Sくんのすさまじい追い上げにあっているころ,
小学校では,学年末に行われる市内のサッカー大会に向け,学校代表の選出があった。
代表は5,6年生から30人で,ほぼ6年生で占められる。
私とSくんは,二人とも選出され,毎日放課後の練習に駆り出された。
学校代表のユニフォームは,エンジにFのマークが映え,多くの児童の憧れであった。
二人ともポジションはインナー(今でいうところのボランチ?)で,希望者は多い。
レギュラー争いは私たちの技術と体力に磨きをかけた。
運動会でも,私とSくんはリレーのアンカーどうしであったし,
持久走大会でも,上位を争っていた。
そのSくんが,年の暮れ,チームを離れるといいだした。
大会まであと2ヶ月。
今チームを離れることは、レギュラーをあきらめることに等しい。
なぜそんなこと言うのか?いっしょにレギュラーとして大会に出ようと決めていたのに!
Sくんを問い詰めると,
「Y谷O塚のトップクラスで勉強できることになったんだ。
僕には,どうしても行きたい中学校があるんだ。
だから今は勉強をしなければならない。」
何を言っているんだ?
いっしょに附属中に進むんじゃなかったのか?
Sくんは私の支えであったのに、いなくなる?
混乱した。そして不安でもあった。
急にSくんの背中が遠くに感じられた。