中3になると始まるのが、業者テストである。
今でも都内ではVもぎやWもし、埼玉では北辰テストといったテストに受験生は悩まされる。
私たちの時代にもこれに類するものがあり、「偏差値」というものが現れてきたのもこの頃である。
2学期の始めのテストがあり,返ってきた成績表を見せ合いながら,優秀民たちが会話している。
優民1「おれ4.5だったよ。おまえは?」
優民2「おれ3.8……負けた〜(>_<)!」
偏差値は理論上75から25の間に収まるはずであり、70を超すと全体の上位5%に入ることを意味する。
3.5などという馬鹿げた値にはならないのである。
その模試で,県内の成績優秀者に名前を連ねている優秀民たちの偏差値は当然70台である。
そうである。彼らは偏差値の十の位を省略して話しているのであった。
その一人が私に聞く。
「〇〇はどうだった?」
私「………………7.5…………」
優民1「すげぇ!」
優民2「見せて!見せて! え……67.5……」
優民3「67.5……60台の偏差値ってあるんだ………」
始めてみる数字にあっけにとられる優民たちを前に,私は照れ笑いするしかなかった。
私は決断した!
入試まであと半年の今,
凡人たちと戯れている場合ではない!
優秀民のこの人たちといっしょにいれば,
僕の成績もきっと上がるはずだ!
それから私は,昼休みに体育館でバスケットのシュート練習をすることも,
学校から駅まで,じゃんけんして荷物持ちをすることもやめ,
なんだかわからない優秀民たちの会話の輪の中にいて,
自分も優秀民の一人になった気分にひたっていたのである。
そして,季節は中3の秋,私の成績は微動だにしなかったのである。