私の通っていた、大学の附属小学校は、途中から編入するのにも試験があって、
学校のトップの生徒を上回る学力がないと、編入を許可されなかった。
Sくんはその厳しい関門をくぐって入ってきたので、当然優秀である。
がっちりした体格で頭も大きく、周りの生徒と比べると一学年ほど上に見えた。
でも、編入していきなりは友だちもできず、ポツンとしていた。
かたやイジメられて教室のすみっこにポツンとしている私がいる。
その2人が接近するのは、当然の成り行きだった。
「ぼくはS。きみは?」
「ぼくはMだよ。よろしくね(^^;;」
「外で遊ばない?」
「うん」
二人は校庭に出て、サッカーボールを蹴り始めた。
二人とも下手だったが、楽しかった。
久しぶりに友だちができて、無心に遊ぶことができたのだから。
くる日もくる日も二人はサッカーに熱中した。
昼休みや放課後はもちろん、10分休みも、5分しかない休み時間でさえも、下駄箱に走ってボールを蹴った。
すると知らないうちに体力がついてくる。
足も速くなり、体つきもがっちりとしてきた。
風邪をひくこともほとんどなくなったのである。
そして、いつのまにか、私に対するイジメは消えていった。
まさにSくんは奈落の底から引き上げてくれた救世主であったが、
彼がしてくれたことは、それだけではなかった。
その後、Sくんは私をクラスのヒーローにまで押し上げるのである。
(左が私,右がSくん)