何度もOさんが買い物をする姿を見かけており、そのたびに声をかけていた。
生活音の問題というのは、下の階の人が、上の階の人に訴えるものであるが、逆になっているのも異常さを物語っている。
あまりにもひどい状態で、睡眠不足に落ち陥ったFさんは、ある日とうとう警察に連絡をする。
しかし警察は民事不介入が原則なので、実害がないと動けない。
そこでFさんは入り口に防犯カメラを設置して証拠を残すことにした。
すると、その日以来、異常行動はぴたりと消え、Fさんの家のドアは蹴られることがなくなった。
私は父が亡くなってから実家のメンテナンスのために、週末は実家に出かけることが多く、最近は地元の近所付き合いがなくなっていた。
先週のことである。
家に帰ると、家内が
「Oさんの家が空いたようなのよ。売り出しているわよ」
とチラシを見せながら言ってきた。
じゃあ、Oさんの息子が出て行ったんだな…と思った。
「何かあったのかなぁ?」
「Oさん亡くなったのよ。知らないの?」
「いつ?」
「もうだいぶ前になるわ。去年の9月くらいかしら」
そんなバカな…。
私は最近スーパーマーケットでOさんを見かけているのである。
しかし、あまりにも暗い顔をなさっていたので、それから少々めんどくさかったのもあって、出くわさないように買い物を続けていた。
だからよく覚えているのである。
「やだ気持ち悪い。」
そう言って、奥さんは話を中断したが、見てはいけないものを見てしまった。
若いは霊感が結構あるほうだったが、再び蘇ったかのように、久しぶりに鳥肌が立った。